望郷いなか詩

田舎に燦々といきたい

自分丸の船出

2019-03-31 00:51:09 | 望郷クリームソーダ
海陽町野江 忘却の船


船は自分丸

冬は枯草の荒波 
春より雑草の海原
海まで数キロの陸地
此処に船はいる
置き去りの船なのか
新たな航路へ船出できるのか
会話で真実はさぐれない
腹を読むのに疲れた
何も語らない陸の船に
自分の心を探しつづける
自分丸は言葉なき対話の岸壁

春の海原は一面のレンゲ
俺は春と酒の宴
僕はあの日 一面レンゲ畑の夢のなか
ワシと言う今
ワシを誇りながら
置き去りの船
自分丸は春の海へ
新たな春に出航してやまない




万円の先に万光年

2019-03-24 14:30:08 | 望郷クリームソーダ
海陽町 母川に落日

万光年の彼方

あの日の昼下がり
雲雀は麦畑の空に春太鼓
自給自足の空を謳歌
麦は万光年の空気に稔り
万円に狂乱する春の星は
万光年のまだ先だった

あれから数十年の昼下がり
雲雀はネギ畑の空で
万円の美声は響かず
万円の口笛を聴くだけ
万円で空腹を満たして
万光年先へ放浪の空
朝日と落日の交わる万光年
万円なしに行き着く時に
万光年先のお伽噺に眠る



二つに割れる春

2019-03-12 21:33:00 | 望郷クリームソーダ

二つの春


枯草と青草あいま見える
乳母車に杖を乗せた老婦
今を何の春と思いに耽り
何回目の春か数えられない
春にはしゃぎたいのに
花の散る春の先へ行きたくない

老婦は春の娘を胸にしまい
乳呑み子のない乳母車の重さに歩みを止めた
あと数回巡るであろう春
この世の二つに割れる儚い春
臭い春匂う春に蓋をして
青い山に杖を張り上げる

青い山に季節は始まる
山の天辺から谷底まで
愛と怨念に割られることない
純粋の神々しい季節
求められない 願われない
山の春とあるだけでよい
春は心起きなく山にある