血統徒然草

サラブレッドの能力を血統面から考察する我儘・自分勝手なブログ

13年・天皇賞(春)

2013-05-04 14:45:00 | 雑記・その他
 今回の血統徒然草は、先日行われた天皇賞(春)の上位馬や人気馬、及び見所がある配合馬を取り上げてみたいと思います。簡単にではありますが、お付き合い頂ければ幸いです。


フェノーメノ(ステイゴールド×ディラローシェ-デインヒル)牡・09生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=215283

主:6 結:5 土:4 弱:5 影:3 質[近]:2 質[遠]:3 SP:3 ST:4
合計:35点 クラス:3B 芝:9~12F ダ:8~10F
日本適性:□ 成長力:○ 成長型:普通 馬場適性:芝 重馬場適性:□

 主導は、Northern Dancer5×4の系列クロス。このNorthern Dancerクロスは母父デインヒルと呼応してのもので、Natalmaがクロスし明確に血統をリードしている。しかしながら、血統の2ブロックにしか、影響を及ぼさないのは大きなマイナスで、明確ではあるものの、決して高評価できるものでもない。しかしながら、結合面はそれなりの近親度がある為、ある意味当たり前であるが比較的強固であると言える。6代目までに存在するクロスは全て主導と直接結合し、7代目以降のクロスも比較的連動性が高い。また、血統の土台構造も比較的強固で、影響度バランスの良好度もあって、開花した場合は非常に安定感のある配合であると言える。
 惜しむらくは、スピードとスタミナのバランスにおいて、ほぼイーブンのバランスで、7代目以降は圧倒的にスタミナ優位でありながら、Ribot5※5の母系クロスのアシストもあるものの、本質的には中距離馬であると言える。従って、芝12Fは守備範囲でこそあるものの、12F以上の距離においての適性は若干疑問で、ある意味で国内では有利な血統構成であると言う事もできるだろうか。

トーセンラー(ディープインパクト×プリンセスオリビア-Lycius)牡・08生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=209806

主:7 結:5 土:4 弱:5 影:3 質[近]:2 質[遠]:3 SP:4 ST:3
合計:36点 クラス:3B 芝:8~11F ダ:8~10F
日本適性:□ 成長力:□ 成長型:早め 馬場適性:芝 重馬場適性:□

 主導はLyphard4×4の系列クロス。この主導は非常に珍しくはあるが、Northern Dancerを伴うだけでなく、母Goofedが系列クロスを形成し近親度こそ強いものの、明確に血統をリードしている。惜しまれるのは、父父サンデーサイレンス内において、Turn-toを伴うHail to Reasonが4代目からクロスし、大きな影響をもった点で、主導の明確性に無視できない影を落としている点である。できるならば、Turn-toのクロスは無い方が良かった。
 しかしながら、血統全体の結合力はHail to Reasonがそのアシストをした為に、かなり強固で、仕上がった際には迫力ある競馬を見せる事が可能だろう。また、土台構造もかなり強靭で、血統の背骨にあたる構造はしっかりした配合だと言えるだろう。また、生かされたスピード勢力はなかなかに強靭で、若干乱雑な血統構成の為に、切れ味鋭いとはいかないだろうが、多種のスタミナ要素を主導へと取り込んだ為に、粘りあるスピードに良さがあるタイプと言え、本質的には中距離馬だと言えるだろう。

Red Cadeaux[レッドカドー](Cadeaux Genereux×Artisia-パントルセレブル)セン・06生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=233833

主:5 結:5 土:3 弱:5 影:3 質[近]:2 質[遠]:4 SP:3 ST:3
合計:33点 クラス:2B 芝:10~12F ダ:~10~F
日本適性:△ 成長力:○ 成長型:遅め 馬場適性:芝 重馬場適性:□

 主導は、Tudor Minstrel5・6×7の中間断絶クロス。やや、世代のバランスが悪いものの、血統の3ブロックにおいて、その影響力を行使している。しかしながら、血統全体においてHyperionの影響力が強いものの、Nearcoも6代目から影響力を行使している点を考えると、決して明確とは言い難いのが惜しまれる点である。また、母の母内Chain Storeが若干離反したために、弱点を2ヶ所発生させているが、それぞれ9代目において主導と直接結合する、Hyperion・Pharosがクロスしたのは非常に幸運で、紙一重の血統だと言う事も可能だろう。
 反面、各系統の結合力は強固で、Pharos・Selene~Chaucerを中核に、主導たるTudor Minstrelと直接結合を果たしている。土台構造は、やや散漫ではあるものの、影響度バランスも良好で、完全開花した場合、大きく崩れにくいと言える血統構成であると言えるだろう。本質的にはステイヤーとは言い難いものの、7代目以降に生きた血を勘案すると、ある程度の距離延長にも対応できる可能性がある事は、指摘しておきたい。

