今日(10月24日)の日経平均は800円を超える大幅下落で終わった。少し前にそろそろ底が近いなどと考えていたが甘かったようだ。今回の株安の背景には円高による輸出企業の業績悪化がある。それに加えて最近急速に投資家が神経質になっているのは、新興国の通貨安や債務不履行リスクだ。私はユーロが円やドルに対して急速に安くなっている理由の一つに東欧のリスクの高まりがあると感じている。というのは例えユーロ圏に入っていなくても、東欧諸国は西欧諸国と密接なつながりがある。東欧諸国の混乱はユーロ圏全体に大きなマイナスを与えると市場が判断している・・・・と感じている。
今日の日経新聞にハンガリーの問題が出ていた(グローバル金融危機 苦悩の新興・中小国)。その中に過去ハンガリーの個人や民間企業は金利の高い自国通貨(フォリント)建ての借入の替わりに、金利の低いスイスフラン建てやユーロ建ての借入を行っていたという記述がある。記事によるとフォリントは今年7月対ユーロで最高値を付けたが、その後の金融危機が世界的に拡大する中で24%急落した。現地通貨が安くなると、元利返済負担は急増しデフォルトリスクが急速に高まる。
エコノミスト誌のWho's nextという記事によると、過去10年の間に西欧の銀行~オーストラリアのRaiffeisnやイタリアのUniCredit、スェーデンのSwedbankなど~が東欧諸国に進出して貸出を延ばすとともに地元銀行を買収してきた。このことは二つのリスクを持っている。一つは東欧諸国でデフォルトが急増すると、進出した西欧の銀行の収益が悪化しバランスシートが脆弱になる。また東欧諸国からみると金融がタイトになった時「外銀の貸し渋り」に合うリスクだ。
ファイナンシャル・タイムズはアルゼンチンのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドが4000bpになり、ロシアのそれも1000bpになったと報じている。破綻したリーマンのCDSが800程度だったと記憶しているので、投資家がこれらの国のデフォルトリスクをいかに敏感に感じているかということが分かる。ロシアは過去8年間の石油や天然ガスの輸出で5千億ドルの外貨準備を持っているが、なお投資家はデフォルトリスクが高いと判断しているのだ。
因みに前述のエコノミスト誌の記事には欧州各国のデフォルトスワップのスプレッドとGDPに対する経常収支の割合が出ていたので、主な国の例を紹介しよう。このデータのよるとロシアのスプレッドは732.9で6.5%の黒字だ。経常赤字が多いのはウクライナで-7.2%、デフォルトスワップのスプレッドは1944.4と極めて高い。バルト三国、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアのデフォルトスワップのスプレッドも400bpを超えている。
東欧諸国の金融・通貨安定にはIMFの関与が不可欠だが、欧州中央銀行の関与も求められる。東欧諸国のリスクの高まりがユーロがドルや円に対して弱くなっている原因の一つであると私は見ている。
それにしても次から次へと悪材料が出てくるものだ・・・・と嘆息せざるを得ない。