祭りの夜。男はもう二度と好きな女に会えないと思っていたから会えた事にただただ涙する。女は好きな男に再び会えたのでただただ微笑む。花火は上がる。天狗は暗い夜空に消える。
先月のはじめに、かなり懇意にお世話となった恩人がくも膜下出血で入院された。恩人の家族から「面会謝絶」の意を伝えられただけで、見舞いはおろか入院先さえ現在の容態すらも俺は全く知らない。
かなりお世話になった方なのだが、なんとなくもうこのままに２度と会わないままでこの関係をおしまいにしてしまうのではないだろうかと予感してしまう。
俺に義理や人情などの感情はないようで、いらないと感じてきた人間関係はほとんど自分から切ってきた。（もちろんその反対に何回も他人から切られているけど）だから、世間から拒絶されているのは俺ではなく、俺が世間を拒絶し続けてきているだけ。なので、俺に世間を恨む必要性はない。
とにかく俺には何も、なにも、できないしできなかった。
