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パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

☆ 草津性被害事件、巻き添えを食ったフリーライター裁判の傍聴記

2024年01月26日 | 増田の部屋

  《現代ビジネス》
 ☆ 「町長と肉体関係をもった!」元草津町町議の性被害裁判
   …告白本を出版したライターが法廷で語った「驚きの言い訳」

高橋 ユキ(傍聴ライター)

 ☆ 全部”ウソ”だった

 群馬県草津町の黒岩信忠町長に対する名誉毀損に問われている埼玉県新座市のフリーライター・飯塚玲児被告(56歳)の刑事裁判が、前橋地裁(橋本健裁判長)で11月8日に結審した。

 飯塚被告は、「町長室で町長と肉体関係を持った」という元草津町議の告白文書を掲載した電子書籍を出版。2月から裁判が行われていた。
 検察官は飯塚被告に懲役1年を求刑しており、弁護人は無罪を求めている。判決は来年1月の見込みだ。

 問題の電子書籍『草津温泉 漆黒の闇5』が発表されたのは'19年11月のこと。元町議・新井祥子氏は同電子書籍や、のちの記者会見などにおいて、黒岩信忠町長から性被害を受けたと告発した。

 町議会で同年12月に新井氏の除名を求めるリコールが可決すると、国内外のメディアがこれを疑問視する記事を発信。“性暴力の告発をした女性に対するセカンドレイプ”だとする声も高まった。

 当時から黒岩町長は新井氏の告発を否定しており、新井氏と飯塚被告に対し告訴状を提出していた。
 '22年11月、飯塚被告は名誉毀損罪で、新井氏は同罪と虚偽告訴の罪でそれぞれ在宅起訴されたのだった。

 そして今年2月に開かれた飯塚被告の初公判において、新井氏の告発は“虚偽”だったと明らかになる
 新井氏が性被害を受けたと主張していた、'15年1月8日10時~の町長との面談時の録音が存在したのだ。

 法廷で再生されたデータは、「特に変わったこともなく町長と議員との普通の会話で、肉体関係を示唆するような内容は一切含まれていませんでした」(傍聴人)という。

 だが新井氏は、この時点でも「しょこたん通信」と称するブログにおいて〈黒岩町長から体を触られたことは事実です。〉〈町長と検察は、力で真実をねじ曲げようとしているだけです。〉などと記し、あくまでも“性加害があった”と発信し続けていた。

 ☆ 飯塚氏はなぜ信じたのか

 いっぽう、初公判の音声データ再生を受け、「新井祥子元草津町町議を支援する会」が町内折込やFacebook上で解散を発表

〈この音声データについて、もともと新井元町議は次のように説明していました。「町長に録音していることがばれたと思って、町長が近寄ってきたときに録音スイッチを切ったから最初の15分くらいしか録音されていません。もし、1時間全部を録音したテープがあったとしたら、私は辛くてすぐ全部を消去していたと思います」。私たちはこの説明を信じましたが、実際にはそれはまったくの嘘で、町長との面談中ずっと録音がされていたのです。〉

 と、音声データについて新井氏から「15分しか存在しない」と聞かされていたことなどを明らかにした。

 新井氏は解散宣言が書き込まれた直後の「支援する会」Facebookページに〈私が被害に遭ったことは事実です。(中略)これからも、新たな被害者を出さないため、真実を明らかにするために戦っていきます。〉と記し、あくまでも被害を受けた立場であると訴えていた。

 だが、それから9ヵ月後の11月2日。新井氏が初めて“性暴力の告発は嘘だったと認めた”と上毛新聞が報じた。
 並行して進んでいる民事裁判の本人尋問において、新井氏が〈書籍に記された黒岩町長との肉体関係はなく、性被害を訴えた記者会見の内容も虚偽があった〉と明かしたという。

 結果的に新井氏の“虚偽の性暴力告発”を電子書籍に掲載した格好となった飯塚被告は刑事裁判で、これを「信用できる」と考えた根拠を語った。

「ひとつは……2019年7月9日に新井氏のインタビューをしました……その告白の仕方が、非常に自然であることがひとつ。非常に迫真的……もうひとつは、え?、告発が、私が知った事実と裏付けられ……いくら考えても、新井氏が嘘の告白をするメリットは何もないと感じました」(5月26日の弁護側被告人質問)

