金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

金融は国を興しそして国を滅ぼす

2008年10月10日 | 金融

バブルの歴史を解説した本を見ればオランダのチューリップ事件、南海泡沫会社事件、日本の土地バブルなどが必ず事例として出ている。次に新しい本が書かれる時間違いなく、事例として紹介されるのはアイスランドの崩壊だろう。

英米の経済紙(誌)はアイスランドが破産状態に陥った状態をMeltdownという言葉で表現している。Meltは「溶ける」でMeltdownは溶解、大崩壊などの意味だが、アイスランドのアイス(氷)が溶けるを連想させるのだろうか?

少し前までアイスランド経済は上手く行っているように見えた。国民の平均収入はEUの平均を上回っていたし、アルミ精錬業などに外資の大きな投資もあった。だが何よりも経済を引っ張っていたのは、金融業である。2003年に3大銀行の2つが民営化され、彼等は超積極的に海外資産の積み上げを図ってきた。その結果アイスランドの経済規模が145億ユーロだというのに、銀行が抱える資産は8倍以上の1250億ユーロに達した。アイスランドの人口はたった30万人しかいないので、国内の預金は微々たるものである。銀行はインターネット・バンキングを通じて英国のリテイル預金も集めていた。しかし大部分の資金は預金ではなく、短期の金融市場で調達されていた。2006年時点で預金でカバーされる資産は3割しかなかったのである。

金融危機が表面化してくると、外銀はアイスランドの銀行のリスクを敬遠し、資金放出を渋りだした。このためアイスランドの銀行は総て破綻し国有化された。だが問題は銀行の国有化だけでは全く片付かない。アイスランドの通貨クローネが信用力を失い、外貨と交換できなくなってしまったのだ。

アイスランドの景気が良かった時、国民は投資や消費に借金を重ね、借金の可処分所得に対する割合は213%にもなった。これは英国の169%、米国の140%に較べて異常に高い。さらに悪いことにアイスランドは国内金利が高かったので、金利の低いユーロ建てのローンを借りていたことだ(この比率がどれ位は知らないが)。通貨価値の下落はたちまち重い返済負担につながる~ユーロとの交換が出来ないと返済もどうするのだろうか?~

金融機関の国有化が一国の金融システムのバックストップになるのは、国の信用力があるからだ。国の対外的な信用力とはつまるところ、徴税能力なのである。国民から徴収する税金を増やしてでも、外国からの借金を返すから信用が得られる。アイスランドのように国の経済規模の何倍という債務を抱え込むと信用を失い通貨の価値が際限なく下落するものなのだろう。

新聞等によるとIMFの支援を仰ぎ、通貨をユーロと連動させるかユーロ圏に入るしかない・・・ということだがどちらも簡単ではない。アイスランドが漁業権を巡って隣国と対立関係にあることも事態を複雑にしている。

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米国でも強制資本注入が必要か?

2008年10月10日 | 金融

昨日(10月9日)ニューヨーク市場で株が又大暴落して、2003年以来初めて9000ドルを切り8,579ドルまで下がった。そろそろ底が近いかなぁと感じていたが、少し甘かったようだ。もっとも昨日は空売り規制が解禁された後の初めての取引日なので、売り方が暴れまくったのかもしれない。

この凶暴な市場を前にして恐らく米国財務省は、金融機関への資本注入案の具体化を急ぐだろう。問題は現在考えられている金融機関の自主申請ベースで良いかどうかだ。英国では当局が金融機関に資本増強が必要と判断した場合は、金融機関は市場または政府から資本増強を図らねばならない。

国内に眼をやれば、REITのニューシティ・レジデンスが民事再生法の適用を申請したことで、不動産融資比率の高い地銀などに悪い噂が広がりそうだ。政府・与党が地域の中小金融機関に10兆円の公的資金投入プランを固めつつあるようだ。

これらのプランが具体化するまでやはり株式相場は底を見ないのかもしれない。

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