ゴールドシップ(ステイゴールド×ポイントフラッグ-メジロマックイーン)牡・09生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=215094

主:5 結:4 土:3 弱:5 影:2 質[近]:2 質[遠]:3 SP:4 ST:3
合計:31点 クラス:2B 芝:8~11F ダ:8~10F
日本適性:○ 成長力:□ 成長型:早め 馬場適性:芝 重馬場適性:○

 主導はPrincely Gift5×5の系列クロス。その父Nasrullahは血統の3ブロックに存在するものの、母父メジロマックイーン内においては7代目以降に存在するために、血統全体を強力にリードする主導勢力としてはかなり疑問で、中間断絶であるもののNorthern Dancer5×5の影響が強いのも惜しまれる点である。また、血統全体の結合力自体はHail to Reason4×6の単一クロスのアシストもあり、悪く無いものの近親度の強さを勘案すると平均レベルであると言えるだろうか。反面、血統全体においてこれといった弱点は無く、意外と安定感のある血統構成で、現時点の能力発揮がしやすいタイプであるのは指摘しておきたい。
 また、見た目の血統から長距離適性があるように見受けられるが、強い影響を持つスタミナ勢力が少なく(目立つのはHail to Reason4×6の単一クロス程度。Hail to Reasonは本来中距離向きのスピード勢力だが、当馬の場合Hail to Reason内のスピード勢力をことごとく欠落させているのが見てとれ、中距離スタミナ型へと能力変換をおこしていると見てよい。また、主導たるPrincely Giftは短距離スピード型だが、7代目以降に存在するBlandford系のスタミナをしっかりと目覚めさせた為、多少距離の融通性を兼ね備えていると見てよく、中距離スピード型と判断している)、母系クロスにおいて、Sicambre(=Senones)6※6、Bois Roussel6※8があるものの、本質的にはマイル適応可能な中距離馬と考えて良い。ただし、7代目の血の生かし方を見るに、隠し味的なスタミナを多数生かし、主導へと結合させている為に、長く脚を使う可能性は否定できない血統構成で(ステイゴールド×メジロマックイーンの相性の良さはここが源泉と考える。大きな評価ができる内容でこそないものの、7代目以降のメジロマックイーンの生かし方はほぼベスト)、この部分は現実の当馬が示していると言えるだろうか。

デスペラード(ネオユニヴァース×マイネノエル-トニービン)牡・08生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=211937

主:5 結:5 土:3 弱:5 影:3 質[近]:2 質[遠]:3 SP:4 ST:4 特:1(主導牝馬クロス Almahmoud)
合計:34+1点 クラス:3B 芝:9~15F ダ:9~11F
日本適性:△ 成長力:○ 成長型:遅め 馬場適性:芝 重馬場適性:□

 主導は、Almahmoud5×6の系列クロス。次いでHyperionの影響が強い。この両者の相性は非常に良好で、一見明確に見える主導だが、Phalaris系の、Nasrullah(=Rivaz)~Nearcoや、Palestine~Fair Trialの影響も非常に強く、決して万全な主導とは言い難いく、主導としての評価は平均点を超えるものでは無い。しかしながら、実質的な異系交配でありながら、血統の結合力は悪くなく完全開花した際には意外と器用な競馬を見せる可能性は秘めている(Native Dancerが完全に離反したのが非常に惜しまれる、10代目において結合するものの実質的に未結合。このクロスは作成しない方が良かった)。また、そのスピード・スタミナ勢力は強靭で、スピードは主導たるAlmahmoudを中核にNasrullah(=Rivaz)のスピードやTetratemaを生かしたPalestineの決め手を兼ね備えている。スタミナもなかなかに強靭で、Hyperionを非常に強力な中核に、Prince Roseを伴うPrince Bioや、Hail to Reasonがそのアシストをしている。したがって、本質的には中~長距離馬であり、開花には相当の鍛錬が必要であると言える。国内では非常に珍しい血統構成であるとも言え、是非とも開花を果たし近年では珍しくなった、決め手を備えた個性派ステイヤーとしての走りを期待したい。


 今回の血統徒然草は、先日行われた天皇賞(春)においての上位馬と人気馬、及び見所のある血統構成馬を取り上げてみました。簡単にではありますが、今回はこんなところで。


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