血統徒然草

サラブレッドの能力を血統面から考察する我儘・自分勝手なブログ

ビッグウィーク(菊花賞)

2010-10-25 20:48:41 | 2010年GⅠ勝ち馬
ビッグウィーク(バゴ×タニノジャドール-サンデーサイレンス)牡・07生

主:5 結:6 土:2 弱:6 影:2 質[近]:2 質[遠]:4 SP:4 ST:3
合計:34点 クラス:3B 芝:8~11F ダ:8~10F
日本適性:□ 成長力:□ 成長型:遅め 馬場適性:芝 重馬場適性:○

○ 主導   (5)

 主導は、Northern Dancer4×4の系列クロス。このNorthern Dancerは、その母系である、Natalma~Almahmoudとクロスさせ、近年国内では散見されるものの、未だ珍しい系列クロスを形成している。しかしながら、ビッグウィークの血統内においては、Halo5×3も派生したために、血の集合が非常に不明瞭になっている(Halo内はAlmahmoudが5代目から系列クロスを形成し、Northern Dancer程ではないものの非常に大きな影響を持つ)。また、父の主導となっていたNasrullahも5・7・7×6と派生したのは、やはり主導の明確性においてはマイナスだと言えるだろう。しかしながら、Northern Dancer・Halo・Nasrullahの三者によって、Blandford系及びPhalaris系の流れが集約されているのが見て取ることができ、その意味においては、見た目程血の流れが阻害されていないのは幸いだろうか。

○ 結合   (6)

 主導たるNorthern Dancerと、6代目までに存在するクロスであるNearco・Native Dancer・NatalmaはNorthern Dancerに含まれ、HaloはAlmahmoud・Nearco・Pharamond(=Sickle)で、NasrullahはNearco・Blandfordで非常に強固に結合を果たしている。Tourbillonは若干結合が弱いがRabelaisを通じ9代目でひとまず結合を完了している(実際にはTourbillonは9×6・7・8と6代目のクロス効果は若干疑問である為、Rabelaisを介しての結合がやや疑問ではある。この評価は6代目のTourbillonを効果ありとしている)。また、7代目以降に存在するクロスも多少雑多ではあるものの、良好な連動性を保っているのが見て取れ、かなりのレベルだと言えるだろう。

○ 土台   (2)

 土台構造はBlandfordが11ヶで形成している。単一の土台構造としてはかなり貧弱だが、Pharosが18ヶ、Gainsboroughが15ヶとサポートがしっかりしているのは幸いで、かなりアンバランスではあるものの、有効に作用していると考えられる。ただし、総合的には良好とは言い難い。

○ 弱点   (6)

 これといった弱点は存在しない。かなりの近親交配馬である為に、さほど驚くレベルだとは言えないが、ビッグウィークの血統においては、殆どのブロックにおいて主導勢力と結合するクロスが配置されているのが確認できる。かなり良好だといって差し支えないだろう。

○ 影響   (2)

 影響度バランスは(4-12-8-11)と決して良好とは言い難いが、影響の強い部分において、主導勢力がしっかりと配置されているのは幸いか。

○ 質[近]  (2)

 父母ともに悪くはないものの、決して質の高い内容ではない。しかしながら、母系タニノブーケ~タニノヒュールパスと続く流れは比較的優秀だと言える。平均点にはあるか。

○ 質[遠]  (4)

 主導たるNorthern Dancerは質が高いが、サポートしているHalo・Nasrullahは決して質が高いとは言い難い。しかしながら、ビッグウィークの血統においては、Tourbillonを始めとした底力あるクロスを生かしたのは幸いで、不安定さは残るものの底力勝負にも対応できるタイプだと考えられる。

○ スピード (4)

 影響の強いHalo・Nasrullahのスピードを前面に押し出した配合で、素軽いスピードに良さがある血統構成だと言える。次いでNatalma~Almahmoudとクロスしたために、更にスピードに良さがあると考えられる。これらのクロスから、切れ味鋭いマイラーとしての印象も受けるが、実際には血統の奥にあるスタミナ要素がしっかりと補給されている為に、実際のクロス効果よりも若干スタミナに良さがあるタイプとなっているのは、全体的に見ると痛し痒しと言えるだろうか。

○ スタミナ (3)

 これといったスタミナの核を作れなかった配合で、クロス効果に若干の疑問が残るものの、Tourbillon~Ksarが中核となっている。したがって本質的には距離が伸びるほどパフォーマンスが低下するタイプだとは言えるだろう。しかしながら、7代目以降に存在するクロスにスタミナ型が多く、主導と強固に連動している為、長く脚を使う競馬には対応可能だと考えられる。


 総合的にみると、Northern Dancerを系列クロスにするなど、新時代の配合形態だと考えられるが、主導勢力が不明瞭になった点はビッグウィークといった血統構成を考えるうえで、非常に惜しまれる点だと言える。反面、血統全体の連動性といった観点から見た場合、非常にレベルが高い内容で、同期のローズキングダムと甲乙つけ難い内容となっている(実際に7点を配点しなかったのは近親度の強さを考慮したためで、Northern Dancerへの血の流れは非常に良好だと言える)。
 また、血統の前面にあるスピード要素を、血統の奥にあるスタミナが底支えすることが出来たため、長く脚を使う事ができる内容となっている。その為、本質的には10F前後に適性をみせる血統構成だと言える。ただし、五十嵐理論の原則からは外れるものの、父系クロスであるWild Risk(5※8)及び、母系クロスであるDjebel(5※7)が目覚めた場合、芝12Fへの適性を見せても不思議ではない(前者は世代の問題もある為にかなり疑問だが、後者は実際目覚めても不思議はないだろう。似たようなタイプにサクラローレルがいる)。したがって、決して過信は禁物だが、能力を開花させるにつれ不安定ながらも、距離を伸ばしていける可能性は秘めている。国内ではなかなか珍しいタイプだが、自分で競馬を作った時に良さがでる内容だと言えるだろうか。


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