雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

散歩する

2010-07-01 | 雑記
 家にいても本を読むかオナニーするかくらいしかないので、天気の好い日にはよく散歩に出かける。だいたい、三十分から一時間ほど歩く。特にあてもなく散歩をしているので、なるべく普段は通ることのない裏道や神社の境内、やさぐれかけている路地裏などにフラフラと足が向く。そんなとき意外な発見が多い。私は軽度の方向音痴なのであちこち行くと一体今どこに自分がいるのか判らなくなるときが多々ある。梶井基次郎ではないが、不図、其処が自分の暮らす町ではなく、ずいぶん離れた町であるかのような錯覚を起こす。(梶井は「錯覚を起こそうと努め」ている)
 だがいずれ見知った風景に立ち戻り、安心とつまらなさを取り戻す。戻る際の方向によっていつもの見慣れた風景が角度や距離感を変えるのも、また愉快なのではあるが。
 つらつら歩いていると、突然に花の香りが流れてきて、辺りを見回すとピンクの薔薇が華々しく咲き誇っている庭があったり、田んぼの狭間に流れる小川のせせらぎに目をやると、亀がすいっと泳いでいたり、小学校のプールから聞こえる子供たちの嬌声に微笑ましく目をやれば変質者と見紛われたり、一日中そこにいるんですか? と問いたくなるほどいつ通っても玄関前でうつらうつら鎮座ましましている婆さん……等々、のんびり散歩しているからこそ気のつくことがよくある。
 今日も午前中、友人に本を渡すために図書館で待ち合わせをして、二人で軽くお喋りしながらコーヒーを飲み、別れた後ふらふらと散歩していた。暑かったので数分もすると汗が顔をつたってきた。こういうときは神社の境内を通って雑木林のある公園を歩くと涼しくて気持ちが好い。が、今日はとても蒸し暑いのでそれほどの涼はとれなかった。且つ、虫の発生率が多くて難儀した。いいことばかりではないのである。
 それでも林を抜け、うらうらと歩いているとまたまた思いがけない裏道などを見つけた。またそこからはトラック工場の裏側なども見られて大変興味深かったので、しばらく覗き込んだりしていた。ときどき工員さんと目が合ってしまい不審がられた。
 そんなこんなで、結局一時間ほどの散歩を終えて家に帰り着いたときには全身汗だくになっていた。散歩をするには、かなりの体力を要する季節になってきた。
コメント (2)
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ペンギン・ハイウェイ/森見 登美彦

2010-07-01 | 小説
 近頃めっきり人気者となった登美彦氏の最新刊。デビュー以来初めてだろうか? 京都が舞台になっていないのは。京都が関係していないのは。だからなのか? 帯にはでっかく、

森見登美彦、新境地へ!

 などと書かれ、煽られている。
 確かに、新境地といえば新境地だろうか、主人公もいつもなら胡乱な大学生が登場してきそうなところを自称「かしこい小学四年生」にしている。(おっぱい好きは同じであったが)
 だがこの小学生。かしこいだけあって考え方や話し方がいつもの登美彦節。内容も以前の抱腹絶倒もののドタバタ劇とまではいかないものの、とことんまでのファンタジー。そして魅力的な女性(お姉さん)、とそれほど新境地と強調せるべきものは見当たらないのだが……。しかしふと、思ったことがひとつある。今まで森見作品を読んでいてそんなこと一度も思ったことはなかったのだが。
 それは今作を読んでいると、なんとなく村上春樹の世界観に似ているな、と。まったくどこがどうとか、上手くは説明できないのだけれども漠然とそんなことを思った。
 要するに、そういう世界観というか空気感の漂いこそ、登美彦氏の新境地ということなのであろうか。
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