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★公民教科書を検定申請しなかった自由社=「つくる会」

いよいよ中学校歴史・公民教科書の検定が始まりました。来春に検定結果が発表され、夏にかけて全国で採択手続きが行われます。ところが、「新しい歴史教科書をつくる会」は5月27日、「自由社は公民教科書を改訂せず、検定申請しなかった」と発表し、会員たちは6月1日の総会で事後承認しました。平成23年に合格した現行版で来年の採択に臨むというのです。統計グラフなどは訂正申請で更新するそうです。
 
私たちプロジェクトJは自由社版歴史・公民教科書の数々の間違いを親切に指摘し、「当ブログは、反日・自虐で欠陥も多い自由社版教科書の消滅を願っていますが、どうしても次回検定に挑戦したいというなら、歴史も公民も全面的に改訂することをアドバイスします」「育鵬社と切磋琢磨するレベルまで上がってきてほしいと思います」(平成24年8月2日付「★また『お詫びと訂正』。自由社は発行続けるなら改訂すべし」)と忠告してきましたが、公民については採択をあきらめたようです。
 
自由社版公民教科書は「修繕」(訂正申請)ではなく「建て替え」(改訂)が必要でした。それは「設計」(編集方針)に根本的な欠陥があるからです。
 
例えば、3年前に指摘しましたが(平成23年6月15日付「★国旗・国歌法がただ1社載っていない自由社版教科書-記述検証〈10〉」)、自由社版公民教科書には、他の全ての教科書にある競争や独占に関する単元が存在しないので、「寡占」「独占価格」「独占禁止法」「公正取引委員会」の説明が全くないのです(巻末資料に独占禁止法の条文の抜粋があるだけ)。
 
各社の記述を比較してみましょう(シェア順)。
東京書籍
独占価格
信号機がこわれると交通がとどこおってしまうように、価格が商品の過不足を反映しなくなると、生産資源が品不足の商品にまわらず、逆に不要な商品のために、よけいな資源が使われるということになりかねません。
農産物や魚介類などの価格は、需要と供給の変化に応じて速やかに変化しますが、貯蔵のきく工業製品の価格は、必ずしもそうではありません。特に、少数の大企業が生産や販売市場を支配している寡占産業では、価格よりはむしろ品質やデザインなどの面で競争するのがふつうです。寡占化が進むと価格競争は弱まり、少数の企業が足なみをそろえて、価格(独占価格と呼ばれる)や生産量を決めることになりがちです。
価格競争が弱まると、消費者は不当に高い価格を支払わされることになりかねません。そこで、競争をうながすために独占禁止法が制定され、公正取引委員会がその運用にあたっています。(p125)

日本文教出版
企業の競争
現在の日本では、だれでも財やサービスを生産したり販売したりすることができます。それは、経済活動の自由と私有財産制度が、日本国憲法によって保障されているからです。私企業が生産の中心になった経済を、資本主義経済といいます。この経済のもとでは、生産活動全体は主に市場によって調整されています。
市場経済が人々の欲求をうまくみたしてくれるかどうかは、市場ではたらく競争の力にかかっています。同じ商品の売り手がたくさんいると、よりよい商品をより安く売ろうとして、競争がはげしくなります。そうなると、売り手は生産費を引き下げたり、商品の品質を向上させたりしなければなりません。こうして、売り手の競争は消費者に利益をあたえることになります。しかし、競争に敗れた企業は、この産業(市場)から脱落します。その結果、産業全体の生産が少数の売り手に集中したり(寡占)、独りの手に集中したり(独占)すると、競争は弱くなる場合もあって、独占の問題が生じるおそれがあります。
独占の問題
産業(市場)が寡占や独占に近づくと、売り手は示し合わせて、自分たちにつごうのよいように価格を引き上げたり(価格カルテル)、単独で法外な利益が得られる水準に価格を設定したり(独占価格)することがあります。そのため、消費者は不当に高い価格を支払わされたり、むだな商品を買わされたりすることがあります。
こうしたことを防ぐために、わが国では独占禁止法が制定されています。この法律に基いて、公正取引委員会は、独占の発生を予防したり、価格カルテルを禁止したりして、公正で自由な競争を維持し、市場経済の健全な発展と消費者の利益を守ろうとしています。(p138~139)

