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印刷図書館倶楽部ひろば

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市場から消えた新規格のフィルム(1) 126・インスタマチックフィルム

2015-11-09 11:46:51 | 印刷人のフイルム・フイルムカメラ史探訪
市場から消えた新規格のフィルム(1)
        126・インスタマチックフィルム
 
印刷図書館クラブ
印刷人のフィルム・フィルムカメラ史探訪 VOL-14
印刷コンサルタント 尾崎 章


1925年に発売されたライカは映画用35mmフィルムを短くカットして専用スプールに巻いて使用したが1934年にイーストマン・コダックがパトローネ入りの35mmフィルムを発売、これが現在の35mmパトローネ入りフィルムの標準規格となり今日に至っている。
しかしながら、35mmパトローネ入りフィルムは製品化以来「カメラへのフィルム装填の難しさ」が初心者需要層向けの問題点として指摘され、1970年頃までカメラ店・店頭でのフィルム装填「カメラ持参のフィルム購入」が女性層に定着していた。


コダック・126インスタマチックフィルムのコダパックカートリッジ  

この35mmフィルムのカメラ装填問題をカメラ側の機構改良と新規格フィルムによって解決する展開が活発化、1963年にイーストマン・コダックが「インスタマチック」と称したカートリッジ入り・126フィルムを発売、翌1964年にはアグファ・ゲバルトが「ラピットシステム」を発表、当時の世界写真市場の雄であったコダックとアグファによるフィルム簡易装填競走が繰り広げられる事となった。


コダック・126インスタマチックフィルムとインスタマチックカメラ   


126・インスタマチック方式 

126フィルムは、パトローネ入り35mmフィルムと同一幅の裏紙付きフィルムを使用、フィルム送出し部とフィルム巻取り部が一体となったカートリッジ(コダパックカートリッジ)にフィルムを収納する方式を採用、画面サイズは26×26mm(28×28mm)の正方形で撮影枚数は20枚撮り(後に24枚撮りに変更)であった。


コダパックカートリッジ

コダックでは社内ロールフィルム番号126の当該フィルムを「インスタマチック」とネーミングを行い世界規模の普及を図った。コダックのロールフィルム番号は、当時のコダック社が世界的な指導力を有していた関係よりそのまま国際規格名称として使用されており、パトローネ入り35mmフィルムの「135」、リーダーペーパー(裏紙)付きのブローニーフィルムの「120」、リーダーペーパー無の「220」等々を代表例として挙げる事が出来る。国内JIS規格もコダック・ロールフィルム番号をそのまま利用しており、当然の事ながらコダックが未参入の「ボルタ判フィルム」「ラピッドフィルム」等のロールフィルム製品には番号は無い、
126フィルムの特徴としては、下記5項目がありカメラ機構を省略化・簡易化出来る特徴がカメラ業界より注目を集めた。


1穴パーフォレーションの126インスタマチックフィルム 

①フィルム装填の簡易化、フィルムカートリッジをドロップインするだけの簡単セット。
②裏紙付きフィルムの為にカメラの枚数カウンターが不要となりカメラの簡易化が図れる。
③フィルム巻き戻し不要の為にカメラ巻き戻し機能を省略出来る。
④1穴パーフォレーションを採用、画面とパーフォレーションの位置が固定化される為に現像・プリントの自動化・標準化が容易である。
⑤ISO感度はフィルムカートリッジの切り欠きによるオートセットを採用。カメラ側のフィルム感度設定を省略化出来る。



初期・1966年当時のコダック「インスタマチック」フィルムのラインナップは、コダクロームX/126(20EX,1310円/現像代含),エクタクロームX/126(20EX,840円)、コダカラー64/126(12EX,400円)コダックベリクロームパン/126(12EX,165円)の4種類でカラーリバーサル2種、ネガカラー1種、モノクロフィルム1種で外式カラーフィルムのコダクロームを製品化する本格展開であった。
126フィルムの国内対応は、富士フィルム、小西六写真(コニカミノルタ)が自社ブランドの126フィルムを発売した。富士フィルム製品としては、フジカラーFⅡ126,フジカラースーパーHG100/126等があり、小西六写真はサクラカラー・N100/126、サクラパンSS/126(モノクロ)を発売している。


コニカ サクラパンSS 126フィルム


コダック史上最大のヒットになったインスタマチックカメラシリーズ


コダックは1963年の「インスタマチック」フィルム発売に併せて専用カメラ「コダックインスタマチック50」等 5機種の126フィルムカメラを初年度に発売して販売体制を整えている。
コダックが発売した「コダックインスタマチックカメラ」は1970年までに33機種に及び約5000万台の販売に成功、競合アグファ「ラピッドシステム」を数年で一蹴した。
更に、コダック社製・インスタマチックカメラの販売台数は1977年発売の「コダックインスタマチック76X」迄の14年間に7000万台を販売したとされており、コダックのカメラビジネス史上で最大のヒット製品として輝かしい歴史を残すことになった。


126フィルムカメラの国内対応

126フィルムカメラの国内メーカー対応は、小西六写真、オリンパス、キャノン、ミノルタ、リコー、ヤシカ、マミヤ 等が製品化を行い、初期製品は「フィルム装填の面倒さを嫌う」需要家層をターゲットとした事よりカメラ機能を簡略化した低価格製品となり、大部分がプラスチックボディ、単玉~トリプレットレンズ搭載に止まっていた。
一例として小西六写真が発売した「サクラパック100」(発売当時価格4.000円)はプラスチックボディ、単玉レンズ、固定焦点の簡易仕様であったがカメラデザインが秀逸で上位機種「サクラパック300」と共に1970年度・グッドデザイン賞を受賞している。
「サクラパック100.300」は、126フィルムカメラ、最初で最後のグッドデザイン賞受賞カメラとなった。


