満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

イグアナの娘 萩尾望都

2009-05-18 | 漫画紹介

「イグアナの娘」 プチフラワー 1991年11月号
○ある日、頑張って子供を産んでみたら…その子がイグアナだった。
まわりの人には、可愛らしい人間の女の子に見えるのだが…
母親から見るとイグアナに見える。だから可愛くない。可愛くないから愛せない。
そんな母に第二子が誕生する。今度は可愛い人間の女の子に見える。
人間に見えるから可愛い。可愛いから溺愛してしまう。
かくして、母の第1子と第2子の差別飼育が始まる

イグアナに見える子は、素直で良い子でIQも高い。だからかな~???
こんなに差別されて育てられてもグレないし、ブレないで育つのだ
本人も鏡で見ると、自分の顔がイグアナに見えるのだから
母の言うのも「さもありなん」と思ったのかもしれない
自分の顔がイグアナに見えるのに…
引きこもらないし、何に対しても前向きなところは可愛いとすら思う
ただし、当たり前のことだが心に深~い傷を負う

語るも涙、聞くも涙の母の仕打ちなのだが…そんなに悲壮感は漂わない

久しぶりに読んだ漫画だが…
以前に読んだ時は、私も継母からのイジメを受けたことがあったので…
「嫌な漫画」と思った(笑)
ただし、あの時も思ったが、イグアナの娘がキラキラして見える漫画でもある
この子。強いのだ。
この強さが何処から来るのかは解らないが、彼女は乗り越えて行く
いや…私もそうだった。生きるためには乗り越えなければならないこともある。

実はこの漫画で当時、驚いた事実があった。
「本当の母でも自分の子供が嫌いになるのか?」で、ある。
これで、私の気持ちがス~っと楽になった記憶がある
本当の母でもありえることなら、継母なら「さもありなん」である(笑)
ちょびっと気持ちを大きくして、飲み込んでしまえば、たいがいのことは楽になる

「カタルシス」 プチフラワー 1992年5月号
○両親は、何時までも子供は子供と思っていたい…
そんな親が葛藤する時期と子供の思春期とは、何故か同一時期に起こりがちである
子供扱いされて、反発が起き、子供は思春期を迎え、父母から独立する
それは儀式のように、何処の家庭でも起こる。
いや…起こらないと困る流れの一つでもある。

大学受験に失敗し、浪人中の「ゆうじ」が突然家出をした
家出した「ゆうじ」を父母は、誘拐された小学生でも探すように騒ぎ立てた。

「何故家出したのか?」という理由を探り、話し合うほどには
自分の息子は成長していないと思っている
父母は一度人生を経験している。振り返ってみた自分の人生での間違いを、
自分の息子には経験させたくないという親心が働き、子供の考えを無視し
自分の正しい考えを押し付けようとする
「ゆうじ」は、こんな親の元に居たら、自分がロボットになってしまうと恐怖する

親は……自分も経験するまで解らなかったっという事実を、
コロっと、忘れてしまう不思議な生き物である
何時までも親元で、スネをカジり続ける大人になりきれない子供の方が
教育費や食費などで手が掛かると愚痴りながらも
可愛いと思うのだから、手に負えない

「午後の日射し」 ビッグゴールド 1994年14号
○夫から言われた一言「夫婦なんて、所詮他人」という言葉が
棘のように刺さってしまった中年婦女子で専業主婦の賞子
そんな時、お料理教室に入ってきた、若~い男のミョウ~な優しさに心ときめき
甘い妄想のお時間へといざなわれていく

この、イグアナの娘に収録された短編の中では、一番リアルな話だと思う
結局、なんにも起こらない。
起こす勇気が持てるほど、今の夫が他人ではないからだ。

「所詮他人」とは良く言われる言葉だが…血の繋がりのない同志とでも言おうか?
同じ人生という道を、前後しながら長い期間一緒に歩むのだから
「他人」だとも言えない間柄となる

恋で知り合って、愛で血迷って結婚した他人同士が
努力と思いやりと根性と諦めと情けがごちゃ混ぜになり
ある日、ポンっとお空に飛び上がった時に、二人っきりだと気が付き
深い心の繋がりを感じるのかもしれん。
それは愛や血の繋がりを超えた世界(笑)

