先日、ついに体外受精を経験してきた。
今や、4人に1人の赤ちゃんが体外受精で生まれる時代といわれている。怒濤のような一カ月をどのように過ごしたか、ご報告したい。
まずは、排卵誘発剤の注射から始まった。これは、去年も打ったことがあるが、規定量だと効果がなかった。注射をしたのに、たったの1個しか排卵されなかったのだ。40代になると、反応が鈍くなるらしい。
「今回は2倍使いましょう。卵子は多いほうが成功率も上がりますから」
主治医の指示に、少々傷ついた。気持ちは若いつもりでいても、体はもはや、若くないのだ。素直に倍量を受け入れるしかない。
おかげで、超音波の画像には、左右の卵巣に、それぞれ7個ほどの卵子が映っていた。
次は、この卵子を成熟させるホルモンに切り替えて注射をする。数が多いと、予定よりも早く排卵してしまうことがあるらしい。採卵までは、卵巣内にとどめておかねばならぬので、排卵させない薬も併用して、毎日注射に通った。
さらに、診察で卵子の成長具合を見ながら、採卵日を決める。採卵には麻酔を使うので、1日入院しなければならない。仕事に穴を開けることを心配していたら、運良く土曜入院、日曜退院という日取りになった。
病室に案内されて驚いた。特別室だったのだ。
32.7平米という広さで、ベッド脇にはFAXやデスクまである。
もちろん、トイレ・バスも完備だ。
コップ・タオル・シャンプー・リンス・スリッパなどのアメニティグッズも用意されており、ホテルのようだった。
こんな立派な個室だと、料金はどうなるのかと心配になる。
「大丈夫。自費の場合、特別室でも大部屋でも、料金は同じなんですよ」
看護師さんの説明に安心し、VIP待遇に気をよくする。体外受精をするというより、体外受精つき特別室に泊まりにきたような、ウキウキ感である。
3時間ほど点滴したあとは、いよいよ採卵となった。
体外受精で一番苦痛なのは、卵子を体から取り出す、この作業である。病院によってやり方は違うが、ここの病院では麻酔をかけるというので、痛みを感じないのだろうと軽く考えていた。
「じゃあ、眠くなるお薬が入りまーす」
点滴の針から麻酔薬が注入されたとき、「歯ぎしりしたらイヤだな」とか、「いびきかいちゃったら恥ずかしい」などと心配したが、どういうわけか、一向に眠くならない。
麻酔が効いていないのかと訝しんだとき、お腹に激痛が走った。
痛たたたた~!
やはり、麻酔が効いていないようだ。「左は終わりました」などという、などという、
医師の会話まで耳に入ってくる。その後も、ズキ、ズキ、ズキと、ときおり襲ってくる痛みを我慢しなくてはならなかった。
排卵誘発剤だけでなく、麻酔も2倍必要だったのかしら……。
「終わりましたよ~!」と声がかかり、ようやく苦痛から解放される。
看護師さんに、「意識はしっかりしていますね」と声をかけられたので、「麻酔が効いていなかったみたいです」と答えると、不思議そうな顔をされた。
「そうですか? 寝息立てていましたよ」
「……」
その日、起きているのがつらかったことを考えると、やはり、麻酔は機能していたのだろう。だが、激しい痛みで目が覚めてしまったらしい。それでは、意味がないと思うけれども……。
平均で5個前後の卵子が取れるそうだが、私の卵子は6個だったという。超音波ではもっとあったのに、卵巣内のものがすべて取れるわけではないし、使えない卵子もあるからと説明された。
このあと、夫から採取した精子をドッキングさせ、体外受精をする。
受精卵がいくつかに分裂し、成長したことを見届けて、3日後、子宮内に戻すことになる。この作業を胚移植というらしい。不幸にして、受精しなかった場合は、胚移植ができないと言われ、私はドキドキしながら病院に行った。
「大丈夫ですよ! 受精していましたから、戻す卵がありますよ」
看護師さんにそう聞いたとき、どれほど安堵したことか。
6個の卵子のうち、受精していた3個を胚移植した。普通は1個らしいが、これまた年齢を考えての配慮である。
しかし、受精卵が子宮内に着床し、出産までこぎつける割合は、たったの3割である。
プロ野球選手が、ヒットを打つ確率と同じでは、喜んでもいられない。
2月上旬には結果がわかる。空振り三振バッターアウトとなるのか、逆転満塁ホームランとなるのか、見当もつかない。せめてポテンヒットでもいいから、出塁したいものだ。
もしダメだったら……。
再度、特別室入りをして、打順が回ってくるのを待とうじゃないか。
楽しんでいただけましたか? クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