グッドデザイン賞受賞・サクラパック100 



サクラパック100X(1972年発売)


ミノルタ、オリンパス等は、インスタマチック市場が急拡大していた米国市場向けの製品に注力、ミノルタは「オートパック」と名付けた米国向け126フィルムカメラのシリーズ6機種の製品展開を実施した。オリンパスも「クイックマチックEES」カメラ3機種を米国市場向けに製品化、国内向けは「クイックマチック600」1機種のみと国内向けと米国向けが逆転する展開が行われた。
1964年に国産カメラ初として126フィルムカメラのEEカメラを製品化したマミヤ光機は、同社米国販売店向けの輸出専用機「アーガス インスタマチック260」1機種のみの対応を行っている。
本格仕様の126フィルムカメラとしては、1970年にキャノンが発売した「キャノマチックM70」(15.000円 1970年)がある。本機は40mm f2.8・3群4枚のレンズとプログラムEE機能、ゾーンフォーカス機能を搭載した35mmフィルム・コンパクトカメラ並みの仕様を搭載、「キャノンが造った126フィルムカメラ」として発売当初は注目を集めたがハイスペック仕様の126フィルムカメラに対する国内需要が無く本格展開には至らず国内向けは1機種のみの市場参入に終わっている。


ツアイス・イコン社 イコマチックF


国産唯一の126フィルム一眼レフ「リコー126Cフレックス」

126フィルム用一眼レフは、1968年にドイツ・コダックが「インスタマチック」カメラの最上位機種として「コダック インスタマチックレフレックス」を発売、ローライはコダックよりも早く「ローライSL-26」「ローライSL-36」をシリーズ展開、ツアイス・イコンは「CONTAFLEX 126」の発売を行っている。


リコー126Cフレックス 国産唯一の126フィルム一眼レフ

126フィルム用一眼レフの国内対応は、数機種の126フィルムカメラを発売したリコーがレンズ交換式の一眼レフ対応を行っている。リコーは1969年に国内初のインスタマチック一眼レフ「リコー126Cフレックス」(発売当時価格 26.800円 標準レンズ付)を発売して注目を集めた。
当該機は、ペンタミラーを使用したTTL一眼レフで35mm広角、100mm中焦点と55mm標準レンズをラインアップしていた。1969年当時の一眼レフは、ガラス製のペンタプリズム搭載が一般的であり1990年以降の普及型AF一眼レフで採用された樹脂成型ペンタミラーをいち早く採用した先進性が注目を集めた経緯があった。
しかしながら、カメラ本体にフィルム圧板が無く更にリーダーペーパー(裏紙)使用によるフィルム面の安定度不足、画面サイズの制約等の126フィルム固有の問題点より126フィルム一眼レフの市場創生は難しく「リコー126Cフレックス」は短命化を余儀なくされている。「CONTAFLEX126」は、本家パンケーキレンズとなったテッサー45mm f2.8の標準レンズを搭載していたが「リコー126Cフレックス」同様に本格展開には至らずに終わっている。


リコー126Cフレックスのコダパックカートリッジ装填状況


2000年前に生産が中止されたコダック126フィルム

126フィルムは、キャノンQLクイックローディング、富士フィルムDLドロップローディング等のカメラ各社による35mmフィルム自動ローディング機構の開発・搭載により需要が減衰、更にコダック自体が1971年に発売した新規格・110フィルム(ポケットインスタマチック)による当該需要交替が加速、コダックは1999年12月31日を以て126フィルムの販売を終了している。
最後まで126フィルムの生産を継続したフェッラーニア(伊)も2007年に同社「ソラリスFG200 126」フィルムの生産を終了している。1963年からコダックが37年間、フェッラーニアが更に7年間健闘したものの126フィルムは市場から消滅となった。


2007年に生産を終了したリラリスFG200 126フィルム


アグファも126フィルムカメラ市場に参入


コダック126インスタマチックフィルムと当該市場で競合したアグファ・ラピッドシステムは、イーストマン・コダックの世界的な販売力を打破出来ずラピットシステム発売8年後の1972年に126フィルムカメラ「アグファマチック50」とアグファブランドの126フィルムを発売、インスチマチック陣営に参加することとなった。


アグファが発売した126フィルムカメラ

アグファが発売した126フィルムには、「アグファカラーCNS/126」「アグファカラーXRG200/126」「アグファカラーHDC24/126」のネガカラーフィルムと「アグファイソパン/126」のモノクロフィルムがあり、126フィルムカメラは11機種の「アグファマチック」カメラを販売している。

コダック126フィルムカメラは、プラスチック製品が大多数を占めた事も有り、カメラ更新時に廃棄処分され現存する製品が少なく中古カメラ店のジャンク箱で見かける機会も少ない。また、フィルムカートリッジに現行フィルムを装填して再利用する方法も裏紙問題、プラスチックカートリッジ分解問題等々で難しい事から126フィルムカメラは飾り物化を余儀なくされている。
金属ボディの126フィルムカメラの市場価値も無く、僅かに「リコー126Cフレックス」等にフィルム、カメラ工業史のメモリアルとしての価値が残る程度である。

 
     
  
  




  

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