ただし、女はホルモンの関係上、男は肉体機能の関係上
恋はどうしても必要らしい。だから所詮他人よっとウソぶきながら
「○様の横顔が素敵~」とか、「○ちゃんのお尻が~」とか言いたいのかもしれん

「学校へ行くクスリ」 ビッグゴールド 1994年16号
○夏休み明けの2学期初日、
高校1年生の「かつみ」は、世界中の人々が人でない物に見えてしまった
電気釜の頭を持つ母を筆頭に、頭だけ別物に見えるのだ
ところが中川という女子と甘木という男子、この二人だけは普通に見える
実はこの3人には、大人の事情という深い繋がりがあったのである

つまり、「かつみ君」は子供だけれど子供とは言いきれない年齢だという事で…
家庭の中で色々と親がもめる揉め事を、見て見ぬフリをする大人の部分と
よく解らないと否定し打ち消してしまう子供の部分との葛藤が
目に表れたと言える(笑)

先日友人が離婚したと言ってきた。社会人のお姉ちゃんには説明をしたが
高校生の妹には、なんの説明もしていないと言う
突然、家を引越し、その引越し先に父親が同行しない状況で、である。

そりゃバカじゃないんだから、薄々は解っていると親も思っているのだが
受験前の大事な時期に、心を煩わせたくなかったっと言っていた

妹は良い子だから、何も解らない子供のフリをすることだろうと思う
お母さんが電気釜に見え、お姉ちゃんが掃除機に見えたとしても
受験さえ失敗しなければ、離婚で傷ついた母親は喜ぶだろう
ああ、子供ってなんて大変な職業なのだろう
私も、高校生の時に、そんな時期があったので大変だな~と思う

親も大変だが、子供だって大変なんである
そこんところが解って腹を割って話せば、それも子供の実になるのだが…。
やっぱ、受験も大事だよな~社会に出ると、その受験の合否がズーと尾を引くしな
気持ちは解る。だもんで時の解決を待つしかないだろうね~っと言ってしまった
子供はセッカチで焦って失敗するが、大人になると気長に待つ事を覚えてしまう
良い結果が出ることを、切に願うしかないだろう。

最後に…
「友人K」 グレープフルーツ 1985年21号
○コチラは雪を見ると思い出す、中学時代に転校してきたKとの話
短い短いお話。

今回、漫画ブログ仲間のトミーさんから、初版本をお借りして読んだ
「トミーさんのイグアナの娘レビュー」←こちらも勉強になるので読んでみてほしい

萩尾望都さんの描く親子関係では、たいがい親の方が悪いイメージがある
考え方が幼かったり、ヒステリーだったり、押し付けがましかったり
漫画では、極端に描くことが多いので「そんなんアリか?」と思いがちだが
そんな親の方が、現実にも多いと思う
だって我々は親として生まれて来た訳ではなく
一個の人間として、その成長過程で、子供を育てているのだから、間違いも多い

そんな間違いの多い親に育てられたら子供は可哀想とか思ってはいけない
間違いの多い親に育てられた子の方が、絶対的に強く逞しく情緒が多彩である
子供が一人になっても生きられるように育てるのが、親の務め
だから我々大人は、間違いを恐れず子供と向き合うべきなのだと思う

萩尾さんの作品を見ていてそう感じた
どの作品の中の子も、親を乗り越えて、親より大きくなっているから

また、何かの本で読んだことがあるが…
萩尾家は教育熱心な厳格な家庭だったと聞く。
母との確執もあったらしい。そのような土壌から、こういう漫画を描いたと思うが
彼女自身、それら確執を乗り越えたからこそ、描いた作品だと思う
若い時には、永遠とも言える時の流れに絶望を感じ
人生を簡単に止めたくなるものだが
80歳まで生きるとして、親との確執はたかだか十数年間だけである
陳腐な言い方だが、必ず時が解決してくれ、また自身も成長し強くなれる
自分を信じて、不出来な親の縁が原因で自分自身に負けないで欲しい

あまりにも深く面白い内容だったもんで、ツラツラとシツコク書いてしまった(笑
色々と思うところをコメントに残して欲しいな
ちょっと、おしゃべりがしたくなる作品でした~(笑)

