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★脳死臓器移植への疑問を書かない自由社版教科書-記述検証〈12〉

フジサンケイグループ育鵬社も日本教育再生機構・教科書改善の会もこの部分を宣伝していませんが、実は育鵬社の公民教科書で最も優れているのはp11「科学技術の課題」です。
 
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このページでは、遺伝子組み替え作物や生殖医療の在り方に触れた上で「日本では臓器移植法によって、法的には脳死が人の死と位置づけられていますが、宗教や感情の面では今でも議論になっています」と、脳死を「人の死」とみなすことへの異論を取り上げています。
 
臓器移植法が施行してから14年を迎えますが、心臓が動き、温かい血液が循環する人間の身体を「人の死」とみなすことを前提とした移植医療に対して、多くの国民が今も疑問と不安を抱いています。そのことを中学校公民教科書で記述したのは育鵬社が史上初めてです。
 
生命倫理に関する各社の記述の有無は下記の表の通りです。

 
育鵬社以外に臓器移植を取り上げている教科書もありますが、「新しい人権」のところで臓器提供の自己決定権として書いているだけです。自由社には、こうした生命倫理に関する記述は全くありません。
 
育鵬社のこのページはさらに「科学では解明できないことがたくさんあることを理解し、生命や自然に対して畏敬の念をもつことも必要です」と明記し、コラムで「サムシング・グレート」を取り上げ、生命の神秘や目に見えない偉大な存在について考えさせる、非常に素晴らしい内容になっています。
 
唯物論・無神論を脱却しているのは育鵬社の教科書だけです。
 
育鵬社と自由社の思想がここではっきり分かれたのには伏線があります。「新しい歴史教科書をつくる会」の元会長、西尾幹二氏は自分たちは「近代保守」だと言って、八木秀次さんたちや日本会議を「宗教右翼」「神社右翼」と罵倒しました(下記リンク参照)。
 
 ★西尾幹二「日本会議はカルト教団」-つくる会と反天皇<上>
 
また、元日本共産党員の藤岡信勝現会長は自らのブログ「藤岡信勝ネット発信局」(平成18年4月23日付=閉鎖)で「私自身は特別の信仰をもたない」と白状しています。
 
「新しい歴史教科書をつくる会」理事で自由社版公民教科書執筆者の吉永潤という人は自由社発行の月刊誌「自由」(平成20年11月号)で「保守派の使命とは、結局のところ『左翼の嫌がること』が何であるかを正確に見いだし、それを実行していくことにあるのではないか」と述べた上で、自分たちは西欧近代の政治思想を受容する「政治保守主義」で、日本教育再生機構は日本文化の独自性と伝統の連続性を何より重視する「文化保守主義」だと定義しています。
 
以前も少し書きましたが、そうした区分は間違っていません。
 
日本教育再生機構=宗教保守、伝統保守、文化保守、正統保守
「新しい歴史教科書をつくる会」=舶来保守、天皇・神道なき保守、ただの反共
(だから石原萠記と手を組める)、左翼の裏返しに過ぎない…
 
その集大成が、反唯物論を明確にした育鵬社と、そういうことに興味のない自由社版の教科書となって表れたのです。
 
「宗教保守」の立場で書かれた育鵬社の公民教科書をお読みになりたい方は日本教育再生機構(←クリック)からお買い求めになってはいかがでしょうか。
 
(つづく)
 
※これまでの連載
 ★南京事件への疑問を削除した自由社版教科書-記述検証〈1〉
 ★秀吉の朝鮮出兵を「侵略」に戻した自由社版教科書-記述検証〈2〉
 ★梶山静六を梶山清六と書く自由社版教科書-記述検証〈3〉
 ★内村鑑三も新渡戸稲造も載っていない自由社版教科書-記述検証〈4〉
 ★魏志倭人伝への疑問を削除し、ありがたがる自由社版教科書-記述検証〈5〉
 ★東京書籍の年表を盗用した自由社版教科書-記述検証〈6〉
 ★靖国神社も水戸学も載っていない自由社版教科書-記述検証〈7〉
 ★東北の太平洋岸を水没させた「白由社」版教科書-記述検証〈8〉
 ★陸奥宗光を睦奥宗光!ここが違う自由社版教科書-記述検証〈9〉
 ★国旗・国歌法がただ1社載っていない自由社版教科書-記述検証〈10〉
 ★チャンドラ・ボースの名前を削除した自由社版教科書-記述検証〈11〉
  
育鵬社や自由社版の記述について情報を募集しています。
 project-justice@mail.goo.ne.jp
 
※自由社の現行版(平成22年度版)の記述については、こちらから順次ご覧ください。
 ★安重根を取り上げ志士と称える自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<上>
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