● <情報提供>『産経』がアジア解放戦争説を否定?
皆さま 高嶋伸欣です
1 すでに気づかれた方もおいでかと思いますが、『産経』が毎週日曜日の連載記事「子供たちに伝えたい日本人の近現代史(単行本は「子供たちに伝えたい日本の戦争」)」の中で、1941年12月8日からの対英米戦争の目的について、実際の目的は石油を中心とする軍需資源産地の横取りを目指した”自存自衛”の闘いであって、アジアの解放を第1義のものとしたのではない、と明記しています。
2 そのことを明記したのは、上記の連載59回目(2014年5月25日・東京本社版)の「シンガポール攻略戦」について、説明している回です。記事本文に、戦後の日本国内で『大東亜戦争』という用語の使用をGHQが禁止したのは、「『大東亜戦争』にアジアの新秩序建設や解放という日本側の『大義名分』を感じ取ったからだ」とし、続けて次のように説明しています。
3 「当時のアジア、特に東南アジアの大部分は英国、フランス、オランダなど西欧列強や米国の植民地支配下にあった。そのアジアを解放するというのだから、米英などにとって実に都合の悪い『大義名分』だったのだ。確かに開戦後すぐにアジアから欧米勢力を追い出し『解放』した。だが初めから純粋にアジアの解放や独立のため、自国の存亡をかけ戦ったのだろうか。
最大の目的は『石油』だった。当時すでに石油がなければ、近代国家として『自存』することも『自衛』することもできなくなっていた。特に、海軍の場合、石油は命綱だった。
だが日本国内ではほとんど生産できない。蘭印(オランダ領東インド、現インドネシア)など東南アジアに求めようとしたが、逆に米国などにより石油市場から締め出されてしまう。
そこで『自存自衛』のため、米英などに戦争をしかけたというのが実情だった。そんな戦争目的を胸に、昭和16年12月8日、マレー半島に上陸を果たした山下奉文中将率いる第25軍はシンガポール目指し、南下を始める」と。
4 相変わらず「自存自衛の戦争」と言い続けていますが、「アジア解放」は純粋かつ実際の目的ではなく、石油などの産地である欧米諸国の植民地の横取り=侵略こそが本来の目的だったのだと、明確に説いています。
5 しかも、この連載は『産経』の外部筆者ではなく、同紙特別記者・編集委員の皿木喜久氏が担当しているものです。皿木氏は論説委員長を経験しています。これまでの『産経』が、藤岡信勝氏などの”アジア解放戦争”説を支援していたことはよく知られています。その『産経』が、実は目立たないところで、このように歴史上の事実に基づいて、あれはやはり侵略戦争ないしは先発帝国主義国に対する後発帝国主義国日本による植民地横取りの戦争だったのだという戦争認識に転換していることの表れ、とみることができそうです。
6 ただし、この記事だけでは『産経』が本格的に戦争認識を転換したとは、みなせません。さらに同紙の関連記事を精査していく必要がありそうです。
7 でもその一方で、この記事の利用価値は大きいです。
1)まず授業で、12月8日の開戦のことを扱うときには、『産経』のこの記事を教材にすることで、「アジア解放」が本来の目的ではなかったことを、語れます。「維新の会」などのチェックがわずらわしい大阪でも、『産経』の記事が教材ではクレームが付けにくくなりそうです。
ただし、「自存自衛戦争」論に生徒が引きずられないようにする必要があります。その点については、被害者が植民地の人々であることを示せば、いいのではないでしょうか。高校であれば、独立をさせる気はないという日本軍の内部文書がすでに教科書に掲載されています。
2)次に、授業と同様に、安倍政権下で歴史修正主義に傾斜しつつある検定官たちに対しても、この記事は牽制の材料として使えそうです。
8 ということで、この記事のことを紹介しました。
記事の全文は、敗戦までのところで区切りにして単行本にした『子供たちに伝えたい日本の戦争』(産経新聞出版、2014年7月、1300円+税)でも読めます。記事の文章そのままで、収録しています。
9 記事本体のコピーの入手を希望される方は、高嶋に個人メールでご連絡下さい。
同様に、南京大虐殺は、捕虜やスパイであってもすべて裁判で死刑の判決が出されてからでなければ処刑できないという当時の国際法に違反した日本側の違法殺害行為の結果だったのだと、上記連載で認めた第48回(2014年3月9日付け)の分と一緒に送ります。
以上 転載・拡散は自由です
皆さま 高嶋伸欣です