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22 コメント

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確かに、いろいろ話したくなりますね(苦笑) (すず)
2009-05-18 11:03:47
 満天様は生意気だと思われるでしょうけれども、私は親との確執は、互いが死ぬまであると思います。子ども時代はもとより、離れて暮らしている今でも、言うにいえないあれこれが山積みです。

萩尾さんの作品を読むと、どうしても自分の内面と向き合わなくちゃならなくて、辛いですよね(苦笑)
返信する
ご返事どす~ (すずどんへ)
2009-05-18 11:24:15

おお~。早速ご参加ありがとう!(笑)

なんの。色々と聞くが…仲の良い母娘よりも
未だに確執を抱えておる母と娘の方が多いだ
やっぱ近いんだろうな
見かけも、考え方も、色々と…
いや、でも確執を持っている親子の殆どが
似てると言うと嫌がるがの(ハハハハハハ)

結局、イグアナの娘でもお母さんが亡くなってから氷が解けたもんね
よく、親が元気な時にって言う人も居るけど
無理する必要はないと思うよん
親の嫌いな所を見て、ああはならんっと思う事って大事だと思うもん

ウフフフフフフフ
萩尾さんの作品を読んで内面と向き合うのが辛いかもしれんが…
いずれ、萩尾さんの作品が無くても、そうしなきゃならん時は来るだよ~(笑)
返信する
ありがとうございます。 (トミー。(猫とマンガとゴルフ~の管理人))
2009-05-18 12:29:16
 紹介してもらって何なんだが…。私の記事はあまり参考になりません。皆さまにはぜひコメント欄の方を読んで頂きたい。萩尾氏のファンの方々よりいろいろ教えて頂いてます。助かります。

 私もいろいろあった口だが…。満天さんの言うようにある方の人が多いみたいよ。なけりゃおかしいって思う。そう思ってどこかで気持ちを切り替えて、生きていけばいいだけでしょう。あくまで自分の人生はご自分で。

返信する
イグアナの娘 (hirorin)
2009-05-18 13:29:34
これはTVドラマでやってたのを見ました。
いけずな母親役が川島なお美である意味ぴったりだった。父親役が草刈正雄。いけずされる娘が菅野美穂でよかったわ。
近親憎悪っていうのかな?近ければ近いだけ、それだけ深いのかな?

子供はマジ嫌になる時があったよ。息子を育ててる時。でもそれも一時すれば又可愛いの。だから、ああいう風にわが子を虐待して死なせる親が信じられない。いらんかったら作るなよって言いたいです。世の中にはどうしても恵まれない方だっていらっしゃるのにね。

「午後の陽射し」こういうのがあるのね。1994年だからときめいても何にもなかったんだろうけど、今だったらどうだろう?アクション起こす人多いと思うよ。4人に1人はそうだって。確かに私の周りを見てもそうだわ。その確率当たってる。
返信する
ご返事どす~ (トミーさんへ)
2009-05-18 14:00:59

勝手に紹介してしまって…ごめんなさい(笑)
でも…トミーさんのレビューも
なるほどな~っと思ったよん
やっぱし、皆さん色々とあったんだ~ってな

でも、それって嫌なことなのかな~
私からすれば、ちょっと羨ましい(笑)
そんな気持ちも淡く生まれますだ

最後に母もイグアナだった…って所が一番羨ましい(ハハハハハ)
自分が一番たまらなく嫌いな部分が似ている
自分も母と同じになるんじゃないかと恐くてたまらない(笑)

>あくまで自分の人生はご自分で
アハハハハハ。トミーさんらしいの(笑)
その通りなんだけど、そうも出来ない人も居る
そんな人がこの漫画を読んで力を得たかもよん
萩尾さん自身も、母を乗り越え踏み台にして大きくなったのかも
それを誰かに伝える術を持っている人はエエな
漫画の力は凄い。文章だと…なかなか(笑)
返信する
ご返事どす~ (hirorinちゃんへ)
2009-05-18 14:19:54