今や、4人に1人の赤ちゃんが体外受精で生まれる時代といわれている。怒濤のような一カ月をどのように過ごしたか、ご報告したい。
まずは、排卵誘発剤の注射から始まった。これは、去年も打ったことがあるが、規定量だと効果がなかった。注射をしたのに、たったの1個しか排卵されなかったのだ。40代になると、反応が鈍くなるらしい。
「今回は2倍使いましょう。卵子は多いほうが成功率も上がりますから」
主治医の指示に、少々傷ついた。気持ちは若いつもりでいても、体はもはや、若くないのだ。素直に倍量を受け入れるしかない。
おかげで、超音波の画像には、左右の卵巣に、それぞれ7個ほどの卵子が映っていた。
次は、この卵子を成熟させるホルモンに切り替えて注射をする。数が多いと、予定よりも早く排卵してしまうことがあるらしい。採卵までは、卵巣内にとどめておかねばならぬので、排卵させない薬も併用して、毎日注射に通った。
さらに、診察で卵子の成長具合を見ながら、採卵日を決める。採卵には麻酔を使うので、1日入院しなければならない。仕事に穴を開けることを心配していたら、運良く土曜入院、日曜退院という日取りになった。
病室に案内されて驚いた。特別室だったのだ。
32.7平米という広さで、ベッド脇にはFAXやデスクまである。
もちろん、トイレ・バスも完備だ。
コップ・タオル・シャンプー・リンス・スリッパなどのアメニティグッズも用意されており、ホテルのようだった。
こんな立派な個室だと、料金はどうなるのかと心配になる。
「大丈夫。自費の場合、特別室でも大部屋でも、料金は同じなんですよ」
看護師さんの説明に安心し、VIP待遇に気をよくする。体外受精をするというより、体外受精つき特別室に泊まりにきたような、ウキウキ感である。
3時間ほど点滴したあとは、いよいよ採卵となった。
体外受精で一番苦痛なのは、卵子を体から取り出す、この作業である。病院によってやり方は違うが、ここの病院では麻酔をかけるというので、痛みを感じないのだろうと軽く考えていた。
「じゃあ、眠くなるお薬が入りまーす」
点滴の針から麻酔薬が注入されたとき、「歯ぎしりしたらイヤだな」とか、「いびきかいちゃったら恥ずかしい」などと心配したが、どういうわけか、一向に眠くならない。
麻酔が効いていないのかと訝しんだとき、お腹に激痛が走った。
痛たたたた~!
やはり、麻酔が効いていないようだ。「左は終わりました」などという、などという、
医師の会話まで耳に入ってくる。その後も、ズキ、ズキ、ズキと、ときおり襲ってくる痛みを我慢しなくてはならなかった。
排卵誘発剤だけでなく、麻酔も2倍必要だったのかしら……。
「終わりましたよ~!」と声がかかり、ようやく苦痛から解放される。
看護師さんに、「意識はしっかりしていますね」と声をかけられたので、「麻酔が効いていなかったみたいです」と答えると、不思議そうな顔をされた。
「そうですか? 寝息立てていましたよ」
「……」
その日、起きているのがつらかったことを考えると、やはり、麻酔は機能していたのだろう。だが、激しい痛みで目が覚めてしまったらしい。それでは、意味がないと思うけれども……。
平均で5個前後の卵子が取れるそうだが、私の卵子は6個だったという。超音波ではもっとあったのに、卵巣内のものがすべて取れるわけではないし、使えない卵子もあるからと説明された。
このあと、夫から採取した精子をドッキングさせ、体外受精をする。
受精卵がいくつかに分裂し、成長したことを見届けて、3日後、子宮内に戻すことになる。この作業を胚移植というらしい。不幸にして、受精しなかった場合は、胚移植ができないと言われ、私はドキドキしながら病院に行った。
「大丈夫ですよ! 受精していましたから、戻す卵がありますよ」
看護師さんにそう聞いたとき、どれほど安堵したことか。
6個の卵子のうち、受精していた3個を胚移植した。普通は1個らしいが、これまた年齢を考えての配慮である。
しかし、受精卵が子宮内に着床し、出産までこぎつける割合は、たったの3割である。
プロ野球選手が、ヒットを打つ確率と同じでは、喜んでもいられない。
2月上旬には結果がわかる。空振り三振バッターアウトとなるのか、逆転満塁ホームランとなるのか、見当もつかない。せめてポテンヒットでもいいから、出塁したいものだ。
もしダメだったら……。
再度、特別室入りをして、打順が回ってくるのを待とうじゃないか。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)