佐藤直曉の「リーダーの人間行動学」 blog

リーダー育成のための人間行動と人間心理の解説、組織行動に関するトピック

リーダー育成77――個人を動かすことと組織を動かすことの共通点

2009-08-17 09:43:57 | リーダー育成
人を伸ばすにはどうしたらよいか?

これについては、このリーダー育成研究室で散々触れてまいりました。簡単に言ってしまえば、その人のよいところを見つけて、そこをほめ、また励ますことです。

すると、相手は自分でもその点を伸ばそうと頑張るようになる。

よく例に出るのが、『小公子』のお話です。ご存じですか? 子供のころ、少年少女文学全集かなにかで読みませんでしたか? 今の世代は、そういうものは読まないのでしょうかね?

頑固で意地悪なお爺さん(イギリス伯爵だったか?)のところにアメリカから孫がやってくる。この孫が素直でいい子なの。それで、お爺さんはいい人だと素直に思い、またそのようにお爺さんに接する。

すると、お爺さんも最初はうるさい孫なんかいやだと思っていたが、だんだん可愛くなり、しかも孫の言うように、まわりにも優しくてよい人に変わっていったというお話です。

リーダーは、相手のよいところを認めて、それを褒め伸ばす。これが認める技術です。これがリーダー育成において、リーダーにまず教えないといけないことだと私は思っております。

スポーツの世界では、こういうことが以前よりもわかってきたように思います。以前は、コーチというのはただ子供を怒鳴りつけるだけでしたからね。まだ、ひどい人もいるかもしれませんが、少しずつ理解は進んでいるのではないでしょうか。

個人指導の場合はこれでだいたいよいわけですが、では組織に対するときにはどうしたらよいでしょうか。

今日は日経ビジネスオンラインでよい記事をみつけました。

山田ズーニーという方が書いている記事です。
「第16回 集団を動かしたいなら、「『増やしたいところ』を誉めなさい」

「こっちが反応したところに、人は反応する」という法則を山田さんは見つけたと、言っています。

ブログで大多数の読者はおだやかで好意的に静かに読んくれているのに、なかにはイヤなコメントを送ってくる人間もいる。そういうのに反応すると、それについてのコメントばかり集まる。

すると、好意的に読んでくれていたサイレント・リーダーも気分を害する。場が汚れるような感じがするというわけです。

私もこれについては経験があります。マジョリティというのはだいたいがサイレントですね。何か文句を言ってくるのは案外比率としては少いのですが、それが突出した感じになります。そして、それが場の雰囲気をつくってしまう。これはグループでも同じこと。問題児がすごくインパクを心に与えたりしますね。

こういう法則があるので、それを逆手にとることが必要だと山田さんは言っていあます。

つまり、「(自分が)増やしたい部分に(自分から)反応する」ようにするとよい結果がでる、というのです。

よい反応を示している人たちにリーダーは着目して反応しろ、ということですね。

もっとわかりやすく言えば「よい反応を示している人をいちはやく集団の中で見つけ、彼らを、認め、励ます」ということ。

たとえば、高校生のワークショップでは、

「あっ、そこの後ろの男子の人たち、積極的に動いてくれてますねー! いいですねー!」

「あっ、前の女子の人たちは、もういすを移動して円になって座っていますね。動きがかろやかですね」

「みんな協力的に動いてくれて、進行上とっても助かります。ありがとう!」

こう言うと、ほかの子たちもだんだんそのように活動してくれるのだそうです。

もう一例。10人くらいの社内グループで、常習的に遅刻する人が2,3人いたとします。このとき、新人リーダーはどう対処すべきか。

何も言わないのは最悪。しかし、遅れた人間に文句を言えば、場の雰囲気が暗くなる。

そこで、こうする。

「まとめ役の私が新人であるにもかかわらず、非常に多くの先輩が、毎回時間をきちんと守って集まってくださっていること、大変助かっております。とくに本日は棚卸しの時期で、仕事を抜けてくるのも大変だったと思いますが、時間厳守できてくださってありがとうございます」

このように言うと、いつも時間をきっちり守ってきている人は、認められたので悪い気はしない。これからも時間を守っていこうと励まされる。

遅刻し続けている人は、
「まとめ役が新人だから、少々遅れても、まあいっか、と思ってきたけど、みんな意外にちゃんと協力してるんだな」

「みんなを待たせてわるかったかな」

「遅れていたのは俺だけ?」

と時間厳守で来ている人に、神経を使い始める。

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山田さんの記事を私ははじめて読んだのですが、なかなかたいした人です。

自分なりの法則とか原理を見つけた人は非常に強いのです。それは実践で得られたものであり、頭でっかちの理論ではないからです。

極端に言えば間違った理論であろうと、実践で身につけた自分の理論はその人の力になる。しかし、知識だけの理屈はいざというときにまるで役立たないものなのです。

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話を戻しますが、山田さんの記事を読んで、「組織をひとつのものとして見る」という意味が少しわかってきたような気がしてきました。

個人を伸ばすのも、集団を伸ばすのも、同じようなことだということです。個人であろうと、組織であろうと、よい点を認めて、それを伸ばす、ということですね。

組織の場合は特に人間同士の影響を考慮しないといけません。こういうのを「感応現象」といいます。人間どうし影響しあうということです。無意識的にですね。山田さんの例もやはり感応現象のひとつとして考えるべきなのです。

人間集団を扱うときにはこの「感応現象」を大事にしないといけません。ですから、初心者のコースでも初心者ばかり集めるのは本当はよくない。少し上級者が混じっていると、そちらの方にみんなが引っ張られて、初心の人の進歩が早いものです。


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