>子供はマジ嫌になる時があったよ
だよね~。私もなんとな~く解る気がする
だって、子供って思うようにならんもんね

ウチの継母さんはよくヒステリー状態になってた~
産後の関係かな~弟を産んでからヒドかった
今、自分が歳を取って気が付くんだけど…
不安定な毎日を送っていたらアリかもしれん
そう思って彼女を許してるの(笑)
殺さないでくれただけでも、ありがたいかも
(アハハハハハハ)←笑うには重過ぎるか?(笑)

そう、1994年だからトキメキも我慢したが…
今なら…だね(笑)
私の友達もダブル不倫でお互いに離婚したしな
情報量が多く、選択肢も多いから自分も頑張れる気がするのかもね
しかし、凄いエネルギーだとも思う
自分の幸せを探して探して…で、見つかれば良いけど…
あればっかりは探して手に入るっていうより
子供と一緒で、育てて手に入るもんだからな~(笑)
返信する
私もある意味・・・ (たれぞ~)
2009-05-18 14:51:45
萩尾さんの肉親のトラウマが絡む話は重い・・・
でもまだこれは救いがあるからいいかな(苦笑)

私もある意味。イグアナの娘だったから
ウチの母は私を「お前はお父さんに似ている」
といって、よく虐めてくれたもんだ。
弟は反対に可愛がっていた。

そんな母も年をとったのか、私に連絡を取ろうとしてくるようになったが、やはり未だに「子供は自分の所有物」みたいな考えに染まっていたので読んでて吐きそうになったよ

まぁ実の親子であっても理解しあえないことはいっぱいあるもんだ

このラストは主人公が幸せになってくれたので本当に良かった
返信する
ご返事どす~ (たれちゃんへ)
2009-05-18 15:32:58

たれちゃんのお母さんも連絡よこしたんか?
実は…ウチも…
このレビューを書いた後スグに来た(笑)
笑うのは10年ぶりなのに意味不明な内容
私は有る意味、継母だから許せてるのかもね
実母だったら…ハッタオスかも(ハハハハハ)
いや実母でも継母でも「メスはメス」なのかもな~
自分もそうかと思うと気が滅入るがね(笑)

色々とあってさ、やっぱ色々と考える訳さ
普通の人が思いもよらない事まで考えてさ
自分の心の醜さに仰け反るんだけどね
でもさ、そのササクレた心を嫌っちゃダメだよ
その心こそ一番大事だと思う
ササクレた心を表に出して行動している訳じゃないもん
思ってるだけなんだもん。イイじゃん。
頭の中で考えたり、思ったりするからこそ…
現実を耐えて行けてるんだから(笑)

私なんかヒドイよ~
「ボケたなコイツ」とか思いながらも、手紙に返事書いたもん(笑)
それも、優しく(笑)弟に頼まれたからね
ありゃ、また内容重いかね?
年のせいか…心に留めておけなくって…(ハハハハハ)
ブログも潮時かもしれん
返信する
いいよな~ (さくら)
2009-05-18 18:56:55
いいよな~ って変なおじさんの口調でつい言ってしまいたくなる。
萩尾望都が好きな人は何度でも、読み返しては何度でも語りたくなるのだろう。
が、一時期からパタリと読まなくなってしまったので、知らない話もあったりする。
「イグアナ」は読んでないなぁ。ドラマやってたね。
菅野美穂、鏡にうつるイグアナは私にはかわいく見えてしまった。

「夫婦なんて、所詮他人」
そのセリフで殺人に至るドラマは多い。
再放送ばかり見ている私は、またかと思ったりするが、そうか萩尾さんも書いているのか。

親が悪い。
そうかもな、メッシュとかは怖かった。それゆえ、「残酷な神~」は1巻で読むのをやめたほどだ。
いい親と言えば、エーリクがボーデンでシドと生活する話は好きだ。
オスカーも遊びにくる。
あれの一枚一枚のイラストが強く印象に残っている。

ああ、語ってしまった。
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Unknown (keroyon)
2009-05-18 21:36:53
「イグアナの娘」ってドラマやってたの知ってたけど(見てなかった)、そういう話なんだ。
でも普遍性のあるテーマだね。

配偶者は自分で選べるけど「親子の関係」は選べない。

おバカなペットでもカワイイように(?)ありのままを無条件に愛する事が出来れば素晴らしいと思う。
(私の課題でもあるのですが)

満天さんのブログが潮時っていうのはさみしいね。
そのままでいてほしい。
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