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★自由社版教科書の目次“漏洩”-藤岡信勝は家永三郎になれるか


「新しい歴史教科書をつくる会」の会報「史」(ふみ)の3月号が情報提供者から送られてきました。なんと、そこには現在文部科学省が検定中の自由社(前回エントリーで書きましたが、どっちの自由社か不明です)の中学校歴史教科書の目次が掲載されています。白表紙本の一部漏洩です。
 
その前に、今行われている教科書検定について説明します。今年度(平成20年度)は中学校教科書検定の年なのですが、新しい学習指導要領が平成24年度から実施されるため、新指導要領に沿った教科書の検定が平成22年度に行われます。ですから扶桑社も含めて各教科書会社は平成22、23年度の2年間しか使われない教科書については検定申請せず、今の教科書を引き続き供給します。しかし、「つくる会」の新しい発行元である自由社は自らの存在をアピールするために昨年4月に検定申請して、「扶桑社は検定申請をしなかったから平成22、23年度使用の歴史教科書を供給できなくなる」と言って出版差し止めを求めて裁判まで起こしています(代理人は有名な福本修也弁護士)。他の科目でも検定申請した教科書会社はありませんから、今年度の教科書検定は自由社1社のためだけに行われています。
 
問題は自由社の教科書の中身です。扶桑社の教科書の版権は当然のことながら扶桑社にあり、著作権も執筆者、監修者、扶桑社の共同のもので、全員が了解しなければ他の発行者から出すことはできません。ところが「つくる会」は昨年4月2日のつくる会Webニュースで自由社の教科書について「内容は、基本的に現行の『新しい歴史教科書』(改訂版)の内容と変わりません。但し、一部書き直しや図版の変更等の手直しは行っております」として、扶桑社版を元に作ることを表明しました。そして逆に扶桑社を訴えるという「盗人猛々しい」ことを行っています。
 
公表された自由社版教科書の目次を扶桑社版教科書の目次と照らし合わせてみました。
 
1章
01 人類の進化と祖先の登場
02 日本人はどこから来たか(全く同じ)
03 縄文文化の1万年(「の1万年」を加えただけ)
04 世界四大文明の誕生(「文明の発生と中国の古代文明」を変えただけ)
05 稲作の広まりと弥生文化(全く同じ)
06 中国の歴史書が語る古代の日本(「に書かれた」を「が語る古代の」にしただけ)
07 大和朝廷と古墳時代(「古墳の広まり」を「古墳時代」にしただけ)
08 東アジアの国々と大和朝廷(「大和朝廷」と「東アジア」を入れ替えて「の国々」を加えただけ)
09 聖徳太子と新しい政治(「新政」を「新しい政治」にしただけ)
10 遣隋使と「天皇」号の始まり(全く同じ)
11 遣唐使と大化の改新(「遣唐使と」を加えただけ)
12 日本という国号の成立(全く同じ)
13 平城京の造営と奈良時代(「大宝律令と平城京」を変えただけ)
14 律令国家と大仏建立(「奈良時代の」を取って「と大仏建立」を加えただけ)
15 飛鳥・白鳳・天平の文化(「白鳳」を加えただけ)
16 平安京と摂関政治(全く同じ)
17 密教の伝来と国風文化(「平安の文化」を変えただけ)
18 武士の登場と院政(全く同じ)
 
2章
19 平氏の繁栄と滅亡(全く同じ)
20 鎌倉幕府の武家政治(「の武家政治」を加えただけ)
21 大衆や武家の仏教と鎌倉文化(「大衆や武家の仏教と」を加え,、「鎌倉の文化」を「鎌倉文化」に変えただけ)
22 元の襲来とその後の鎌倉幕府(「元寇」を「元の襲来」にして「とその後の鎌倉幕府」を加えただけ)
23 建武の新政と南北朝時代(「南北朝の争乱」を「南北朝時代」にしただけ)
24 室町幕府と守護大名(「と守護大名」を加えただけ)
25 中世の都市・農村の変化(「都市と農村」を「都市・農村」にしただけ)
26 和風を完成した室町の文化(「和風を完成した」を加えただけ)
27 応仁の乱が生んだ戦国大名(「と」を「が生んだ」に変えただけ)
 
3章
28 ヨーロッパ人の世界進出開始(「進出」を「進出開始」にしただけ)
29 ヨーロッパ人の日本来航(「来航」を「日本来航」にしただけ)
30 信長と秀吉の全国統一(「織田」「豊臣」を取って「の全国統一」を加えただけ)
31 豊臣秀吉の政治と朝鮮出兵(「豊臣」と「と朝鮮出兵」を加えただけ)
32 黄金と「侘び」の桃山文化(「黄金と『侘びの』」を加えただけ)
33 江戸幕府の成立と統治の仕組み(「と統治の仕組み」を加えただけ)
34 朱印船貿易から鎖国へ(「江戸幕府の対外政策」を変えただけ)
35 鎖国下日本の四つの窓口(「の対外関係」を「日本の四つの窓口」に変えただけ。「鎖国下日本の四つの窓口」という小見出しを単元の見出しに昇格させただけ)
36 江戸社会の平和と安定(「平和で安定した江戸時代の社会」を入れ替えただけ)
37 農業・産業・交通の発達(全く同じ)
38 綱吉の政治と元禄の町人文化(「文治政治」を「政治」に、「元禄文化」を「元禄の町人文化」にしただけ)
39 享保の改革から田沼政治へ(「享保の改革と」を「享保の改革から」に、「田沼政治」を「田沼政治へ」にしただけ)
40 寛政の改革と天保の改革(全く同じ)
41 江戸の町人と化政文化(「江戸の町人と」を加えただけ)
42 新しい学問・思想の動き(「学問と思想」を「学問・思想」にしただけ)
 
