▼ 超勤の不払い問題 原告がほぼ全面勝訴
東京地裁 都に一部支払い命令
現役の都職員が都を相手取り、不払いの超過勤務手当の支払いを求めた裁判の判決が25日、東京地裁であった。
判決は原告の主張をほぼ認め、「原告は正規の勤務時間内に終えることができないような業務を与えられた」などとして、都に時効で消滅した分を除いた不払い金として13万7910円の支払いを命じた。
訴えを起こしていたのは、現在、東京都教育相談センターに勤務する坂本通子さん(59)。坂本さんは、かつて多摩教育事務所の管理課教職員係として勤務。02年4月から06年3月までの4年間の超過勤務手当のうち、支給されていない分の合計として45万2740円の支払いを請求していた。
問題となっていたのは、超過勤務手当の支給の仕組み。都の条例では事前に「超過勤務命令簿」を作成して管理者の決裁を受けた上で超過勤務を行うことになっている。
しかし、当時の多摩事務所では、超過勤務を行った場合、「超過勤務処理簿」または「超過勤務処理簿(補助簿)」に勤務の日時や理由などを書いて係長、課長の決裁を得、庶務係給与事務担当者に提出。担当者は予算の範囲内に超勤時間数を調整し、管理課長の決裁を受けた上で教育庁総務課に提出する。
総務課の承認後、調整した時間数に合うように処理簿(補助簿)記載の日時から、いつの超過勤務を命令簿に転記するかを給与事務担当者が選び、各職員が命令簿の原案を作成。それを係長、課長と決裁して命令簿が完成するという仕組みだった。
判決は、この独特なシステムの存在を認め、「庶務係給与担当者はもとより、係長および管理課長のいずれも、補助簿記載の各超過勤務について個別にその緊急性・必要性を判断することは一切なく、超過勤務手当を支給すべき超過勤務として命令簿に記入するかどうかは、もっぱら超過勤務手当の予算の範囲内に収まるかどうかのみによって決められていた」と指摘。
「原告は正規の勤務時間内に終えることができないような業務を与えられ、いずれもこれが行われなければ多摩教育事務所の公務が渋滞するなど公務の円滑な遂行に必要な行為であった」などとした上で、「管理課長から黙示的に超過勤務命令があったものと認めるのが相当である」と判断し未払い金額の支払いを求めることができるとした。
都庁で行われた記者会見と報告集会で、原告弁護団は「判決は、『超過勤務手当について予算等の財源措置を講じていないからといって、被告が地方公共団体としてその負担すべき超過勤務手当の支給を拒み得ないことは当然であり、かかる取り扱いが不相当であることは明らかである』とも述べている。予算措置を講じることなく、時間外労働に対し、その割り増し賃金を支給しない違法なシステムが存在していたことを認定し、このような違法な事態はゆるされないことを明快に断じた点に意義がある」と説明した。
原告の坂本さんは「公務員は予算の制約があって超勤は6割くらいが普通と実は思っていたが、4年前の3月に39時間の超勤で10の1の4時間分しか認められず憤りを感じた。2年近くかかって今日の判決にたどりついた。ものを言うということは、とても大事なこと。この間、支えてくださった方々に感謝したい」と謝意を述べた。
都庁職教育庁支部の伊東洋一支部長は「提訴の段階で教育庁のほとんどの職場で不払い超過勤務が存在していた。他局でもそうであり、都庁の全体から不払い超勤を一掃するという意義のある問題として坂本さんと共に取り組みを進めてきた」と総括。
「教育委員会過勤務手当の予算額は、08年度は10億4千万だったのが09年度は11億3900万円と、約1億円増額された。ほぼ実績通りに支払われている」と改善状況にも触れ、「教育庁だけでなく、全局で必要な予算をつけさせることは可能」と今後の取り組み継続を誓った。
一方、都の大原正行教育長は「都教委の主張の一部が認められなかったことは大変遺憾。判決内容を詳細に確認して今後の対応を検討していく」とコメントした。
『都政新報』(2010/3/10)
東京地裁 都に一部支払い命令
