第2子が欲しいが、なかなか授からない。年齢的なリミットも近づいているので、今月はついに体外受精を受けることにした。
しかし、予想を超える忙しさであった。なにしろ、毎日、注射注射の連続なのだ。排卵誘発剤に卵胞を成熟させる薬、さらには排卵を防ぐ薬など、10日連続で通院し、注射を強いられた。ときには、一度に2種類も打たれ、体中が穴だらけになった気がした。
一番きつかったのは、採卵手術前日の注射である。
「この日は、朝6時に来て注射となります」
「えっ、朝6時ですか!?」
早すぎる時間に焦り、私は顔をひきつらせて確認した。
「はい、朝の6時。救急に行ってくださいね」
聞き間違いではなかったようだ。主治医は顔色ひとつ変えずに、サラリと言ってのけた。
会計を待つ間、頭の中でシミュレーションをする。
家から病院まで1時間かかるから、5時に出ないと間に合わない。となると、起きるのは4時か。いや、念のため、3時50分にしよう。
幸い、病院から職場までは30分ほどだ。おそらく、6時半から7時の間に着くから、途中、コンビニでパンを買い、職場で朝食をとればよい。
私はいつも、始業の8時半ギリギリにやって来て、ダッシュで出勤カードを通す。7時前に出勤するなど、20年以上の教員生活でも、初めてではないか。考えるだけで、頭がクラクラしてきた。
そして、いよいよ、その日がやってきた。
寝坊することもなく、予定通りに病院に着くことができた。受付には、疲れた顔で、ヨレヨレになった職員がおり、かすれた声で「奥へどうぞ」と案内してくれた。おそらく、夜間はひっきりなしに急患が押しかけ、対応に追われたのだろう。注射をしてくれた看護師も、目の下にクマを作り、すっかりやつれている。
仕事を増やして申し訳ないが、医師の指示だから仕方ない。
会計をすませて外に出ると、さきほどまでの暗闇が、徐々に明るくなっている。路上で日の出を見るのも悪くはない。早朝の寒気も気持ちいい。。
コンビニで買い物をしていたら、職場到着が6時50分になってしまった。でも、いつもより相当早い。優雅に朝食をすませ、たまっている仕事を片づけているうちに、始業の時間となった。普段は、コンタクトレンズを入れたり、化粧の続きをしたりと、バタバタ動いている時間帯に、席に着いていることがすごい。
エグゼクティブの仲間入りをした気分になったとき、副校長に声をかけられた。
「笹木先生、今日は何時に来ましたか?」
「今日は珍しく早かったんです。7時前にはいました」
答えながら、「よくぞ聞いてくれた」という思いと、「どうしてそんなことを聞くのだろう」という気持ちが交錯する。理由はすぐにわかった。
「そうでしたか。カードを通すのを忘れませんでしたか?」
「!!」
そういえば、カードを通した記憶がない。せっかく早く来たのに、これでは出勤したことにならないではないか。
私は苦笑いして答えた。
「ああ、忘れたかもしれません」
副校長は、「通し忘れということで処理します」と言ってくれたが、おバカなミスをしでかしたことにショックを受けた。
とたんに、ヨレヨレになり、目の下には濃いクマができたような錯覚を起こした。
変わったことをするとダメだ。
体外受精のご報告は、また後日~♪
楽しんでいただけましたか? クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
しかし、予想を超える忙しさであった。なにしろ、毎日、注射注射の連続なのだ。排卵誘発剤に卵胞を成熟させる薬、さらには排卵を防ぐ薬など、10日連続で通院し、注射を強いられた。ときには、一度に2種類も打たれ、体中が穴だらけになった気がした。
一番きつかったのは、採卵手術前日の注射である。
「この日は、朝6時に来て注射となります」
「えっ、朝6時ですか!?」
早すぎる時間に焦り、私は顔をひきつらせて確認した。
「はい、朝の6時。救急に行ってくださいね」
聞き間違いではなかったようだ。主治医は顔色ひとつ変えずに、サラリと言ってのけた。
会計を待つ間、頭の中でシミュレーションをする。
家から病院まで1時間かかるから、5時に出ないと間に合わない。となると、起きるのは4時か。いや、念のため、3時50分にしよう。
幸い、病院から職場までは30分ほどだ。おそらく、6時半から7時の間に着くから、途中、コンビニでパンを買い、職場で朝食をとればよい。
私はいつも、始業の8時半ギリギリにやって来て、ダッシュで出勤カードを通す。7時前に出勤するなど、20年以上の教員生活でも、初めてではないか。考えるだけで、頭がクラクラしてきた。
そして、いよいよ、その日がやってきた。
寝坊することもなく、予定通りに病院に着くことができた。受付には、疲れた顔で、ヨレヨレになった職員がおり、かすれた声で「奥へどうぞ」と案内してくれた。おそらく、夜間はひっきりなしに急患が押しかけ、対応に追われたのだろう。注射をしてくれた看護師も、目の下にクマを作り、すっかりやつれている。
仕事を増やして申し訳ないが、医師の指示だから仕方ない。
会計をすませて外に出ると、さきほどまでの暗闇が、徐々に明るくなっている。路上で日の出を見るのも悪くはない。早朝の寒気も気持ちいい。。
コンビニで買い物をしていたら、職場到着が6時50分になってしまった。でも、いつもより相当早い。優雅に朝食をすませ、たまっている仕事を片づけているうちに、始業の時間となった。普段は、コンタクトレンズを入れたり、化粧の続きをしたりと、バタバタ動いている時間帯に、席に着いていることがすごい。
エグゼクティブの仲間入りをした気分になったとき、副校長に声をかけられた。
「笹木先生、今日は何時に来ましたか?」
「今日は珍しく早かったんです。7時前にはいました」
答えながら、「よくぞ聞いてくれた」という思いと、「どうしてそんなことを聞くのだろう」という気持ちが交錯する。理由はすぐにわかった。
「そうでしたか。カードを通すのを忘れませんでしたか?」
「!!」
そういえば、カードを通した記憶がない。せっかく早く来たのに、これでは出勤したことにならないではないか。
私は苦笑いして答えた。
「ああ、忘れたかもしれません」
副校長は、「通し忘れということで処理します」と言ってくれたが、おバカなミスをしでかしたことにショックを受けた。
とたんに、ヨレヨレになり、目の下には濃いクマができたような錯覚を起こした。
変わったことをするとダメだ。
体外受精のご報告は、また後日~♪
楽しんでいただけましたか? クリックしてくださるとウレシイです♪
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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