4章
43 市民革命と産業革命(「産業革命」と「市民革命」を入れ替えただけ)
44 欧米諸国の新たな接近(「新たな」を加え、3章から4章に移しただけ)
45 欧米列強のアジア進出(全く同じ)
46 ペリー来航と開国(全く同じ)
47 尊王攘夷運動の展開(全く同じ)
48 薩長同盟と王政復古(「幕府の滅亡」を「王政復古」にしただけ)
49 明治維新と新政府、新首都(「の始まり」を「と新政府、新首都」にしただけ)
50 中央集権国家への転換(「道」を「転換」にしただけ)
51 学制・税制・兵制の3大改革(「兵制」と「税制」を入れ替え、「改革」を「3大改革」にしただけ)
52 近隣諸国との国境確定(「画定」を「確定」にしただけ)
53 岩倉使節団と征韓論(全く同じ)
54 殖産興業と文明開化(全く同じ)
55 条約改正への苦闘(全く同じ)
56 自由民権運動と政党の誕生(「と政党の誕生」を加えただけ)
57 大日本帝国憲法と立憲国家(「と立憲国家」を加えただけ)
58 日清戦争と三国干渉(「と三国干渉」を加えただけ)
59 近代産業の発展とその背景(「とその背景」を加えただけ)
60 国家の興廃をかけた日露戦争(「国家の興廃をかけた」を加えただけ)
61 世界列強の仲間入りをした日本(全く同じ)
62 明治の文化の花開く(「明治文化」を「明治の文化」にしただけ)
 
5章
63 第一次世界大戦と日本の参戦(「と日本の参戦」を加えただけ)
64 ロシア革命と大戦の終結(全く同じ)
65 ベルサイユ条約と大戦後の世界(全く同じ)
66 政党政治の展開と社会運動(「と社会運動」を加えただけ)
67 日米関係とワシントン会議(全く同じ)
68 大正の文化と都市生活の形成(「と都市生活の形成」を加えただけ)
69 共産主義とファシズムの台頭(全く同じ)
70 中国の排日運動と協調外交の挫折(全く同じ)
71 満州事変と満州国建国(「と満州国建国」を加えただけ)
72 日中戦争(全く同じ)
73 中国をめぐる日米関係の悪化(「中国をめぐる」を加えて「悪化する日米関係」を「日米関係の悪化」に変えただ  け)
74 第二次世界大戦の始まり(「の始まり」を加えただけ)
75 大東亜戦争(太平洋戦争)(全く同じ)
76 大東亜会議とアジアの国々(「アジア諸国」を「アジアの国々」にしただけ)
77 戦時下の国民生活(「生活」を「国民生活」にしただけ)
78 終戦をめぐる外交と日本の敗戦(「終戦外交」を「終戦をめぐる外交」にしただけ)
79 占領された日本と日本国憲法(「占領下の日本」を「占領された日本」にしただけ)
80 占領政策の転換と独立の回復(全く同じ)
81 米ソ冷戦下の世界と日本(「日本」と「世界」を入れ替えただけ)
82 世界の奇跡・高度経済成長(全く同じ)
83 戦前・戦後の昭和の文化
84 共産主義の崩壊と高度情報社会(「崩壊後の世界と日本の役割」を「の崩壊と高度情報社会」にしただけ)

扶桑社版教科書の全82単元に「01 人類の進化と祖先の登場」「83 戦前・戦後の昭和の文化」を加えて84単元にしただけで、単元の分類はほぼ丸写しです。全文を読み比べないと判断できませんが、著作権法上かなりきわどいことになっていると推測されます(ところで、自由社版が進化論から始まることは注目です。信仰を持つ人たちは支持するでしょうか?)。
 
文科省も馬鹿じゃありませんから「別の発行者の教科書とそっくりですねえ」と指摘しているでしょうし、白表紙本の厳重管理というルールを破って目次を公表したことや、前回エントリーで取り上げた自由社の二重設立問題なども勘案すると、検定合格は難しいのではないでしょうか。
 
そもそも「つくる会」は初めから検定で玉砕を目指しているフシがあります。教科書改善の会が南京事件について「実態が把握できないことを明記する」としたり慰安婦について当然記述しないとしていることに対して、平成19年9月9日の「日本国民へのアピール」で批判しています。自由社版の白表紙本は「南京事件の犠牲者はゼロだった」と書き、慰安婦についてもわざわざ記述して「強制連行はなかった」と強調しているはずです。
 
つまり検定不合格です。そして国を訴えます。「検定不合格 新しい歴史教科書」を市販します。藤岡信勝は家永三郎になるのです。運動のための運動が続きます。
 
文科省に屈伏して合格させてもらって「子供たちに教科書を手渡すのが私たちの使命だから…」と言い訳したら、かなりかっこ悪いです。
 
※日本教育再生機構を騙って、沖縄の少女をレイプせよとか教科書関係者の身の安全を保障しないなどと脅した脅迫事件について、たくさんの情報ありがとうございます。引き続き募集しています。脅迫状を受け取った方、犯人について知っている方は情報募集メールアドレスにご連絡いただければ幸いです。まだ被害届や告訴状を出していない方は警視庁に提出してください。

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