現役の都職員が都を相手取り、不払いの超過勤務手当の支払いを求めた裁判の判決が25日、東京地裁であった。
判決は原告の主張をほぼ認め、「原告は正規の勤務時間内に終えることができないような業務を与えられた」などとして、都に時効で消滅した分を除いた不払い金として13万7910円の支払いを命じた。
訴えを起こしていたのは、現在、東京都教育相談センターに勤務する坂本通子さん(59)。坂本さんは、かつて多摩教育事務所の管理課教職員係として勤務。02年4月から06年3月までの4年間の超過勤務手当のうち、支給されていない分の合計として45万2740円の支払いを請求していた。
問題となっていたのは、超過勤務手当の支給の仕組み。都の条例では事前に「超過勤務命令簿」を作成して管理者の決裁を受けた上で超過勤務を行うことになっている。
しかし、当時の多摩事務所では、超過勤務を行った場合、「超過勤務処理簿」または「超過勤務処理簿(補助簿)」に勤務の日時や理由などを書いて係長、課長の決裁を得、庶務係給与事務担当者に提出。担当者は予算の範囲内に超勤時間数を調整し、管理課長の決裁を受けた上で教育庁総務課に提出する。
総務課の承認後、調整した時間数に合うように処理簿(補助簿)記載の日時から、いつの超過勤務を命令簿に転記するかを給与事務担当者が選び、各職員が命令簿の原案を作成。それを係長、課長と決裁して命令簿が完成するという仕組みだった。
判決は、この独特なシステムの存在を認め、「庶務係給与担当者はもとより、係長および管理課長のいずれも、補助簿記載の各超過勤務について個別にその緊急性・必要性を判断することは一切なく、超過勤務手当を支給すべき超過勤務として命令簿に記入するかどうかは、もっぱら超過勤務手当の予算の範囲内に収まるかどうかのみによって決められていた」と指摘。
「原告は正規の勤務時間内に終えることができないような業務を与えられ、いずれもこれが行われなければ多摩教育事務所の公務が渋滞するなど公務の円滑な遂行に必要な行為であった」などとした上で、「管理課長から黙示的に超過勤務命令があったものと認めるのが相当である」と判断し未払い金額の支払いを求めることができるとした。
都庁で行われた記者会見と報告集会で、原告弁護団は「判決は、『超過勤務手当について予算等の財源措置を講じていないからといって、被告が地方公共団体としてその負担すべき超過勤務手当の支給を拒み得ないことは当然であり、かかる取り扱いが不相当であることは明らかである』とも述べている。予算措置を講じることなく、時間外労働に対し、その割り増し賃金を支給しない違法なシステムが存在していたことを認定し、このような違法な事態はゆるされないことを明快に断じた点に意義がある」と説明した。
原告の坂本さんは「公務員は予算の制約があって超勤は6割くらいが普通と実は思っていたが、4年前の3月に39時間の超勤で10の1の4時間分しか認められず憤りを感じた。2年近くかかって今日の判決にたどりついた。ものを言うということは、とても大事なこと。この間、支えてくださった方々に感謝したい」と謝意を述べた。
都庁職教育庁支部の伊東洋一支部長は「提訴の段階で教育庁のほとんどの職場で不払い超過勤務が存在していた。他局でもそうであり、都庁の全体から不払い超勤を一掃するという意義のある問題として坂本さんと共に取り組みを進めてきた」と総括。
「教育委員会過勤務手当の予算額は、08年度は10億4千万だったのが09年度は11億3900万円と、約1億円増額された。ほぼ実績通りに支払われている」と改善状況にも触れ、「教育庁だけでなく、全局で必要な予算をつけさせることは可能」と今後の取り組み継続を誓った。
一方、都の大原正行教育長は「都教委の主張の一部が認められなかったことは大変遺憾。判決内容を詳細に確認して今後の対応を検討していく」とコメントした。
『都政新報』(2010/3/10)
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