一僧侶の日常の思いを語る
沙門の法話
頑張らなくていい
人はずーと守ってきたものを失う時に大きな悲しみを心に抱きます。
悔しい。こんなはずでは。どうして。
まだやれると最後まで踏ん張ってもそれさえも耐えられなくなる時が来るのです。
そんな時にどうしてだかわからないけど「もうこれでいい」と腹をくくれます。
一番望んだ状態ではない場所に身をおくことによってようやくいい意味でも悪い意味でもどこか「スー」とするのです。
もう頑張らなくていい。終わったんだ。
黒澤明監督の「七人の侍」の最後の方のシーン。
襲ってきた一味を七人の侍たちが倒しまくり、最後に一番若い侍が敵がいなくなってもなお刀を振り続けることをやめないので味方が止めに入るのです。
止めるんだ。もう戦は終わったんだ。
終わってしまったらもう戦わなくてもいいということです。
これってもしかしたらこの世の生も同じかもしれません。
身体が動かなくなるまでは死ぬまでは何が何でもガムシャラに生きなくてはいけない。
でもこの世の修行を終えてあの世に旅立ったらもうそこまで頑張らなくてもいい。
もう終わったんだと。
この世は苦しみの世界。
ある意味、失うことの悲しみを誰よりも体験することは一番の修行になるのかもしれません。
もう頑張らなくていい。それは誰よりも何よりも頑張ったからこそ心の底にストーンと落ちる言葉なのかもしれません。
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