◇性反応の男女差 秘密は脳の構造にあり
男女の性行動の違いが、脳の構造と深くかかわっていることはよく知られています。
例えば、大脳半球でみる左右差、いわゆる「右脳」と「左脳」の話がありますよね。右脳は手や目の機能、左脳は言語能力をつかさどっています。この左脳の言語能力は、大量の男性ホルモンにさらされると低下してしまうのです。そのため、男性は、性行為の最中におしゃべりができない。ただただ、黙々と運動に励むしか道がない。その一方で、左脳が優位である女性の場合は会話もできれば声も出せる……と、こうなるわけです。
女性からは「たまには愛の言葉をささやいてほしいわ」と求められても、言葉を失ってしまった男性には無理ということになります。
性反応の男女差は、脳の視床下部に存在する性欲中枢、中でも「性的二型核」というところが関与しています。この性的二型核の大きさは通常、男性の方が女性より2倍以上も大きいというのです。
男性が視覚や嗅覚による直接的な刺激によって簡単に興奮するのに対して、女性は触れ合いを強く求めることなどは、このような脳の構造上の違いが影響しているのかもしれません。
男性の場合には快感が急激に高まる割には、さめ方も速く、前述のように、射精後など触れられることに嫌悪感が走るほどに冷淡な一面を持っています。オーガズムの後、徐々にさめていく女性の性とは大違いです。
僕も共著者のひとりである『セックスのすべてがわかる本』(学研)の中で「脳が生み出す男と女のオーガズム」の項を担当された金子隆一氏は、ポルノを見るという点ひとつをとっても明らかな男女差が認められると書いています。
ある実験の結果ですが、男女の被験者にポルノ映画を見せたときの興奮のレベルには差はなく、事前にポルノであることを知らせておくと女性はそれだけで期待度が高まり興奮するが、映画そのものにはさほど反応しない。それに比べて男性ではポルノ映画を上映すると聞いただけでは反応しないものの、実際に映像をみると急速に興奮するというのです。
明らかに女性のセックスは男性に比べて精神性を大切にし、男性は勃起に代表されるように即物的な面が強いことがわかります。
◇「快感脳波」も大量放出 男性ならショック死?
これは脳波からも言えることです。オーガズムを科学的に証明するものとして周波数が6~7ヘルツのシータ波の出現があります。この脳波はマラソンなどいわゆるランニングハイでも認められています。
シータ波が「快感の尺度」であるとしたら、女性はオーガズムに達している間、脳全体がシータ波を発しており、このシータ波の放出時間が、じつに男性の10倍近くも続くことがわかっています。したがって、このシータ波がオーガズムの強さに比例しているとするならば、女性は男性とは比べようもないほどの快感を味わっていることになります。
卑近な言い方をすれば、仮に女性のオーガズムをそのまま男性の脳に伝えれば男性はショック死する危険すらありますが、今までそれを実践して亡くなった男性はいません。当然です。男性は決して女性にはなれないのですから。しかし金子氏は、性同一性障害(脳は男性でもからだは女性、あるいは脳は女性でもからだは男性)の方が性転換手術を受けた後の体験を例に、女性の快感のすごさを説明しています。
いずれにせよ、女も男も相手の感覚を正確に把握できないからこそ想像力を高めて勝手に興奮し、「どう? 感じてる?」などと演技を誘うかのような問いかけをして、自らを発奮させているのかもしれません。
毎日新聞 2008年2月28日
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