これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

幻のメッセージ

2011年01月20日 20時25分05秒 | エッセイ
 もうすぐ母の誕生日だ。
 東京から那須は遠いので、もっぱらバースデーカードですませている。なるべく、ユニークなものを選んでいるが、今年はフォトフレーム調のカードにした。
 ここに娘の写真を入れれば、母は喜ぶだろう。



 裏面のメッセージスペースに、「お誕生日おめでとう」と書けばできあがりだ。



 もちろん、メッセージ担当は、孫である娘の役割である。部活が忙しいというので、ひと段落してから書かせようと思っていたのだが、肝心なときに体調を崩してしまった。
「気持ち悪い……。吐きそう」
 医師の診察を受けると、「ノロウイルスです」と診断された。熱はさほど高くないが、嘔吐と下痢がひどい。連日寝たきりで、とてもメッセージを書ける状態ではない。
 
 さて、困った。
 母の誕生日は、待っていてくれない。早い分にはいいが、誕生日が過ぎてから届くバースデーカードなど、何の意味もない。
 ここはひとつ、私が書くしかないだろう。
 だが、どうにも面倒くさい。
 意表を突いて、夫が書いたらどうなるかと考えてみた。
 私は歳の差婚をしているので、夫はかなりの年上だ。母とは、何と4歳しか離れていない。母から見ると、父は4歳年上、夫は4歳年下という微妙な関係ができている。
 あまり大きな声では言えないが、母は筋肉質の男性が好きなので、おそらく夫は好みのタイプだ。今までにも、視線や仕草などから、異性として意識していることがわかる場面があった。

 そんなポジションの夫が、母にバースデーカードを書いたらどうなるだろう。
「あらっ、龍一さんが、お誕生日おめでとうですって! アタシに気があるのかしら?? ウフフ、困ったわねぇ~♪」と、舞い上がってしまうだろう。
 突然、化粧をするようになったり、ジャージのかわりにスカートを履かれたりしたら、面白いけれども混乱するに違いない。やはり、過度な刺激は与えないほうがよい。
 仕方ない。やっぱり私が書くしかないかと、覚悟を決めて帰宅した。
「お母さん、お帰り! ミキ、やっと治ってきたよ」
 ラッキーなことに、娘がノロから復活したらしい。すべり込みセーフで、カードを託した。

 残念ながら、夫から母へのお祝いメッセージは幻に終わった……。
 次の機会があれば、ぜひ試してみたいものだ。




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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (14)
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