佐藤直曉の「リーダーの人間行動学」 blog

リーダー育成のための人間行動と人間心理の解説、組織行動に関するトピック

敵を知らず己を知らざらんば百戦危うし

2011-02-14 11:10:44 | リーダーの人間行動学
TPPの本質を知るためには、アメリカの意図を察知しなければならない。それに対して、我が国の政治家、エコノミスト、大手マスコミはあまりにもナイーブだ、とこれまで口を酸っぱくして申し上げてきました。

「自由貿易こそ国益だ」などと教条主義でわかったようなことを言う人間が多すぎて困ります。

もっと、アメリカの意図について研究してから言ったらどうだと言いたいですね。

アメリカの意図について真正面からとりあげた記事がようやく出てきました。

日経ビジネスオンライン 2011/02/14
三橋貴明のTPP亡国論――暴走する「尊農開国」
報じられない米国の「輸出倍増計画」


細かい内容は上記記事を参照していただくとして、アメリカがなぜTPPを突然言い出したかですが、その背景には雇用問題が大きいと三橋氏は論じています。以下引用します。

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「輸出事業を支援するために、我々は2014年までに輸出を倍増する目標を掲げた。なぜならば、輸出を増強すれば、我が国において雇用を創出できるためである。すでに我が国の輸出は増えている。最近、我々はインドと中国との間で、米国内において25万人の雇用創出につながる協定に署名した。先月は、韓国との間で7万人の米国人の雇用を支える自由貿易協定について最終的な合意に至った。この協定は、産業界と労働者、民主党と共和党から空前の支持を受けている。私は、上院に対し、本合意を可能な限り速やかに承認するよう求める。

 私は大統領に就任する以前から、貿易協定を強化するべきとの考えを明確にしていた。そして、私が署名する貿易協定は、米国人労働者を守り、米国人の雇用創出につながるものに限るだろう。

(上は、オバマ大統領の2010年(昨年)1月の一般教書演説)

2010年から5年間で、アメリカの輸出を2倍にするという、大胆極まりない戦略目標だ(※アメリカの輸出総額は、元々世界で1位、2位を争うほどに多い)。今回の一般教書演説において、 2014年までに輸出倍増と発言している以上、昨年1月時点の計画は、現時点でも『生きている』ということになる。

さらに、引用の最後の部分で、オバマ大統領は自分が署名する貿易協定は『米国人労働者を守り、米国人の雇用創出につながるものに限る』と断言しているわけだ。TPPを検討している最中に、この発言を一切報じなかった日本の各メディアは、職務を放棄していると断言されても仕方があるまい。

要するに、TPPとはアメリカの輸出倍増計画、ひいては同国の雇用改善計画」の一部に過ぎないのである。アメリカは単純に『自国の雇用改善』のために、TPPに日本を引き込もうとしているに過ぎないのだ」


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このようなアメリカの自国利益をしゃにむに追求していくやり方、これは中国の外交でも同じです。

というより、これが外交なのです。

「少なくとも『我が国は閉鎖的です。平成の開国を致します』などと、自虐的に国際会議の場で演説することは、決して『国際標準としての外交』などではないということを、民主党政権は知るべきだろう」(三橋氏)

相手の手の内もわからず、「平成の開国」だなどと菅総理や日経社説をはじめとする大手マスコミはさかんにあおっておりますが、真面目に仕事をしているとは思えませんね。マスコミの分析能力のなさにはあきれます。

また、経済学者の「世間知らずのおぼっちゃん」のような分析には、もう言葉がない。

アメリカの意図、弱味などを分析して、日本の国益を守るために有利な状況にもっていく戦略を考えないと、このままではアメリカの言いなりです。ただ、アメリカに追従するだけでは国益は守れない。しかし、ストレートに対立するわけにはいかない。

上の三橋氏の記事で欠けているのは(これから書かれるかもしれませんが)アメリカの対中国貿易戦略です。アメリカは、当然中国市場をこじあけようとしているでしょう。

いまや菅総理が6月にTPP参加宣言など出せないことは明かな政治状況ですが、誰が総理になろうと、アメリカは迫ってくるでしょう。

アメリカもある意味本気ですが、そこまで追い込まれているということでもあるでしょう。

こういう情況下で、日本にとって少し有利なのは、日本が含まれないTPPなど、アメリカにとっては何の意味もないわけです。なにしろ、両国のGDPを合わせればTPP参加国の90%になってしまうわけです。日本には、それなりの発言権があるはずです。

ともかく能天気な「平成の開国論」だけはやめにしてほしい。


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