望郷いなか詩

田舎に燦々といきたい

絹子 九十歳の峰々

2020-06-10 18:24:04 | 田舎色逍遙

徳島市より剣山を遠望

 九十歳の峰々

絹子 独り九十歳
夫 娘を見送った
大風に葉っぱもがれ
枝骨は折られてでもブラリ
周囲360度の枝枝に護られて辿り着いた九十年

白髪を越える年季の入った深い顔 迷路の数だけ九十歳
小枝の細々とした身体に鋼の骨組み九十歳

絹子は言う出なく
感慨の中で謳った
生まれおちて今までの九十年
心 身体 変わり果てた
変わらないものは生理現象のいとなみのみ
だから生きている

絹子は思い切る
みすぼらしい枯れ木での旅立ち
今更御免こうむる九十歳
美食三昧の峰々より天界へ
羽衣の舞を求めて止まない絹子九十歳