パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

☆ 原子力防災、能登大震災から何を学ぶか

2024年05月07日 | フクシマ原発震災

 ☆ 上岡直見さん講演会、「原子力防災の虚構」を暴く内容で大好評

 NAZENいけぶくろは2月17日、「原子力防災の虚構」著者の上岡直見さんを講師に迎え学習会を開催しました。
 著書で上岡さんは、原子力防災の全体の構図を捉え返し、およそ不可能な計画の元に組み立てられた原子力防災の虚構を明らかにしています。原発再稼働の無謀な政策を、第二次世界大戦(昭和の敗戦)、福島第一原発事故(平成の敗戦)になぞらえ、「令和の敗戦」は避けられないと言います。能登半島地震が発生して間もない状況で、日本の原発推進政策の破綻を再認識する機会となりました。

 ☆ 能登半島地震からみえること

 上岡さんはメディア報道と独自の調査から、能登半島地震による被災状況に言及しました。警察、消防、海上保安庁、自衛隊による陸海空路等による避難救助はすべて破綻し、志賀原発の30km圏内で約400人が8日間孤立しました。自治体間の通信システムが途絶し、停電時でも使えるはずのガソリンスタンドが機能停止しました。研究機関による能登半島での地震や津波の被害シミュレーションは実際の被害とほぼ一致していて、同じことが今後、全国で起こりうると指摘します。 

 ☆ 原子力防災計画の破綻

 原子力規制委員会は2012年、原子力災害対策特別措置法(原災法)にもとづき「原子力災害対策指針」を策定しました。これは原子力事業者や自治体が原子力災害時の対応計画を策定する際に指針となるものです。
 指針では原子力災害対策重点区域をPAZ※、UPZ※、それ以外の区域に分け、原発の被害状況に応じて住民への放射線に対する重篤な確定的影響の回避または最小化、および確率的影響のリスクを低減するための防護措置を行うとしています。
 それでは、果たしてその指針は有効に活用されているのでしょうか。上岡さんは能登半島地震の被災状況に照らし合わせ、その有効性について検証しました。 

(ア)全面緊急事態においてPAZ圏内ではまず避難するが、政府の中央防災会議が東日本大震災の実績から推定した道路支障原単位(1kmあたり0.11~0.17か所)に対して、能登半島地震でもほぼ同様(0.11/km)の支障箇所が発生した。かりに道路が無事でも、地域の車が一斉に出てくると渋滞が発生する。港湾・漁港も被災孤立集落ではヘリコプターも使用できなかった。よって避難は不可能

(イ)UPZ圏内ではまず屋内退避が発令されるが、能登半島地震では1か月前に新築した新耐震基準の建物が躯体を残して破損。窓が割れ開口部がある状態では露天と同じである。水道・電気などのライフラインも途絶した。屋内退避は効果がない。

(ウ)UPZ圏内は屋内退避後、モニタリングにもとづき防護措置をとるはずが、地震で最大18か所のモニタリングポストが機能停止した。

(エ)避難退避時検査場所は避難者が動き出す前に開設されてなければ意味がないが、道路支障があれば避難できないし自治体職員も開設作業ができない

(オ)安定ヨウ素剤は放射性ヨウ素にばく露される24時間前?ばく露2時間までの間に服用することにより効果が期待できるが、いつ服用すべきかの情報を提供する手順が成立していない

(カ)津波警報・注意報と原子力緊急事態が同時に起きたら、津波からの避難と放射能からの屋内退避に矛盾が生じる。

(キ)通信網の断絶でどうやって情報提供するのか 以上から、原子力防災計画は破綻していると言えます。背景には「どうせ起きるわけがない」という国の無責任体制があると上岡さんは指摘します。 

 ☆ 東海第二原発で緊急事態が起きたら

 東海第二原発は首都圏に最も近く、さらに大きな地震が予想される地域です。もしも東海第二原発で緊急事態が起きたら、山地などの障壁もなく首都圏に放射能汚染がそのまま到達します。
 上岡さんは、仮に社会的損失として推計した場合、福島第一原発の処理費用が80兆円と推定されていることと比較して、GDP・宅地家屋・企業固定資産の累計でおよそ665兆円にのぼると言います。
 またベース電源と謳われる原発の発電量は、実際には東京圏の最大需要電力に対してとるに足らない規模であり、あってもなくても同じだと指摘します。 

 質疑応答の時間には、会場から多くの質問・感想が寄せられました。
 「実際に原発事故が起きたらどこに逃げるか」という質問に対し、上岡さんは「避難は困難で多くの人が行き先もなく、実際には逃げられない。そんなことになるんだったら大元を止めろということだ」とこたえ、反対運動を盛り上げていく必要があると市民運動への期待を表明し、講演を締めくくりました。 

【脚注】

※PAZ precaution active zone原子力施設から概ね半径5km圏内。放射性物質が放出される前の段階から予防的に避難等を行うとされる。 
※UPZ urgent protective action planning zone原子力施設から概ね半径5?30km圏内。予防的な防護措置を含め、段階的に屋内退避、避難、一時移転を行うとされる。

『NAZENいけぶくろ』(2024年03月01日)
http://nazenikebukuro.blog.jp/archives/23764942.html

 


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