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黒沢明の精神病理-映画、自伝、自殺未遂、恋愛事件から解き明かされた心の病理-

2011年07月17日 | 読書日記など
『黒沢明の精神病理-映画、自伝、自殺未遂、恋愛事件から解き明かされた心の病理-』
   柏瀬宏隆、加藤信・著/星和書店2002年

表紙の裏に書かれてあります。下「」引用。

「世界的な日本映画界の巨匠-黒澤明。彼の映画や自伝を精神医学的に分析すると、そこには、極めて興味深い精神病理と性格傾向が見えてくる。そしてそれは、映画史に残る男性的なスリリングな傑作を生む原動力でもあった。果たして彼の精神病理とは一体何だったのか?
芸術作品から作者の心の病理を鋭く解き明かした本書は、映画ファン、黒澤ファン、精神科医ならずとも興味深い。」



本書……。下「」引用。

「本書は、精神科医である私と加藤信との共著による、日本の世界的映画監督・黒澤明についての論文集である。はじめの7編を私が、最後の1編(「黒澤映画のACたち」)を加藤が執筆した。-略-
 私の論文は、主として日本病跡学雑誌に掲載されたものであり、加藤の論文は「アルコール依存とアディクション」誌に掲載されたものである。病跡学とはいわゆる天才や偉大な業績をあげた人々を精神医学的に研究する学問である。私は論文の中で巨匠・黒澤監督の創造性の秘密に迫ろうとした。加藤はアルコール依存症や嗜癖(アディクション)の観点から、共依存とACよりみた黒澤映画の考察を試みている。」

自殺の原因……。下「」引用。

「当時の私は、黒澤監督の完全主義と徹底性の性格から、うつ病者の自殺未遂であろうと漠然と考えていた。それが、てんかん及びてんかん性格と結びついていることが分かってから黒澤映画の魅力が一層了解できるようになったのである。」

てんかんと判断するのは、黒澤の文章からであるという……。下「」引用。

「しかし、この文章からは、彼が脳血管レントゲン写真を撮っていたこと(脳血管写真撮影をとるとは大変珍しいことである。その必要性があったということであろう)、脳血管が先天的に異常に屈折していること、真性てんかん症と診断されたこと(脳血管の異様な屈折に基づくてんかん症ならば真性てんかんではなく症候性てんかんであろうが)、子どもの時よくひきつけを起こしたこと、成人になっても仕事中に短い時間、茫然自失としていることがあったこと(意識減損発作か無動凝視発作であろう)、小てんかん症状を起こすこと、などの点があった様子が伺われるのである。
 以上の点から筆者は彼を、側頭葉てんかん、とくにGeschwind(ゲシュヴィント)症候群と考えたい。
 しかし、テレのてんかんの種類(タイプ)については後の章で述べることにして、筆者が本章で述べたいことは、彼の性格が典型的なてんかん性格(エピレプトイド)であるという点である。-略-」

映画解説者の兄(27歳)自殺。黒澤明23歳。

黒澤明、61歳自殺未遂。
「トラ・トラ・トラ」監督を解任された……。下「」引用。

「年譜をみるとわかるように、50歳台後半から黒澤にはトラブルが続くようになる。とくに、アメリカとの合作映画「トラ・トラ・トラ!」の日本側監督を「精神病」を理由に解任されたことは、当時の社会的事件にもなった。この頃、黒澤には奇行が目立つとの噂が流れている。奇行とは、たとえば、「当時、東映撮影所の窓ガラスを深夜割った」、「撮影開始、終了の合図一切を、海軍式のラッパによって行わせた」、「普段かけない人の所へ延々と電話をしつづけた」などである。」

1971年12月22日の朝日新聞夕刊、黒澤の自殺企図を報じた。

黒澤と司馬遼太郎……。下「」引用。

「黒澤が存分に彼の才能を開花させた時期は、敗戦後の日本であった。黒澤自身が語った「わが青春に悔なし」の制作動機から明らかなように、軍国主義や敗戦で失った日本人の自尊心の問題は、彼の主題となる必然性があった。彼は作品の中で立派な日本人を描きつづける一方、彼自身の国際的名声によっても日本人を勇気づけた。つまり、黒澤は梅原猛のようなACを癒しただけでなく、日本人の戦争トラウマの癒し手として、司馬遼太郎とともにきわめて大きな役割を果たしたと考えられるのである。」

目次

救ってくれた黒澤作品、加藤信。下「」引用。

「私自身が黒澤映画に嗜癖した理由は、なんとなくわかってきた。戦争で傷ついて父親を見ながら育った私にとって、誇り高き日本人を描きつづけた黒澤映画は、何よりも私を救ってくれるものだったのである。」









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