これはまぁ、なんと表現したらいいんでしょう。
見了った瞬間平和ボケした日本人の頭をがんと殴られた感じが。それくらい
ショッキングな内容。
テーマはあのイラン革命の過程で起きた在イラン米国大使館占拠事件。親米政権であった
当時のパーレビ国王を倒したイランの革命運動は世界に衝撃を以って伝えられました。
その衝撃は近年のエジプトに端を発したジャスミン革命以上のものがありました。翻って
みると、あのイラン革命は9・11に繋がるイスラム原理主義と米国との長い戦いの幕開け
であったような気がします。
この事件そのものは1979年11月4日、癌治療のため米国に入国したパーレビ国王の
身柄引き渡しを巡りイラン革命派の反感が高まり、在イラン米国大使館が占拠され、
海兵隊員を含む外交官とその家族52名が開放されるまで444日間に亘って軟禁状態
に置かれたもの。
最終的にはパーレビ国王が死去したことにより、上記米人52名を人質としておく意味が
なくなり、第三国仲介により人質が開放となったもの。
当時のカーター大統領は一度武力による救出を図るも、輸送ヘリの故障・事故等で失敗に
終わったという米国の屈辱の歴史でありました。
映画はその52名以外に実は事件当時大使館からカナダ大使公邸に脱出した6人の
大使館員と家族がおり、それをCIAが映画ロケを偽って救出した事実の映像化であります。
実はこのストーリーは6名救出後も大使館内に囚われている52名の生命に危険を及ぼす
という理由から、救出劇そのものが封印されておりましたが、クリントン大統領の時代に
封印が解かれたという経緯があります。
この新たにオープンされた救出劇。ストーリーは見てのお楽しみですが、まぁその方法が
奇想天外。世界でこんなこと考えるのはアメリカ人しかいないだろうというような大掛かりな
仕掛け。詐欺の仕掛けは大掛かりなほうがいいというのは定説ですが、イラン革命隊の裏
をかいて成功裡にことを運ぶにはこれくらいやらねばいけないということなんでしょうね。
その仰天のストーリー展開を見るだけでも、この映画の価値はあります。
■この映画の評価:★★★★☆(★五つが最高評価)
■2012年米国製作映画
■2012年10月26日公開予定
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この映画を見てふと思ったのが、先ごろの中国での反日デモ。映画の中でアメリカ国旗を
焼き、拳を突き上げて喚く群衆の姿と反日デモの中国人の姿がだぶって見えました。
現実に彼等は日本大使館、領事館を襲っているわけで、もしかしたらこの映画と同じような
状態になっていたかも知れませんし、今後問題の膠着化から将来こういうケースもあり得る
でしょう。
そうなったときに日本政府はどうするんだろう。何等手段を持たない日本はただ手をこまねいて
いるしかありません。あの在ペルー日本大使館占拠事件の時も、フジモリ大統領は一切を日本
側に知らせず救出作戦を実行しています。幸いに日本人に被害は出ていませんが、あの事件
からの教訓をまったく生かさず日本は今日まで無為に過ごしてきました。
この映画は日本の今後をどう考えるか、国は国民をどうやって守るかという命題を考える上で
貴重な映像証言になると思います。その意味でも是非ご覧頂きたいと思います。
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それにしても、何でこの時期にこの映画が。ここ数年米国とイランの状況は日に日に剣呑な
状況を呈しています。イランのマフムード・アフマディーネジャード大統領は核開発推進派で
ありますが、彼は当時学生でこの米国大使館占拠事件の中心人物の一人であったという
疑惑があります。
また、イスラエルはイランの核開発のタイムリミットが来年早々であろうとの予測もしています。
こんなことを考えると、この映画はイランに対する核施設攻撃の正当性キャンペーンの一環
と見ることも出来るのですが。
いずれにせよ、これから今年一杯ホルムズ海峡の米軍の動向には注意深く見守る必要が
あるでしょうね。
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Phoenix 東北&関東
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面白そうな映画のようですね。
「イラクの核開発」は「イランの核開発」の間違い?
の安全確保のためにずっと世界中を欺いてひた隠しに
していたということ、極めて奇想天外な脱出プロットと、
これが真実だというのがすごいです。
イラクは間違いでした。ご指摘ありがとうございます。
早速訂正させて頂きました。