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お池にハマって、さぁ大変!  by belage

ポール・ニューマン氏死去

2011年07月31日 22時42分33秒 | FILM

 

昨日映画俳優のポール・ニューマン氏がガンで死去されました。

 

あの、「明日に向かって撃て」(1969年)の鮮烈なラスト・シーンは学生時代、

騒然とした世の中できわめて強烈な印象をボクに残してくれました。この

映画で使われた「雨にぬれても」のロマンチックなメロディと件のラスト・シーン

のアンマッチングはその後色々な映画で確立した手法として多くの監督が

使うようになりましたが、これ以上のものはスタンリー・キューブリック監督の

「時計じかけのオレンジ」(1973年)くらいでしょうか。奇しくもこの映画で使わ
れたのは「雨に歌えば」。キューブリックが「明日に向かって撃て」を念頭に

製作したかは定かでありませんが。

 

彼の映画演技者としての最高傑作はボクはやはり「ハスラー」とアカデミー

主演男優賞を受賞した「ハスラー2」であろうかと思います。いずれも男を

描いた作品として長く観客の心に残る演技でした。彼の演技はどちらかと
いうとじっくり主人公の内面を表現するタイプ。

そういう意味ではスタートから余り作品に恵まれていたとは言いがたい。

出演した映画の本数もそれほど多くはないのですが、渋さのあるうまい俳優

さんとしていつまでも記憶に残る人でしょうね。

 

改めて彼の経歴を調べてみたら、彼の演技のうまさのもとはあの有名な

ニューヨークのアクターズ・スタジオの出身なんですね。そして同スタジオの

彼の同期が、なんとジェームズ・ディーンとマーロン・ブランド!なんという

スタジオなんでしょう。勿論このスタジオはそのほか綺羅星の如くに名優、

名監督、名脚本家を輩出していますが、同世代にこの二人の名優がいた

とは。「エデンの東」のオーディションでは主人公の兄役で最終審査に残った

ものの、エリア・カザンの反対でパスできなかったというエピソードがあり
ます。もし、カザンがその時ポールを起用していたら、彼の人生はまた違った

ものになっていたかも知れません。でも、ジェームズ・ディーンとポール・

ニューマンが鉢合わせしたらお互いに食ってあの名作はできなかったかも。
カザンは賢明な判断をしたのかも。

 

その後ポールは鳴かず飛ばずで、失意のうちにTVや舞台に出ることに

なるのですが、彼を再び映画界に呼び寄せたのはなんと「エデンの東」の
主役を張ったジェームズ・ディーンの死。

人生って皮肉というか、なんというのか・・・

ジェームズ・ディーンが主役の予定であった「傷だらけの栄光」に出演し、

これで一躍脚光を浴び、現在までの栄光の歴史が刻まれることになるの

です。彼が不遇をかこっていた時代に学んだ演技がその後の彼の人生を
築いたと言っても過言ではないでしょう。

 

翻って考えると、ジェームズ・ディーン、マーロン・ブランド、ポール・ニューマン
と同期の三人。

それぞれ個性が全く違う三人ですが、共通点がひとつあるんじゃないかな。
端的に言えば、ニヒルなリリシズム

 

これって、やはり当時の米ソ冷戦下の緊張感、米国の繁栄の陰に隠れた

人種問題、格差問題等の社会問題がでていたのかなぁ。当時時代の流れ
の中にいて、ボクは単に彼らのクールさだけを追い求めていたのですが、

今になって三人の陰のある演技って、そういう社会を反映していたのかと
思った次第です。

 

これで残念ですがアクターズ・スタジオの三つの同期の巨星が全て墜ち

ました。でも、この三人が残した映画は長く語り継がれるでしょう。

心に沁みるいい映画をありがとう。

 

合掌

 

 

 

2008年9月28日投稿



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