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雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

蝦蟇倉市事件2

2010-06-21 | 小説
 1970年代生まれのミステリ作家11人が架空の街≪蝦蟇倉≫を舞台に競作するアンロジーの第二弾。

 第一弾は、はっきり言って伊坂幸太郎、道尾秀介のレベルがダントツ過ぎて、他の作品がどうにもならない事態に陥っていた。が、今回第二弾は各々のレベルにそれほどの差がなく、また、自分にとっても初めての作家のみであったので読書意識も均等になされた。
 そういえば今回は、どの作品もわりと主人公が若く「青春ミステリ」といった態になっていたのも自分が読みやすかった要因なのかも知れない。
 その中でもっとも好かった、というか印象深いのは、越谷オサムの「観客席からの眺め」である。これはもう、なんとも言えず切なくて、また淫靡である。
 どの作品も意外性はあるのだけど、ツッコミどころもあるのは否めない。しかし村崎友の「密室の本――真知博士 五十番目の事件」などはその意外性に思わず感嘆させられる。第一弾に登場した真知博士などが別の作家によって再登場するのも、また微笑ましい。

 もうこれは、作品の質どうこうではなくて、同年代の作家さんたちが楽しんで創り上げていったテーマパーク的な本なのだと捉えれば、きっと一緒に楽しめるものなのであろう。