バブルの歴史を解説した本を見ればオランダのチューリップ事件、南海泡沫会社事件、日本の土地バブルなどが必ず事例として出ている。次に新しい本が書かれる時間違いなく、事例として紹介されるのはアイスランドの崩壊だろう。
英米の経済紙(誌)はアイスランドが破産状態に陥った状態をMeltdownという言葉で表現している。Meltは「溶ける」でMeltdownは溶解、大崩壊などの意味だが、アイスランドのアイス(氷)が溶けるを連想させるのだろうか?
少し前までアイスランド経済は上手く行っているように見えた。国民の平均収入はEUの平均を上回っていたし、アルミ精錬業などに外資の大きな投資もあった。だが何よりも経済を引っ張っていたのは、金融業である。2003年に3大銀行の2つが民営化され、彼等は超積極的に海外資産の積み上げを図ってきた。その結果アイスランドの経済規模が145億ユーロだというのに、銀行が抱える資産は8倍以上の1250億ユーロに達した。アイスランドの人口はたった30万人しかいないので、国内の預金は微々たるものである。銀行はインターネット・バンキングを通じて英国のリテイル預金も集めていた。しかし大部分の資金は預金ではなく、短期の金融市場で調達されていた。2006年時点で預金でカバーされる資産は3割しかなかったのである。
金融危機が表面化してくると、外銀はアイスランドの銀行のリスクを敬遠し、資金放出を渋りだした。このためアイスランドの銀行は総て破綻し国有化された。だが問題は銀行の国有化だけでは全く片付かない。アイスランドの通貨クローネが信用力を失い、外貨と交換できなくなってしまったのだ。
アイスランドの景気が良かった時、国民は投資や消費に借金を重ね、借金の可処分所得に対する割合は213%にもなった。これは英国の169%、米国の140%に較べて異常に高い。さらに悪いことにアイスランドは国内金利が高かったので、金利の低いユーロ建てのローンを借りていたことだ(この比率がどれ位は知らないが)。通貨価値の下落はたちまち重い返済負担につながる~ユーロとの交換が出来ないと返済もどうするのだろうか?~
金融機関の国有化が一国の金融システムのバックストップになるのは、国の信用力があるからだ。国の対外的な信用力とはつまるところ、徴税能力なのである。国民から徴収する税金を増やしてでも、外国からの借金を返すから信用が得られる。アイスランドのように国の経済規模の何倍という債務を抱え込むと信用を失い通貨の価値が際限なく下落するものなのだろう。
新聞等によるとIMFの支援を仰ぎ、通貨をユーロと連動させるかユーロ圏に入るしかない・・・ということだがどちらも簡単ではない。アイスランドが漁業権を巡って隣国と対立関係にあることも事態を複雑にしている。
しかし一番のポイント「金融機関の国有化が一国の金融システムのバックストップになるのは、国の信用力があるからだ。国の対外的な信用力とはつまるところ、徴税能力なのである。」という点は私の見解です。
ロシアからの融資がどのような意味合いを持つのか、気になりますね。質の高いブログなので、また来させていただきます。