「英国の離脱が、極右など反EUを掲げて多様性を否定する政治勢力を勢いづかせることを憂慮する。同時に金融市場の混乱や世界経済への悪影響を懸念する。」
「フランス、ドイツでも反EU感情が高まっている。英国民の選択が引き金となって、各国でEU離脱派が伸長し、排外主義や国家主義の台頭に結び付くことは避けなければならない。」
経済的な疲弊が、排外主義、極右勢力の台頭を許しています。イギリス、アメリカ、日本などが資本主義経済を推し進め、新自由主義的な政治経済を推し進めた結果です。
大量生産、大量消費型浪費型政治経済の末路をある意味では象徴しています。巨大資本と多国籍企業が国境を越えて利益を求め、国々の司法、政治を自らの勝手な経済活動に奉仕させる。この流れによる国々の混乱に乗じて、極右政治勢力が排外主義を主張して台頭する姿は、皮肉ですが、政治的には注意しなければなりません。
食料、エネルギーなどは国民と国にとっては死活的問題であり、現在のような経済、社会構造を変化させてしまった中では貿易の在り方を急激、抜本的に変更、後戻りすることは困難なことです。今回のイギリスにおける混乱は、貧富の格差拡大、不安定雇用の爆発的拡大の問題として存在しています。
<琉球新報社説>英、EU離脱選択 多様性否定を憂慮する
英国民は国民投票で欧州連合(EU)離脱を選択した。
英国の離脱が、極右など反EUを掲げて多様性を否定する政治勢力を勢いづかせることを憂慮する。同時に金融市場の混乱や世界経済への悪影響を懸念する。
離脱派が勝利したのは、EU加盟国拡大で東欧などから英国に流入する移民が雇用を奪っているとの不満や、過激派によるテロ、格差拡大など社会の不安が広がっているからだとみられる。
欧州の歴史は戦争の歴史である。戦争のたびに領土は塗り替えられ、人々の運命を左右した。そしてナチス・ドイツの暴走を許し第2次大戦に至った。その反省から国家主義を克服し国家間の和解と平和構築のために「欧州統合」が実現した。離脱はEUの理念に反するのではないか。
ヒト・モノ・カネの移動を自由にしたEU単一市場によって、英国の貿易や投資は活発になり、雇用も拡大したはずだ。
英国が2015年に輸入したモノとサービスの約53%がEUからで、輸出も約44%がEU向けだ。EU各国との貿易が英国経済を支えている。国際通貨基金(IMF)は英国がEUから離脱を決めた場合、19年の実質国内総生産(GDP)が、残留した場合に比べ5・6%減る恐れがあると試算している。リーマンショック後の09年(4%)を上回る水準だ。
一方、日本にとっても影響が大きい。14年の日本からの投資額は約1兆円。約1100の企業が進出し、日本の対英投資は対米に次ぐ額だ。特に自動車メーカーはEU市場への輸出の拠点と位置付け、英国に進出している。英国はEUの一員で域内の関税がなく通関手続きも簡便だからだ。しかし、離脱派の勝利で大前提が崩れるため、英国に置く拠点を見直す動きが加速するだろう。
経済協力開発機構(OECD)は離脱により、18年までに日本のGDPを0・5%押し下げると予想している。離脱決定直後、日経平均株価は一時前日終値比1300円安となり、円相場は一時は1ドル=99円台まで円高が進行した。
フランス、ドイツでも反EU感情が高まっている。英国民の選択が引き金となって、各国でEU離脱派が伸長し、排外主義や国家主義の台頭に結び付くことは避けなければならない。
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