二年半が過ぎ、事故後3年になろうとしている時期に、全員帰還を断念する検討に入ることがあきらかになっています。政府、所管官庁のでたらめさにはあきれるばかりです。核物質の放出、地域汚染のすさまじさを隠し、既存原発の再稼動審査を一方で進めていたのですから、その安倍、自民党政権の不誠実な態度には怒りを感じます。
この間、スピーデーの情報を隠したこと(民主党政権時の文部科学省)、原子力発電所事故と汚染のひどさを軽く見せようとして真実を情報開示しないこと。いずれも行政による情報操作といえるものです。原子力発電所事故の安全性への懸念、事故の過酷さなどを隠し、推進しようとする意図によって進めてきた行政の方針を再考し、変更すべきです。
事実に基づく、情報の開示、その事実を基にした対策の検討を進めるべきです。原子力ムラの関係者による情報操作をやめるべきですし、同時に、原子力発電所政策に反対する科学者、技術者などを入れた、実態調査と現状分析を踏まえて、現時点で取れる最善策は何かを提言すべきです。その提言を国会、政府が受けて予算措置を講じて実施すことこそが必要ではないかと思います。都合の悪い情報を少しづつ開示し、汚染地域の避難者の将来への望み、展望を繰り返し繰り返し、押しつぶすかのような対応を断ち切るべきです。
<「全員帰還」の放棄>
政府・与党が東京電力福島第1原発事故による避難者の「全員帰還」を断念し一部に移住を促す方針だ。実施となれば復興政策の大きな転換になる。被災者の不安も大きい。復興の道筋を明示し、被災地が納得することが不可欠だ。拙速に進めてはならない。事故そのものの意味も変わる。名実ともに住民のふるさとを奪ったことになるからだ。「原発のリスク」を再認識する機会としたい。
自民党の復興加速化本部は避難区域のうち最も放射線量の多い「帰還困難区域」の住民について、別の場所への移住による生活再建を新たな選択肢として示すよう、政府に提言することを決めた。それ以外の避難区域はインフラ復旧や除染のための資金を集中させ、早期帰還を目指すという。政府の復興政策はこれまで「全員帰還」が大前提だった。地元には疑問の声もあったが、大規模除染をして再び住めるようにすると言い続けた。いまだにそのめどは立っていない。あまりに見通しが甘かった。
避難者からは「帰還できないならそう決めてほしい」という声まで挙がっていた。政府が巨額の追加負担におびえて判断を先送りしたことがどれほど人々を翻弄(ほんろう)したか。責任者は率直に謝罪すべきだろう。
自民党の提言には長期避難者への追加賠償が盛り込まれた。帰還できない被災者の土地や住宅、雇用の確保に万全を期さねばならない。帰還を目指す地域の除染も加速させる必要がある。年間追加被ばく線量の基準を緩和する動きもあるが、健康被害には細心の注意が必要だ。安易に緩めるわけにはいかない。被災者が帰還者と非帰還者に分断されないかも心配だ。復興公営住宅の建設など地元自治体の計画にも影響があろう。政府は今後の政策をきめ細かに練り直す必要がある。
先頭に立つべきは安倍晋三首相だ。「福島の復興なくして日本の再生なし」と言うが、帰還できない住民がいても復興したと言えるのか。2020年の東京五輪で世界に発信するという日本の姿とは何なのか。
まずは被害規模を再計測することから始めてはどうだろう。大量の移住者を出したチェルノブイリ原発事故と比べて、福島の事故を過小評価することはもはや許されない。原発事故はふるさとの崩壊と直結する。
その認識に立って将来のエネルギー政策や国内の原発再稼働の問題を再考することが肝心だ。被災者の立場で考えれば、脱原発を成し遂げてこそ復興と言えるのではないか。
復興政策の練り直しは、経済効率や成長を最重視した文明のあり方をも問い直す機会としたい。
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