小林真 ブログ―カロンタンのいない部屋から since 2006

2006年開設の雑記ブログを2022年1月に市議当選でタイトル更新しました。カロンタンは40歳の時に飼い始めたねこです

「鶏犬のこえあい聞こゆ」~平和な時代のクライシス

2006-08-22 23:49:26 | 身のまわり
間に合った、3日連続更新です。
昨日の先週日記で触れた「ATMぴよぴよ事件」。たいしたことではありませんが、忘れないうちに。

事件の発生は先週の水曜日。仕事を頼んでいるOBのI君から「ちょっと旅行に行くので前の分もらえませんか」と電話があり、業界特有の事情からこっちもまだもらってないんだぞと思いつつ彼の労を考えてOK。仕事中に関わらず、7時過ぎて手数料105円取られるのもと、車で2キロのスーパー、ヤオコーATMへ。手間とガソリン代考えれば時間過ぎて行った方がいいと思うが、なぜか時間を過ぎたら105円というのはおかしく感じて。

ATM2台の箱には若い女性の先客。彼女とすれ違い箱に入ってI君用のギャラを引き出すと、隣のマシンからピヨピヨピヨピヨ。実は以前に私も市内ヨーカドーATMで経験がある、出したお金を残していった時の警告音だった。
いつも行列のヨーカドーでは異変に気づいた人も見守るだけだったらしく、後であさひだったかりそなになっていたかに問合せると、確か9000円は自動的に銀行側に戻されたとのこと。ということだから放っておけばよかったわけだが、誰もいないすぐ横でピヨピヨいわれては cannot help handing it。多少は「今ならまだ近くにいるかも知れない」という気もさしたか、気がついた時には福沢諭吉1枚が手の中にある。
おっとこれは、すぐにあの人を見つけないと犯罪者だ。よせばいいことに手を出して追い込まれた私は、夕闇迫る駐車場を見渡す。すぐに出てきた2ボックスには、ちょっと同一人物とは思えぬ中年婦人。うっかり違う人に渡しては犯罪者の上にばかの上塗り。これはヤオコーに入ってしまったのかも知れぬ。そうなったら見つかる可能性は低い。じゃあ、ATM横の電話でりそなにすぐ事情を話すのがベストか。いやひょっとして、このままネコババしてもばれないのではないか、いやいや防犯カメラがあるだろう。
などと思っていると、出口に次の軽自動車。運転していたのはわりと人のよさそうな青年だが、助手席の女性が財布を出して確認している。
彼女が間抜けになって大事な1万円を失うことも私が犯罪者になることもなく、女性は恐縮して何度もお礼をいい、私の側にいる青年も軽く女性のそそっかしさを非難しながら喜んでくれた。
いやいやよかった、晩夏の夕暮れ。

危ないところだったと思いながらの帰り道、多分2000年くらいの夜に遭遇した別の事件を思い出した。
それは塾で当時付属の大学進学のため、中学生が帰った深夜からバイクで来ていたY君の冬場のテストが終わった夜のこと。けっこう苦戦続きのテストだったこともあり、準備が終わってY君を送った解放感もあって大きな気持ちでいた。
すると市内の県道旧BOM前の4車線道路に、なぜか真上からクレーンで吊り上げてそうしたかのように一つのタイヤもアスファルトに着地せず、中央分離帯にシャーシを載せている不思議な白のセドリックY30が。やれやれとんでもないことだと思い、何しろ大きな気持ちだったので車を止めて「どうしました」と運転手に声をかけた。
しかし5秒もしないうち、救済者きどりの愚か者は後悔することに。フジオカタクヤのようなスポーツ刈りにサングラス、酒で真っ赤の男が乗っているあたりまでは予想の範囲内だったが、彼が口にした言葉は私の想像を超えていた。
「いや、実は今、いっしょに住んでいたある人物が私の全財産を持ち逃げしましてね。それで追っかけてきたら、こうなっちゃたんですよ」

でっ。
心の中では、しまった、私が手を貸してもと思ったのは車の状態だけで、そういう同居人とか金銭に関してはちょっと手にあまるのですが、と思いつつ、「ああ、大変ですね。まあ、このままじゃしょうがないでしょうから、あのスタンドまでなら乗せてぎますよ」と後悔に沈みながら提案。フジオカタクヤは、「はーはー」とでかい音を立てながら酒臭い息を吐き出すだけで、通り掛かりの長距離トラックは、「どうしたい、てーっ、大変だなこりゃ」と言い残すだけの賢明な行動。
トドのように動かないフジオカタクヤと飛行機になりたいかのようにタイヤを浮かせたY30を前に途方に暮れていると、北方から回転灯だけ回しながら白と黒のツートンカラーが。こんなに制服が頼もしく思えたこともそれまでなかった。「どうしました」の声に「いや、通りがかったらこの人が……じゃ、よろしくお願いします」といって、一目散に逃げ帰った役立たずのあほレスキュー。

人生、思わぬところにクライシスが。これがヒッチコックの映画なら、少なくとも3日は家に帰れなかったろう。

今夜はこのところご無沙汰だった塾で3日分たまった新聞でゆったり過ごしたが、今日の毎日夕刊内『ねこ新聞』の紀田順一郎氏のエッセイ『桃源郷のねこ』から中国古典の孫引き。

「平和な暮らしを『鶏犬のこえあい聞こゆ』という一節に凝縮したあたりが、私のような世代の人間には印象的である」

それからねこ好きの作家は、そこに鶏と犬でねこが書かれていないことから始め、萩原朔太郎、20世紀最初英国の幻想作家からの引用で見事なエッセイは進む。

こうやって適当に暮らしていけるのも「鶏犬のこえあい聞こゆ」世の中だから。たとえ硬直した思考呼ばわりされても少数派になっても、「国家の尊厳」より「こころの問題」より、「平和」を大事と思いたい。

(写真はピヨピヨの現場を先ほど撮影。BGMはJ-WAVEで、先ほどクラムボンか原田ユキコさんの別ユニットかで、この人の平和な感じは好きだ。その前には大ブームというスウェーデンかどこかの何とかいうグループ。のまのまとか、こういう曲が流行るのはけっこう平和でいい。今その原田さんの話で20歳の頃東京に来て、緒方拳を見てかっこよくて鼻血が出そうだったと。平和だ)
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