資金と企業活動が国境を越えて、簡単に動くとき、一国ではどうしようもないことがあります。そのことは、リーマンショックで世界が経験したことです。その影響がまだ冷めないときに、中国経済の成長率低下、原油安、世界的なカネ余りと金利安による為替相場の変動は、当事国にとって極めて大きな経済の変動要因となっています。
安倍政権がとっている市場への資金供給、ゼロ金利とマイナス金利は、対ドル為替相場で円安となって表れ、輸入物価の高騰、原油安を相殺する働きをしています。また、日本の輸出大手は、円安による価格競争力が強くなっていますが、現実産業構造は、製造業において製造拠点の海外移転がほぼ終了しており、円安による輸出の増加は経済要因としてはほとんど寄与しません。多国籍企業が利益を最大化しているのは円安による「見せかけの売上高」が多くなっているからです。
日本経済の問題は内需の拡大、輸出に依存しない産業・経済構造への転換を実現することです。また、円安政策を止めて、輸入物資の支払いを減少させることご必要です。結果的には、物価の上昇を抑え、国民の生活を豊かにする役割が果たせます。また、ゼロ金利、マイナス金利を一刻も早く止め、国民の預貯金金利を大手銀行の利益から本来の持ち主である預金者に返還させる必要があります。
[中央SUNDAY]原油安より恐ろしい人民元安=韓国
今年に入って原油価格が20ドル台まで落ち、韓国ウォン安になっているが、経済が改善する兆しは見えない。毎日続く原油安と為替レートの大きな変動性は疲労感まで感じさせる。冷静にその意味を考え、見逃しているリスクはないか点検する時だ。
まず明確にしておくべきことは、原油安にもかかわらず、なぜ国内外の経済が改善しないのかという点だ。世界経済不振による需要の冷え込みが原油安の重要な原因であるためというのが簡単な答えだ。しかし他の条件が不変という状況で原油価格だけ下落しても、プラスの効果がない場合もある。原油安は産油国から原油輸入国に所得を移転させ、家計購買力が増え、企業の生産コストが減る。この時、産油国の需要減少など景気低迷効果よりも原油輸入国の需要増加など景気拡張効果がより大きければ、原油安は世界経済を改善させ、逆の場合には世界経済を冷え込ませる。金融市場が発達し、資本の移動が非常に効率的になれば、理論的に原油価格が実物経済に及ぼす効果はないが、現実は違う。
◆ウォン安だが、実際の価値は上昇
1980年代中後半に原油安で世界経済が上向いたのは、中東と旧ソ連をはじめとする産油国より欧州・米国・東アジアなど原油輸入国の経済がさらに活発だったからだ。しかし今は変わった。グローバル経済危機以降、主要原油輸入国の経済はデフレ懸念が広がるほど冷え込み、原油安が需要を刺激できずにいる。家計と企業の負債縮小圧力のために投資と消費が増えないという貸借対照表不況説がこれを後押しする。一方、これまで高い資源価格を受け、経済規模を拡大したサウジアラビアとロシア・ブラジルなど産油国の経済は、原油安をはじめとする資源価格の急落で財政が破綻するなど致命打を受けている。
原油安が韓国経済に及ぼす影響は、内需に対する直接効果と世界経済に及ぼす効果を通じた間接効果の合計だ。内需増加効果は明らかに作用しているだろう。昨年下半期の消費回復は政策的な要因に加えて原油安による部分が大きかった。しかし原油を加工した石油化学製品の輸出規模が大きく増えて原油安の利益が減ったうえ、韓国経済の対外依存度が80年代の3低(ドル安、原油安、低金利)好況当時よりはるかに高まった。原油安のプラスの効果が過去に比べて減った可能性を示す部分だ。
◆通貨安競争に対応策なく
為替レートの側面を見よう。ウォン・ドル為替レートは昨年、年平均1ドル=1131ウォンと、前年比で7.4%ウォン安ドル高となり、今月初めには1ドル=1200ウォンを超えた。ウォン安ドル高となったのだ。しかし主な貿易相手国の為替レートの変化を考慮した実効為替レート基準では、2015年にはむしろ前年比で1.6%も価値が上昇した。
今後、ウォン・ドル、ウォン・円為替レートよりも影響は大きいが関心が少ないのは、「1ドル=7元以上への人民元切り下げ」による破壊力だ。現在、中国政府の意図に関係なく、人民元安が進む可能性は高いと観測される。短期的にウォンと人民元が強い同調化を見せるが、断絶的な変化の前では水準が大きく変わるものだ。2000年代半ばの1元=120ウォンから2010年以降は1元=170-180ウォン水準を維持してきた。「1ドル=7元以上」の懸念が現実化し、中国のアップグレードされた製品と結合すれば、その結果は韓国産業界にとって厳しい試練となるだろう。ウォン高人民元安は2000年代半ばのウォン高円安当時の苦労とは次元が違うと予想される。東アジアの製造業の中心軸が日本-韓国-台湾から、中国の全方向的な追撃で今は韓国-中国-ベトナムに移っているからだ。
原油価格に関連し、追加の景気悪化余地は大きくないとみられる。一部では原油価格反騰の可能性が提起されている。しかし原油価格がさらに下落するとしても1月のような急落傾向さえなければ、それによる景気悪化は緩和する見込みだ。デフレ期待が弱まり、消費と投資がある程度再開される可能性があるうえ、採掘技術が現在の価格に適応し、シェール原油など採掘関連の投資急落傾向の緩和が予想される。
一方、為替事情はよくない。米国の追加利上げの可能性が弱まる中、日本の積極的な通貨政策で国際金融市場が安定を求めていけば、ウォン高への転換の可能性が高まる。中国経済の不安定性が増幅し、大幅にウォン安になることも考えられるが、この場合、韓国経済が負担する費用はウォン安による利益よりはるかに大きくなるだろう。為替レートをめぐる競争は特に厳しい戦いだ。各国が量的緩和を通じて国家間の所得再分配を争う戦いで、国際通貨国でない韓国は直ちに使える武器がほとんどない。資本流出などの潜在リスクのために欧州や日本のように安心して金融を緩和することもできない立場だ。創意的で積極的な政策対応が要求されている。 (中央SUNDAY第465号)
シン・ミンヨンLG経済研究院経済研究部門長
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