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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

★ 日教組73次全国教研【環境・食教育分科会】レポートから

2024年07月15日 | こども危機

 ★ SDGs実践……“政府・企業の責任を問わず”でいいのか? (「平和教育通信」)

東京A

 4年ぶりの対面教研。意義あるものとなった。それは

「加害・被害の構造にふまえての」ミナマタ実践
「放射線神話が復活している」福島の現状
危機一髪だった「能登半島地震による志賀原発の変圧器火災」、
台湾誘致の半導体熊本工場による河川汚染が新たな問題になっていること

 など、切実な課題が提起・報告されたからだ。
 ただ、全体としてはSDGs(持続可能な開発のための目標)を実践する報告が多く、疑問を感じた。

 1.学習指導要領に位置づけられたSDGs教育実践が大半・・・“原発・公害”は?

 今年の「環境・食教育」分科会の環境・公害のレポートは、コロナの影響なのか、従来の2分の1の9本に激減した。
 また、食教育(12本)も含めて、実践報告の内容が、SDGsに関するものが大半を占め、「原発や公害」問題の実践報告は、福島、九州(熊本・大分・鹿児島)など、4本しかなかった。
 これは、SDGsが国連で採択され(2015年9月)、文科省が学習指導要領・教科書に位置づけ、上から“強制的”に学校の授業に組み込まれた結果である。
 実際、北海道や千葉のレポーターは、「SDGsは、教科書にあるので、環境教育を進めるための入口として扱いやすい」とSDGs授業を肯定し推奨していた。

 2.SDGsの実践レポートの特徴

①千葉県 一 1年ではSDGsの目標の一つである「ちきゅうにやさしく」するための行動をとりあげ、給食の残飯を減らす取り組みをした。子どもたちは「ひとくちをおおくたべる」=「おなかいっぱいたべる」等の対策をだし、残飯を減らした。6年・社会科では、世界の貧困と格差をとりあげ“比較的恵まれている日本”にいる自分のできることを考えさせた。

②三重県 一 「物事を自分の事としてとらえて行動してほしい」とのテーマでSDGsに取り組んだ。「飢餓の問題」を“給食を残さずに食べる”ことにつなげ、エネルギー問題では「節電」対策に、「格差や不平等」の問題は、“友達を大切にする”取り組みにつなげた。

 3.政府の政策、企業の責任を問わない!

 これらのSDGsの授業に対して、東京や大分の傍聴者が次のように問題点を指摘した。

「表題にSDGsの冠が付いているが、内容的にはこの間、この分科会で議論してきたゴミ問題や省エネ問題と同じだ」。

「これらの問題の核心は、大量生産・大量消費・大量廃棄の社会を続け、貧困や大量ゴミの原因をつくりだした政府の政策や企業の問題をないがしろにして、国民一人一人の問題や責任にすり替えていることではなかったか」と。

 4.SDGsの授業実践 一 問題の原因を子どもに深めさせよう!

 私は、SDGsの授業実践とそれに肯定的な議論に接して、国や企業の責任や問題点を後景化して、国民個々の問題にしていると感じた。それだけでなく、実践上でも、子ども自身に問題の原因を深めさせる、批判的視点が欠落していると思った。
 例えば、給食の残菜の問題では、「残菜の量を減らす」ことだけが目的になっている。自分の体格や運動量など、自分に合った給食の“適量”を考えさせるべきではないのか。
 「世界の格差」の問題も、格差を生み出す大国の政策や国内格差などを考える視点は最初から封じられ、“日本の優位”の価値観を子ども達に押し付けるものとなっている。
 また、新潟県からは、「プラスチックゴミ回収で、プログラミングを組み込んだロボットを作成した」との報告があったが、本来のゴミ問題の原因を考えることを棚上げして、興味を持たせるためのロボット化には違和感を持った。
 来年はぜひ「原点」に戻った実践を期待したい。

『平和教育通信 第160号』(2024年5月)


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