教育出版
競争の役割
市場メカニズムがはたらくためには、売り手どうし、買い手どうしが、自由に競争していなければなりません。前のページの例で、りんごの市場価格が、150円のままにならなかったのは、価格を120円に下げた生産者が売り上げを伸ばすのを見て、他の生産者もやむをえず、りんごの価格を引き下げたからです。もし、生産者どうしで価格を下げない取り決めなどがなされると、市場メカニズムは機能しなくなり、効率的な生産もできなくなります。
そのため、生産者どうしで相談をして、競争を避ける取り決めなどを行うことは、独占禁止法によって禁じられています。この法律は、公正取引委員会によって運用されています。このほかにも、公正取引委員会は、不当な商品表示の取り締まりなどを行って、自由で公正な競争が損なわれないように注意しています。【欄外に独占価格などの説明あり】(p130~131)

帝国書院
さまざまな価格の決まり方
価格には、生鮮食品のように変動しやすいものがある一方で、家庭用ゲーム機のように、ほとんど変動しないものがあります。価格が変動しない場合、その商品を供給する企業の数が1社あるいはきわめて少ないことが多く、そのような価格を独占寡占価格といいます。ただし、供給する企業の数が少なくても、液晶テレビのように、企業の間での技術進歩の競争が激しい場合には、価格はだんだんと安くなっていく傾向があります。(p112)
競争がなくなった状態
競争の程度は、必ずしも企業の数が多いほどつよくなるというわけではありません。ライバルの数は少なくても、たがいに激しい競争をすることもあるからです。しかし、一つのモノやサービスの供給が一つの企業によって独占され、新たな企業の参入がない場合には、競争は生じにくくなります。こうした企業は独占企業とよばれます。また、いくつかの企業が協定を結んで、製品の価格を一定の水準以上に維持する行為はカルテルとよばれます。独占やカルテルは健全な競争をさまたげ、消費者の利益をそこなうことになります。競争があることで価格はもっと安くなっていたかもしれないし、もっとよいモノやサービスが開発されていたかもしれないからです。
企業の健全な競争を維持するための法律が、1947(昭和22)年に定められた独占禁止法です。そしてこの法律を実際に運用して、独占やカルテルを監視する機関としてつくられたのが、公正取引委員会です。不当な価格操作などがあると、公正取引委員会は企業を摘発し、改めさせます。(p130~131)

育鵬社
競争と独占
市場での競争の結果、利潤を上げることのできない企業は倒産したり、その産業から撤退することになります。あるいは、ライバル会社に吸収されたり買収されたりもします。その結果、産業全体の生産が少数の企業に集中してしまうと、市場の競争は制限されます。少数の企業への集中を寡占、ひとつの企業への集中を独占といいます。
市場が寡占や独占の状態になると、少数の企業どうしが協定を結んだり、生産量を制限したり、価格をすえ置いたり、つり上げたり(独占価格)することがあります。もちろん、寡占が必ずしも不当な競争を生むとは限らず、激しい競争から消費者に利益をもたらす場合もあります。しかし、新しく生産や販売を始めようとする企業の登場を妨害したり、中小企業や零細企業に対して、不利な取引を押しつけることもあります。
このような問題に対処するための法律として、独占禁止法があり、その運用のため、公正取引委員会がおかれています。【独占禁止法の側注あり】(p119)

清水書院
企業の集中
企業ははげしい競争に勝とうとそれぞれ必死の努力をつづけている。上のグラフは、その結果をあらわしている。
新商品がヒットして、順位をあげた会社もある。首位を独走している会社もある。上のグラフのある品目で首位を独走している企業は、かつて1位と2位だった会社が合併したものだ。
このように、他の企業と合併して競争力を強めることもある。競争に敗れた企業のなかには、倒産したり他の企業に吸収・合併されるものも出てくる。
また、特定の産業では、大がかりな設備と最新の技術を必要とするため、豊富な資金をもつ少数の大企業だけで生産され、新たな企業が参入しにくい分野もある。
こうして、企業の集中がすすんだ結果、少数の企業に生産が集中する(寡占)。寡占化がすすむと、市場が少数の企業によって支配されるばあいが出てくる。これを独占という。
独占の状態では、利潤をさらに大きくするためにどんな方法をとることが可能になるだろうか。
競争による共だおれをふせぐため、少数の大企業のあいだで価格や生産量、販売地域などについて協定をむすぶ(カルテル)ことがある。また、大きな利益を確保するうえで都合のよい価格(独占価格)を決めることもある。
大規模な販売店では、ライバル店との安売り合戦に勝つために、仕入れ価格よりもはるかに安い価格で販売を続けることもできそうだ。
このような方法も、企業活動の自由として許されるのだろうか。
公正で自由な競争の確保
市場経済は自由競争によって発展してきた。
しかし、独占の状態が生じて企業間でカルテルが結ばれたり、独占価格が決められると、自由競争が制限されることになる。その結果、消費者の利益がそこなわれたり、中小企業が圧迫されたりすることにもなる。これでは市場経済の停滞をもたらしかねない。
そこで日本では、独占禁止法によって事業活動のルールを定め、公正かつ自由な競争をさまたげる行為を規制している。カルテルの結成のほかに、上のような不当な安売りなどは、不公正な取り引きとして禁止されている。企業間の合併も制限されることがある。違反した企業に対しては、違反状態の解消を命じたり、不当な利益をえた企業に対して課徴金を課したりしている。
この法律を実際に運用し、独占を監視する機関として設けられているのが、公正取引委員会である。
独占はのぞましくない。しかし、公正取引委員会の摘発を受けるような違反があとをたたないのが現実である。(p114~115)

