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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

 ★ 東京都の『教育ビジョン』多文化共生社会の衣からナショナリズムの鎧が見える

2024年03月06日 | 暴走する都教委

 ★ 都教委が「教育振興基本計画案」を公表
   ~衣の下から鎧~ (週刊新社会)

永野厚男・教育ジャーナリスト

 ★ 「共生社会」の一方で
  「日本国民としての自覚」を強制

 十倉雅和経団連会長が2023年12月4日の記者会見で「企業が自民党に政治献金するのは社会貢献だ」と放言。その経団連の渡邉光一郎副会長が会長だった中央教育審議会が同年3月8日出した答申通り、政府は6月16日、「国を愛する態
度]を2カ所、「日本人としての美徳やよさを生かし」をーカ所盛り込んだ”教育振興基本計画”(以下、”計画”)を閣議快定した。
 “計画”は第1次安倍政権”国を愛する態度”を盛り込む等、改悪した教育基本法第17条1項で政府に策定を義務付け、同条2項で全国の教育委員会に「政府の計画を参酌し(略)当該地方自治体における教育振興のための計画を定める」よう努力義務化した。
 東京都教育委員会は24年度から5年間の”計画”を、『第5次東京都教育ビジョン案』(以下、案)と称し公表し、パブリックコメントを実施した。

 ★ ナショナリズムとミリタリズム

 案は、政府の”計画”の「基本的な考え方を参酌し、東京都の教育施策を展開していくことが重要です」とし、”計画”の「内容の抜粋」の最初に「教育の普遍的な使命/学制公布から約150年。教育基本法の理念・目的・目標(不易)の実現のための、社会や時代の変化への対応(流行)」と明記。
 このフレーズは冒頭の経団連・渡邉氏が中教審で何度も繰り返し絶賛していたものだが、「学制公布150年」の前半・約75年間のほとんどは、子どもたちを軍国主義教育で洗脳し、戦場に駆り立てアジアの人々を大量殺獄した元凶である教育勅語の下だ。
 48年6月19日、衆議院が「排除」、参議院が「失効確認」を決議した教育勅語下の教育をも、無批判に「不易」だと明記する都教委は、議会制民主主義を軽視している。
 フレーズの中の「教育基本法の…目標」とは、冒頭の「国を愛する態度」の強制も含むゆえ、都教委は削除するべきだ。
 案は「外国人等(略)共生社会の実現が不可欠」「多様な人々が共に生きる社会の実現」等の文言を頻出させている。
 だが次の通り衣の下から鎧が。案は高校での歴史教育の下りで、「東京都独自の科目『江戸から東京へ』の活用を通して、日本国民としての自覚、我が国の歴史に対する愛情(略)の大切さについての自覚等を、更に深めていきます」と、在日外国人生徒への配慮を欠き、国家主義を煽る主張をしている。
 都教委が2012年4月に作成し、都立高新入生全員に配布した日本史副読本『江戸から東京へ』改訂版は、大きな欠陥がある。
 「第二次世界大戦と太平洋戦争」の項で、連合国最高司令官・マッカーサーの証言の約2万2千語から僅か9語を部分引用し、「この戦争を日本が安全上の必要に迫られて起こしたととらえる意見もある」と明記。育鵬社教科書でさえ、文科省の検定後削除した「第二次世界大戦ほ自衛戦争だ」という特異な思想を生徒に植え付けようどする意図が見え見えだ。
 同書は13年度再改訂版でも、東京都墨田区横網町公園にある関東大震災朝鮮人犠牲者追悼碑の飲用の一部改竄(かいざん)が発覚。「朝鮮人虐殺」の事実を隠蔽した。
 案の「防災教育の推進」の項は「防災教育デジタル教材『防災ノート~災害と安全』を配信。高校で『防災士』の資格取得等、防災リーダーとして活躍できる人材育成」等を記述。
 だが都教委は、防災教育推進の都立高校からピックアップするなどとして、”宿泊防災訓練”と称し全額税金支出で、13年7月に田無工業高校ラグビー部等の男子生徒34人を陸上自衛隊朝霞駐屯地(東京都練馬区)に、14年11月には大島高校2年生全員対象に同武山駐屯地(神奈川県横須賀市)に引率した”前科”がある。
 この“訓練”では、行進訓練や「自動小銃携行、迷彩戦闘服で突撃する自衛隊員らの写盲己を見せ、国防の任務、抑止力を講話。大島高校では2年生全35人中19人が拒否し、図書室で課題学習に取り組み出席扱いに。都教委は今後、生徒や保護者が嫌がる「動員」を、絶対にやるべきでない。

 ★ 教員志望者減の真因は?

 案は「受験者数が減少したが、採用者数が増加した」と事情説明しつつ、22年3・2倍、23年2・1倍、24年1・6倍まで低下した教員採用試験の受験倍率
を示し、「優秀な教員を確保するため教職の魅力を伝えていく」対象を、大学生だけでなく「希望する都立高校生」にも広げると記述。
 だが教員志望者減の真因は、卒業式等の君が代起立強制や前記の宿泊防災訓練など、都教委が“上”から押し付けてくる、児童生徒のためにならない政治色の濃い誤った施策による、やりがいのなさや多忙感にある。
 現場の悲痛な訴えを都教委は真剣に受け止め、改心するべきだ。

3月中に東京都教育ビジョンを決定する都教委定例会。水泳の萩原智子氏(右)も委員になった。撮影は1月11日。

『週刊新社会』(2024年3月6日)


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