1 すでに気づかれた方もおいでかと思いますが、『産経』が毎週日曜日の連載記事「子供たちに伝えたい日本人の近現代史(単行本は「子供たちに伝えたい日本の戦争」)」の中で、1941年12月8日からの対英米戦争の目的について、実際の目的は石油を中心とする軍需資源産地の横取りを目指した”自存自衛”の闘いであって、アジアの解放を第1義のものとしたのではない、と明記しています。
2 そのことを明記したのは、上記の連載59回目(2014年5月25日・東京本社版)の「シンガポール攻略戦」について、説明している回です。記事本文に、戦後の日本国内で『大東亜戦争』という用語の使用をGHQが禁止したのは、「『大東亜戦争』にアジアの新秩序建設や解放という日本側の『大義名分』を感じ取ったからだ」とし、続けて次のように説明しています。
3 「当時のアジア、特に東南アジアの大部分は英国、フランス、オランダなど西欧列強や米国の植民地支配下にあった。そのアジアを解放するというのだから、米英などにとって実に都合の悪い『大義名分』だったのだ。確かに開戦後すぐにアジアから欧米勢力を追い出し『解放』した。だが初めから純粋にアジアの解放や独立のため、自国の存亡をかけ戦ったのだろうか。
最大の目的は『石油』だった。当時すでに石油がなければ、近代国家として『自存』することも『自衛』することもできなくなっていた。特に、海軍の場合、石油は命綱だった。
だが日本国内ではほとんど生産できない。蘭印(オランダ領東インド、現インドネシア)など東南アジアに求めようとしたが、逆に米国などにより石油市場から締め出されてしまう。
そこで『自存自衛』のため、米英などに戦争をしかけたというのが実情だった。そんな戦争目的を胸に、昭和16年12月8日、マレー半島に上陸を果たした山下奉文中将率いる第25軍はシンガポール目指し、南下を始める」と。
4 相変わらず「自存自衛の戦争」と言い続けていますが、「アジア解放」は純粋かつ実際の目的ではなく、石油などの産地である欧米諸国の植民地の横取り=侵略こそが本来の目的だったのだと、明確に説いています。
5 しかも、この連載は『産経』の外部筆者ではなく、同紙特別記者・編集委員の皿木喜久氏が担当しているものです。皿木氏は論説委員長を経験しています。これまでの『産経』が、藤岡信勝氏などの”アジア解放戦争”説を支援していたことはよく知られています。その『産経』が、実は目立たないところで、このように歴史上の事実に基づいて、あれはやはり侵略戦争ないしは先発帝国主義国に対する後発帝国主義国日本による植民地横取りの戦争だったのだという戦争認識に転換していることの表れ、とみることができそうです。
6 ただし、この記事だけでは『産経』が本格的に戦争認識を転換したとは、みなせません。さらに同紙の関連記事を精査していく必要がありそうです。
7 でもその一方で、この記事の利用価値は大きいです。
1)まず授業で、12月8日の開戦のことを扱うときには、『産経』のこの記事を教材にすることで、「アジア解放」が本来の目的ではなかったことを、語れます。「維新の会」などのチェックがわずらわしい大阪でも、『産経』の記事が教材ではクレームが付けにくくなりそうです。
ただし、「自存自衛戦争」論に生徒が引きずられないようにする必要があります。その点については、被害者が植民地の人々であることを示せば、いいのではないでしょうか。高校であれば、独立をさせる気はないという日本軍の内部文書がすでに教科書に掲載されています。
2)次に、授業と同様に、安倍政権下で歴史修正主義に傾斜しつつある検定官たちに対しても、この記事は牽制の材料として使えそうです。
8 ということで、この記事のことを紹介しました。
記事の全文は、敗戦までのところで区切りにして単行本にした『子供たちに伝えたい日本の戦争』(産経新聞出版、2014年7月、1300円+税)でも読めます。記事の文章そのままで、収録しています。
9 記事本体のコピーの入手を希望される方は、高嶋に個人メールでご連絡下さい。
同様に、南京大虐殺は、捕虜やスパイであってもすべて裁判で死刑の判決が出されてからでなければ処刑できないという当時の国際法に違反した日本側の違法殺害行為の結果だったのだと、上記連載で認めた第48回(2014年3月9日付け)の分と一緒に送ります。
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