これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

一番風呂にご用心

2011年01月30日 20時18分23秒 | エッセイ
 昨日、夫が外出をした。帰る時間を聞くのは、私ではなく娘である。
「何時に帰ってくるの?」
「9時半くらいかな」
「夕飯はいらないんだね。わかった」
 別に、待ち遠しくて聞いているのではない。夫のいぬ間に、こっそりパソコンを使うため、帰宅時間をチェックしているだけだ。どうも、夫との約束では、一日一時間と決まっているらしい。玄関が閉まり、戻ってくる気配のないことを確かめて、娘が電源をオンにした。
「さあ、今日は使い放題だ~!」
 
 私はその間に夕食の支度をする。平日は、専業主夫の夫が作ってくれるのだが、土日や夫のいない日は、私が用意しなければならない。
「できたよ」と声をかけても、娘はパソコンに夢中だ。大ファンである、菅野美穂のサイトを見ては、関連ページをクリックしている。ようやく食べ始めたと思ったら、パッパと食べ終わり、またパソコンの前に戻る。今日は、ここが定位置らしい。
 時計が8時を回ったとき、娘に声をかけた。
「お風呂は?」
「あとにする。お母さん、先に入っていいよ」
 ネットサーフィンに熱中し、それどころではない。お風呂は、夫が帰ってきてからでいいと思っているようだ。
 一番風呂は久しぶりである。肌にはよくないが、風呂場の床は乾いているし、湯船に髪が浮いていることもない。「たまには悪くないわね~♪」と鼻歌を歌いながら、風呂場に向かった。
 ところが、風呂場がやけに寒い。「おや?」と不審に思い、浴槽をのぞいたら、中はからっぽだった。スイッチを入れ忘れていたのだ。
 力なくガウンを羽織り、すごすごと部屋に引き返してきた。
「あれっ、もう出たの? 早いね」
「違う……。お湯がなかった……」
「うひょひょひょっ! やっちゃったね~!!」
 娘は、ひっくり返って大笑いしている。

 くそー。

「風呂、メシ、寝る」に慣れてしまうと、お風呂のスイッチを入れることすら忘れてしまうのだ。一番風呂には、沸かし忘れのリスクがある。

 一夜明け、今日は家族で近くの神社に行き、ご祈祷を受けてきた。お祓いをしてもらうと、すがすがしい気分になってよい。
 帰る前におみくじを引き、ドキドキしながら開けてみる。
「平(へい)」
 この神社では、去年も平が出た。吉でも凶でもない、微妙なポジションだ。
「これは、事を急にするときは仕遂げがたし。心を柔和にもちてよし」などと書いてある。
 隣からは、「吉だよ!」と喜ぶ娘の声が聞こえた。

 ふん、ノロウイルスにかかったくせに、生意気な。

 さらに読み進むと、「かへすがへすも水なんを注意すべし」とある。



 これはもしや。
 私は娘を肘でつつき、おみくじを見せた。
「ねえねえ、水難だって! 当たってる!! 昨日のお風呂とか」
「はぁ? ちょっと違うんじゃない!?」
 娘の反応は、寒気並みに冷たい。
 いやいや、あると思ったお湯がなかったんだもの。やっぱり水難でしょ。
 かへすがへすも一番風呂を注意すべし。




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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (18)
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