遺言書やリビングウイル、アドバンス・ケア・プランニングまで入れるとライフプランニングノートは相当なボリュームになる。「完成させるのは大変だからやめておこう」とか「中途半端に作っても意味がない」と考える人がいるかもしれない。確かにある種の書類は形式が整わないと法的効力は発生しない。例えば自筆証書遺言はPCで作成すると無効(財産目録はPC作成OK)である。しかしPCで作成された遺言書を遺族が本人の意思として尊重し、遺言書の内容に沿って遺産分割を行うのであればその目的を達成したということができる。
つまりライフプランニングノートはオールオアナッシングではない。できるところから作っていくとそれなりに役に立つものなのだ。私の場合今もっぱら活用しているのは「口座一覧表」である。「口座一覧表」をクラウド上に保管しておくと旅先でも呼び出すことができるので重宝している。
さてこれからライフプランニングノートを作ろうという人がノート作成の順番を考える上で参考になるのが「アイゼンハワー・マトリックス」だと私は考えている。アメリカの第34代大統領にちなむマトリックスとは、ものごとを「緊急」と「重要性」の観点から4つに分けて考えるものだ。すなわち「緊急かつ重要」「緊急性は乏しいが重要」「緊急だが重要性は乏しい」「緊急でも重要でもない」の4つである。一番最後の「緊急でも重要でもない」ものはやらなくても良い。
問題は緊急性と重要性のバランスをどうとるかである。
ライフプランニングノートの重要性からいうと「リビングウイル」や「遺言書」の重要性は高く「口座一覧表」の詳細な部分は実はそれ程重要性は高くないといえる。何故なら遺産整理になると口座番号が分からなくてもその金融機関に取引があることが分かっていれば金融機関に調べてもらうことはそれ程大変なことではないからだ。
だが仮に本人が数週間入院してその間に家族が代理でインターネットで各種の処理を行う必要がある場合を想定すれば、口座一覧表の整理は緊急性の高いタスクになるだろう。重要性をとるか緊急性を重視するかは状況依存的なのだ。
だが状況依存だけではいけないと思う。
実は伸びる会社というものは、「緊急性は乏しいがビジネスにとって重要なこと」を組織としてタスク認識し、それを行うための人的手当や予算面の措置を取っている、と私は考えている。一方伸びない会社は「緊急事態対応」に振り回されてモグラ叩きに終始している。そして腰を据えて問題解決に取り組む社員よりも目先の問題解決に走り回っている社員を高く評価してしまう傾向がある。
話が脇道にそれたが、ライフプランニングノート作成についても緊急性にのみとらわれず重要性の観点かあらプロアクティブに取り組むことが重要だろう。