自由社

 
 
 
                  (なし)
 
 
 

言うまでもなく、私的独占と不当な取引制限の禁止は自由主義経済の公正、自由な競争を確保するために不可欠で、中学校の公民の授業で必須項目です。
 
もちろん高校入試に出ます。
↓平成23年東京都立高校入試問題

 
自由社版中学校公民教科書で学んだ生徒はこの問題に答えられません。
 
もう一例。自由社版公民教科書には「公共料金」に関する説明がありません。
東京書籍
公共料金
市場経済でも、すべての価格が市場で決められるわけではなく、またそうするのが望ましいわけでもありません。電気・ガス・水道などのサービスは、国民生活にあたえる影響が大きいために、その価格(料金)は公共料金と定められ、国や地方公共団体が決定や認可をしています。(p125)
 
 
 
 

日本文教出版
公共料金
市場で決まる価格のほかに、国や地方公共団体によって決められる価格があります。例えば、電力や都市ガス・水道などは、それぞれの地域で唯一の供給者であることがほとんどです。また、これらのサービスがなければ、人々の生活は大変困るので、企業は価格を自由に決めることが許されていません。これらの価格は、公共料金として、国や地方公共団体の認可を受けています。(p139)
 
 
 

教育出版
市場と公平性
財やサービスの種類によっては、市場メカニズムにゆだねることが必ずしも望ましくないものがあります。電気・ガス・水道・教育などは、家計の所得の高い・低いにかかわりなく、誰にとっても必要なものです。つまり、これらの財やサービスは、公平な供給が求められます。これらを市場にそのままゆだねると、価格が上昇したとき、所得の低い人の生活が苦しくなります。そこで、これらの価格は、市場メカニズムに完全にはゆだねないで、公共料金として政府による公的管理のもとにおかれています。市場と公的管理の境界線をどこで引くかは、効率性と公平性のバランスをはじめ、さまざまな観点から判断していく必要があります。(p131)
 

帝国書院
公共料金の意義
国民生活の安定のため、国や地方公共団体が価格の変更を許可したりなんらかの規制をしたりするモノやサービスの価格を公共料金といいます。それは、エネルギー、交通、通信、公衆衛生など、価格の変動が生活におよぼす影響が大きく、市場における企業の数が一つ、またはひじょうに少ないモノやサービスの場合が多くなっています。(p112)
 
 
 

育鵬社
公共料金
商品の価格は基本的に市場の取引によって決定されますが、なかには市場に左右されずに決まる価格もあります。公共料金はそのひとつです。生活の基盤となる電気、ガス、水道などの料金や、鉄道、バスの運賃などは、国民生活の安定という見地から、国会や政府、地方公共団体の認可が必要とされています。(p123)
 
 
 
 

清水書院
公共料金
価格には市場価格のほか、公共料金などがある。公共料金には、郵便料金や鉄道運賃、都市ガス・電気料金、電報・電話料金、さらにバス・タクシー代などがある。これらの価格は私たちの生活に大きな影響をおよぼすため、国会や政府がとり決めたり、認可したりしている。(p103)
 
 
 
 

自由社

 
 
 
                  (なし)
 
 
 

公共料金ももちろん高校入試に出ます。
↓平成22年東京都立高校入試問題

 
公民教科書が作れないなら、私たちプロジェクトJに依頼してくれれば、適正な料金(独占価格ではなく市場価格)で執筆してあげたのに。残念です。
 
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奉悼 桂宮宜仁親王殿下

桂宮宜仁親王殿下薨去の悲報に接し、謹んで弔意を表し奉ります。

平成二十六年六月八日 プロジェクトJ

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