望郷いなか詩

田舎に燦々といきたい

幸男は轟く

2020-06-26 23:16:01 | 田舎色逍遙

幸男の雄叫び

幸男はサラリーマン上がりの初老
老人の悲哀を胸に街角をゆく
三十歳女盛りむちむち下品さこそが女盛り
幸男は伏し目がちにすれ違う女盛り 三十歳に感じ入る
失われた世界から生臭い下品 加齢臭を刺激するのだ
スケベ爺と叩かれる被害妄想
幸男は己れに慟哭の雄叫び
ワーオワーオ 孫娘に贈る雄叫びを轟かす

血気盛んな時代
七人の敵と闘いぬいた幸男雄叫びをあげる
「芸のためなら女房も泣かす」
そんな有名人 芸人の半生を立派と賛美もしなければ畏敬の念もない
孫娘にジイジとジイジ呼ばれ顔が綻ぶ
世間一般の唯のクソ爺こそ強者
拍手なき人生劇場に悔いはなし

ワーオワーオと幸男は爺の雄叫びを上げた

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ハチ公は花の宿

2020-06-22 23:05:40 | 田舎色逍遙

ハチ公は花の宿

ハチ公のママは晴子
「はっちゃんママよ」
心底は荒波打ち寄せようと この呼掛けで晴子は波穏やかな湖水にポッカリと浮かんでる

四季折々に晴子の庭
チューリップ バラ 向日葵 コスモス 花*花はスポットライト
冬 松葉は鋭き剣先で春を覚醒 
モッコクの赤い実にメジロはジャグリング 
晴子はつんのめりながらも凹凸の道を遠回り
ハチ公は前に後ろに回ってワンワン
晴子の背骨を気遣う様に鳴き声はジャグリング

晴子は毎朝毎夜
一人息子の二世代住宅へ
夫婦仲良くと文字を読みあげる
母と言う響きはいつの間にか封印して胸の奥深くへ晴子

晴子はハチ公と花の宿
「はっちゃんママよ」
ハチ公へ呼掛けはかん高く
晴子はハチ公と花の宿から余生の散歩道






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礼節なきドブ板

2020-06-18 20:01:14 | 田舎色逍遙

礼節なきドブ板

側溝の上を歩いている
誰もが無意識なのだ
コンクリート溝蓋きれて鉄の溝蓋 
網目から雑草が覗いている
露草の花はドブにおりた何だろう
側溝は農業用水路でありながら汚泥の堆積するドブ溝だった

汚水の悪臭 汚泥は凄絶なまでの排泄物
ブクブクと泡立つ音にネズミ ボウフラ 蛆虫
意気盛んに最高の祝盃を上げていそうなドブ溝

スマホを見ながら自転車をこぐ娘たち男よ
ドブ溝の上で無意識に生理現象 食物に感謝するべきだ
俺は俺達は家族を愛し養えるのも食物を消化 あとは任せすぎる

我々はドブ溝の蓋になれないドブ板
側溝を踏みつけて歩いていくことを意識するべきだ





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繭 七十歳の性春

2020-06-12 22:59:23 | 田舎色逍遙

七十歳の性春

繭の七十年は繭
青春期に母繭になるよりも
花を習いて花の道へ

繭は七十歳
独り身の七十歳に酷と言い聞かせる訳
自炊を知らない
夜な夜な独り言
一人ベッドの中で流れない涙
涙を流して身体に染みついたのは罰を課す七癖

母繭を拒否した七十年
繭は七十歳の性春
セピア色の繭 化粧でカムフラージュ
燃え尽きるまで官能と性春の生涯

子繭のいくすえを見届けず蝶々になった母繭の親心
七十歳 繭の性春に頷くのは母心

母繭は母繭であったことを誇示したかった

母心は夏よりあつく






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絹子 九十歳の峰々

2020-06-10 18:24:04 | 田舎色逍遙

徳島市より剣山を遠望

 九十歳の峰々

絹子 独り九十歳
夫 娘を見送った
大風に葉っぱもがれ
枝骨は折られてでもブラリ
周囲360度の枝枝に護られて辿り着いた九十年

白髪を越える年季の入った深い顔 迷路の数だけ九十歳
小枝の細々とした身体に鋼の骨組み九十歳

絹子は言う出なく
感慨の中で謳った
生まれおちて今までの九十年
心 身体 変わり果てた
変わらないものは生理現象のいとなみのみ
だから生きている

絹子は思い切る
みすぼらしい枯れ木での旅立ち
今更御免こうむる九十歳
美食三昧の峰々より天界へ
羽衣の舞を求めて止まない絹子九十歳




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