磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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新潮文庫 人間襤褸

2008年10月06日 | 読書日記など
『新潮文庫 人間襤褸』
   大田洋子・著/新潮社1955年

「襤褸(らんる)」とは「ボロ」という意味らしい……。



この言葉を冷たいとばかりも言えない状況にあった……。下「」引用。

「百姓は、少年の死を確かめるように、灰色に崩れた顔を覗いている杉太に言った。
「この息子は死んだがええですが。ふた親が東洋製罐で焼け死んでしもうたのじゃから、ひとり残っても苦労せにゃならん。わしはこの子の親らが死んだのを知っとったが、言わなんだ。なにも知らんで一日中、この河原を探しまわっとったが、可哀想になあ」」

社会事業法というものはあったろうが、戦争でかなり悲惨なものだったろう……。

京都も本当は標的になっていたという人もいる……。下「」引用。

「広島は一度も空襲されんのよ。広島は残すんじゃって。京都は花の都、広島は水の都じゃから、京都と広島は残すんじゃそうな。東京に行かず広島におってちょうだいや」



中国新聞が75説を伝えていたという。下「」引用。

「今後七十五年、広島には草木も生えず、人も棲めないと報じたのも、中国新聞だった。この説は梅原も杉太も否定していた。もしこれを肯定しなくてはならないとしたら自分たちは生きている筈はない。またその新聞は、「健在僅か六千人」と、人口四十万以上の都市の破滅を報じたけれども、七十五年説が動かすことのできぬものなら、六千人も死滅した筈であった。」

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広島市を観光都市に……。下「」引用。

「アメリカの医師を案内したという小児科病院の院長が、やや興奮した顔をして立った。
「広島の者たちにきいて見ますと、みな、広島は将来観光都市になるのだからして、そうなれば風光明媚なこの水の都をベニスのように、またナポリのようにしなくてはならん。せっかく市中を七つの河が流れているのですから、この河を最大限に美化しましてゴンドラを浮べ、世界の広島にしなければなりますまい」」

「解説」がついていました……。下「」引用。

「この「人間襤褸」は、昭和二十五年の夏から翌年の夏にかけてのあいだに書かれたものであるが、いま--ちょうど広島に原爆がおちてから十年目の夏に、この新潮文庫から出ることになつた。
 あの広島の惨事については、多くの有名無名の人が、小説や詩歌や手記に書いたのであるし、また大田さん自身には、「人間襤褸」のほかにも、「屍の街」「半人間」などと、心にのこる作品があるが、それはそれとして、これは一つの記念すべき作品である。われわれは、こういう作品を読むにつけて、あのような大量虐殺の非人間的なむごたらしさに、今さら戦慄して、原子戦争のごときものを世界から駆逐しなければならぬと感ずる。-略-
  昭和三十年七月九日
      阿部知二









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