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新型指針改定 緊張感は保ったままで

2009年06月21日 | スクラップ





 新型インフルエンザの感染確認者は世界で約4万人に達した。これは氷山の一角であり、実際の感染者ははるかに多いと考えられる。

 国内でも、各地で学校での集団感染が起き、感染経路のわからない患者が出ている。感染は国内でくすぶり、秋冬には流行の第2波が襲うと予想される。

 こうした状況に対応し、厚生労働省は医療や検疫、学校の休校などについての指針を改定した。

 感染拡大防止策の限界を認め、重症患者の救命に重点をおいたのは、現実的な対応だ。ただ、個々の対策には、細かく詰めなくてはいけない課題が残されている。

 現在の感染状況を見ると、感染者全員の措置入院には意味がなくなっている。関西での集団感染で「発熱外来」がパンクしたことを思うと、原則として一般の医療機関で患者を診られる体制は必要だ。軽症者に自宅療養を勧める措置も、医療体制を維持し、重症者の治療に専念する効果が期待できる。

 しかし、一般の医療機関で重症化しやすい人の感染を防ぐ体制の整備は簡単ではない。指針は発熱者と非発熱者で「待合室を分ける」「診療時間を分ける」といった方策を示している。だが、発熱しているからといって感染者とは限らない。待合室を一人ずつ分けようにも、物理的に対応できるところは少ないだろう。妊婦や持病のある人だけでなく、健康な30代、40代の人の中にも重症化する人がいることにも注意がいる。

 重症者について、指針は地域の実情に応じた病床の確保を都道府県に求めている。だが、これだけでは地域がどのような基準で病床を確保すればいいのか、判断に苦しむ。国は、対応を自治体に丸投げするのではなく、もう少しきめ細かいガイダンスを示すべきではないか。

 さらに秋冬に患者が大幅に増えると、一般の医療機関もパンクしかねない。重症者が増えれば、人工呼吸器などが不足する恐れもある。政府はそうしたことまで見越して医療体制の整備を進めておく必要がある。それには予算措置も必要だ。

 今回の対応が、あくまでウイルスの病原性が低い場合に限られることは肝に銘じておきたい。今後、ウイルスが変化し、重症者が大幅に増える可能性も否定できない。その場合には、指針を再び見直す必要があり、緊張感は保っておかなくてはならない。

 これまでの政府の対応をみていると、機動性や柔軟性に欠け、行動指針の土台が揺れる傾向も見られる。こうした弱点を補うには、さまざまな場合を想定し、前もってケースごとの対策を準備しておくことが役立つはずだ。



 

毎日新聞 2009年6月20日 東京朝刊

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