今回の選挙結果が、オバマ大統領にとって逆風となり、残された任期の政権運営にとって、痛手となることは明らかです。この主張で言うように、アメリカが大国として世界の政治経済に君臨することがよいことなのかどうも問われているのだと思います。
アメリカ国民の意思が選挙結果であり、その民意を政権がきちんと受け止めることは民主主義国家にとって、アメリカにとっても重要なことです。しかし、そのことが世界の政治、経済にとって不幸な政治的な出来事かと言えば、そうではないと思います。アメリカが今までとってきた軍事力、経済力を使った外交、経済政策が行き詰まり、その打開策をめぐっての政治的な混乱と、アメリカ国民の苛立ちが、オバマに対する批判となっているのだと思います。決めることができないことが悪いことでは決してありません。日本の民主党野田政権が行った消費税率の引き上げ、大飯原子力発電所再稼動などは決めてはならないことを強引に決めた結果起きた矛盾です。また、安倍自民党政権をみればその暴走と独裁政治は国民をどん底に貶める悪政の代表的な事例です。
民主主義とは国民主権、基本的人権の尊重、思想信条の自由などを基礎として成り立ち、決めるとか、効率性を徹底して追及するような政治体制ではありません。むしろ、行きつ戻りつしながら、国民多数の幸福を実現するための政治経済は何かを探りながら進むのが最善なのだと思います。その意味ではアメリカにおける一見、混乱したような政治状況は当然のことと受け止めるべきではないかと思います。ブッシュのように好戦的で、欺瞞に満ちた政権が台頭することのほうが異常なのだと考えます。アメリカが一国単独で世界に君臨するような時代は終了し、そのような政治状況を期待すること自身が問題なのだと思います。
<毎日新聞社説>米中間選挙 超大国の迷走が心配だ
民主党というよりオバマ政治への不満だろう。米国の中間選挙は野党の共和党が上院でも過半数を制し、連邦議会の上下両院を支配して大統領と対峙(たいじ)する構図となった。残る任期が2年余りのオバマ大統領にとって足場が揺らぐ敗北であり、指導力の低下、レームダック(死に体)化が急速に進行する恐れもある。
懸念されるのは、政争激化による超大国の迷走だ。前回2010年の中間選挙では民主党が下院で60議席以上減らして少数派に転落し、同党が多数を保った上院との「ねじれ」が生じた。そんな政治情勢を背景に、昨秋は予算執行ができずに政府機能が一時止まる異常事態となった。
「決められない政治」も恒常化した。今後は上下両院の「ねじれ」が解消される一方で、連邦議会とホワイトハウスの「ねじれ」が政治の停滞に拍車をかけ、「(大統領に)決めさせない政治」の傾向が強まりそうだ。たとえば不法移民の市民権取得を可能にする移民法改正案は昨年、下院共和党の反対で廃案となったが、この種の改革が今後実現することは考えにくい。銃規制も同様だ。
既に成立した医療保険制度改革(オバマケア)も、共和党内には白紙撤回をめざす動きがある。1999年、共和党主導の上院は、民主党のクリントン大統領がいち早く署名した核実験全面禁止条約(CTBT)の批准を否決し、大統領の体面を失わせた。同様の「造反」が今後、起きないとも限らない。
大統領と議会の「ねじれ」は過去にもあったが、共和党の「オバマ嫌い」は際立っている。オバマ大統領が掲げた「一つの米国」や「チェンジ」はどんどん色あせていくようだ。16年の大統領選に向けて米国政治が党派性を強めるのも分からないではないが、世界のリーダーとしての責任と理想を忘れてはなるまい。
冷戦終結から四半世紀。ロシアのウクライナ介入や中国の海洋進出、北朝鮮の核・ミサイル開発も含めて、世界は不穏な要素をはらむ。過激派組織「イスラム国」やアフガニスタンのイスラム武装組織との戦いは言うに及ばず、米国の動きは国際秩序にも日本の安全保障にも、大きく影響する。こと国際問題では米国の結束と責任ある対応を望みたい。
オバマ大統領はリーマン・ショック後の米国経済の立て直しやイラク、アフガンでの戦争の幕引きに努めるなど一定の業績を上げた。にもかかわらず支持率が低迷し議会選挙でも勝てないのは、持ち前のクールな態度に米国民がなじめないためだろうか。オバマ氏にも反省点は多々あろう。敗北から謙虚に学び、残る任期中に後世へ手渡すレガシー(政治的功績)を築いてほしい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます