1999年に出版された時はかなり話題の本だった亡国のイージス、いまさらと思われるかもしれないけれどつい先週読破したばかり。なぜ今ごろといわれると、ただ図書館に上下そろってあったから。
結論からいうと上下巻で1460円の価値はあり。文庫本で買っても十分その元はとれる。
なるほど、たしかに日本人が好きそうな話になっている。やや右傾倒なところといい、都知事とか桜井良子とかが大きく頷きながら読んでいそうな本。そういうお約束みたいな部分をふくめても、やっぱりいい本だったとおもう。
イージス護衛艦の"いそかぜ"を舞台にした話。息子を政府によって暗殺された護衛艦の艦長宮津は北朝鮮のスパイと手を組みいそかぜを乗っ取り、日本政府を相手どり反乱を起こす。いそかぜの中にはスパイがアメリカ軍基地から盗んだ秘密兵器がつまれており、それをイージス艦のミサイルの弾頭に取り付け東京に向けて発射させるという計画の元イージス護衛艦の第一号のいそかぜをハイジャックする。それを阻止しようとする実直な同艦先任伍長仙石と自衛隊の諜報員の如月。ただのスパイ小説ではなく、いろいろと根深いテーマを入れ込んでいる。自衛隊の意味とか、日本の国防方針とか、自衛隊と憲法との矛盾とか。
かなり複雑なのでこのあらすじでは全然意味がつかめないと思うけれど、最初から最後までよくまとまっている。ひとつ難を言うなら、いくら息子が殺されたからといって、はたしてこの次元で復讐を企てるだろうか? あと、226事件の時のように、宮津にも自衛隊の青年幹部が共感をよせて宮津の計画に命を捧げるのだが、彼らのことが全然かかれていないため、その動機みたいなのが全然読み取れない。その一方で北朝鮮のスパイのほうは実によくかけているので、彼の動機みたいのには納得できる。
作者がこの本を書いた時はまさか、本当にイージス艦が世間を騒がすことになるとは思ってもいなかったろう。
自衛官によるイージス艦の情報流出、漁船との事故とイージス艦がお目見えしてからいろいろ新聞ネタになることが多い。特に情報流出の事件など、この本を読んだのか?と疑いたくなる。それだけ、作者に先見のめいがあったのだろう。
最後になったが、さてこの話では一体だれが最後に笑うのでしょう?
A、宮津 B、如月と仙石 C、青年自衛隊幹部 D、アメリカ C、日本の総理大臣
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