劇場彷徨人・高橋彩子の備忘録

演劇、ダンスなどパフォーミングアーツを中心にフリーランスでライター、編集者をしている高橋彩子の備忘録的ブログです。

ナイロン100℃『神様とその他の変種』

2009-04-22 01:36:37 | 観劇
ナイロン100℃『神様とその他の変種』@本多劇場を見る。
ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の作・演出が冴える、なかなかの快作。



とある一軒家を舞台に展開する、一見どこにでもある人間模様。

ただし、登場人物たちはみな、ひどく饒舌だ。
彼らの切れ味鋭い言葉の応酬は、瞬時に物事の価値や意味を転倒・変換させ続ける。
その荒唐無稽なおかしみと不穏さをはらんだドラマは、
別役実が名著『言葉への戦術』で定義した不条理劇さながらであり、
言葉を自在に操るKERAの手綱さばきに改めて感嘆した。

だが舞台では徐々に、言葉と異なる事実、そしてその奥にある感情が
剥き出しになっていく。家庭不和、いじめ、不倫、横領、借金・・・。
そんな中で、敢えて騙す/騙される思いやりや、信仰・祈りの意味、
生死を巡るさまざまな思いなどが、多層的に描き出される。
最後はドンチャン騒ぎに似た混沌から、ある種の浄化作用を感じさせる幕切れに。
幾つものテーマが散りばめられ、はっとする言葉も多数。
観る人のアンテナによって、キャッチするものは変わってくるかも知れない。

いつもながらむちゃくちゃな名人芸(?)で突っ走る犬山イヌコや、
巧みにして軽快な演技を見せる山崎一らベテランをはじめ、
不気味な存在感を放つ峯村リエ、謎めいた雰囲気と無邪気さを併せもったみのすけ、
絶妙なタイミングで場を引っかき回す大倉孝二、凛として小気味よいテンポの水野美紀、
とぼけ風味とシリアス味のバランスがたまらない山内圭哉などなど、
KERAワールドを体現する俳優たちの力量も、舞台の質に大きく寄与していた。
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