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米金融規制改革 歴史的な機会を逃すな

2009年06月21日 | スクラップ





 金融の本来の役目とは何か。暴走を防ぐにはどうしたらよいか--。昨秋以降、世界経済を襲った米国発の“金融津波”は、根源的な問いを突きつけた。主要国のリーダーや金融当局者は、危機を再び起こしてはならないと歴史的大改革に取り組む決意をしたはずだった。しかし、金融不安が次第に和らぎ、景気に明るさが見え始めるにつれ、その熱も冷めつつあるのだろうか。

 オバマ米大統領が「大恐慌以来のスケール」と胸を張る金融規制改革案を打ち出した。米国が有効な危機再発防止策を導入するかどうかは日本の私たちにも大いに関係することだ。90ページ近い改革案には、制度の改善につながる数多くの提案が盛り込まれている。だが、あくまで「改善」であり、津波がもたらした被害の甚大さ、深刻さに見合う根本からの改革とは言い難い。

 政権案は、銀行、証券、保険といった業態に関係なく、影響力の大きさにより金融機関を大きく二分して規制するよう提言した。「規模が大きすぎてつぶせない」「他と密接につながりすぎていてつぶせない」ような「重要グループ」と「その他」の2種類だ。

 重要グループは中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が一元的に監視し「その他」より厳しい規制を課すよう提案した。だが同時に、「厳しすぎる規制は金融や経済の発展をそぐ」とも指摘しており、ウォール街でも受け入れられる現実的改革にとどめたい意向がにじむ。

 政権案は重要グループの金融機関に、社全体が抱えるリスクを迅速に把握するよう求めた。しかし、今回の危機は、まさにそれができなかったから起きたのだ。今後はできるようになると信じるに足る根拠はどこにあるのか。そうした金融機関によるリスク評価を基とするFRBの危機管理は果たして機能するのか。

 そもそもの問題は、つぶせないくらい民間の一金融機関が肥大化、複雑化したところにあったはずだ。大きく複雑になりすぎた結果、リスクの全容を誰も理解できなくなった。改革案は、経営不安になれば経済全体を揺るがすような巨大金融機関の存続を前提としているが、それでは、本質的な変化を期待できない。ウォール街などの猛反発を招くとしても、金融機関の資産規模や、多様な業務を1社が展開することに何らかの制限を設けるべきだろう。

 政権の提案を受け、議会で法制化に向けた論戦が本格化する。既得権益の保全に走り、政治的妥協で改革を骨抜きにするようなことは許されない。金融のあり方を根本から見直せる機会は、今のような歴史的危機の直後にしか訪れないのだから。





毎日新聞 2009年6月21日 東京朝刊

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