 ☆ コロコロ変わる告発内容

 飯塚被告の弁護側が証拠として提出した、電子書籍掲載の新井氏による直筆文書(公判では「新井文書」と呼ばれていた)は、次のようなものだった。

「(中略)私が本当に好意を抱いていたのは、黒岩町長でした。G議員に言われ、黒岩町長に近づくうちに、黒岩町長を本当に好きになってしまいました。町長室で2人きりになった時に、私の気持ちが通じた時は本当に嬉しかったです。新井祥子(押印)」(新井文書1)

「私 新井祥子は 平成17年1月8日 町長室にて 黒岩信忠町長と肉体関係をもちました。以上のことを深く反省し、告発いたします。令和1年10月13日 新井祥子(押印)」(新井文書2)

 「新井文書1」は、性行為を直接うかがわせるような内容もなければ、町長への好意が感じられる不可解な内容だが、飯塚被告はまず新井氏への取材時に「新井文書1」を見せながら尋ねたのだという。

「真実かと尋ねたところ、新井氏はしばらく黙っていましたが、やがて静かに頷きました。頷いたときに、いつ書いたものかと聞きましたら、新井氏は令和元年8月に書いたものだと即答しました。これは、肉体関係が推察されるが、よろしかったか? と聞くと、新井氏はしばらくうつむき、言い淀んでいましたが……あ?、え?、そんな感じで顔を上げ、涙を目に溜め、じっと私の目を見つめ、頷きました」(弁護側被告人質問での飯塚被告の証言)

 新井氏の告発は、電子書籍の発表後、内容が変遷している。町長室で性行為があった、と主張していた時期もあれば「わいせつ行為をされた」と告訴状を提出したこともある。そして'23年11月現在は「胸や太ももを触られた」と主張している。’19年、飯塚被告による取材には「性行為」があったと語っていたようだ。

「取材の後も電話で何度かやりとりして、さまざまな質問をしました。新井氏は首尾一貫して、信じるに足る内容だと……」(同前)


 ☆ “裏付け取材”していない

 こうして電子書籍は発売されたが、録音の存在を飯塚被告が知ったのは「発売後」だった。「新井氏は『録音していたが途中でバレると思って切った』と言っており、録音を知りました」という。

 のちに送ってもらったというデータの長さも「支援する会」が当時把握していたものと同様、15分ほどのものだったのだそうだ。1時間の録音データが存在したことを知ったのは、検察官からの取り調べを受けていた'22年10月のことだったという。

 「密室内の行為なので、それに関しては裏付けが取れなかった」と述べる飯塚被告に、対する検察官は“裏付け取材”について厳しく追及した。

検察官「密室ではありますが、確実にもう一人、ことの真偽を知っている人がいますよね」

被告「町長です」

検察官「あなたは2019年9月3日に町長に取材を申し込み、19日に町長室で約1時間取材をしていますね。この取材では、時間湯の温度管理や、湯長制度のことを聞いていた。湯長のセクハラ疑惑なども聞いている。町長に新井氏の告白についての言い分を確認することは可能でしたね?」

被告「時系列的に考えれば可能ですが……その時の取材は、温泉の取材でして……え?、まあ、こう言って、新井氏のことを細かく聞くのは、公私混同になってしまう……え?、まあ?、あの?、町長の……え?、本題の雑誌の取材が失敗に終わること想像されたので……」

検察官「結局新井氏のことは何も聞かなかったんですか」

被告「はい」

 電子書籍発売前に、飯塚被告は温泉雑誌の取材のために町長に取材を申し込んでいた。その際、新井氏の告発について確認することは可能なはずだが、本来の温泉取材が失敗に終わることを危惧して、告発の真偽を問いただすことはしなかったのだという。

 

 ☆ 「時間湯」存続のためだったのか

 「町長に取材することは真実から遠ざかる……。僕は今でも町長に取材したからといって、真実にたどり着くことはできないと考えています。むしろ出版さえ踏み潰される。だからこそ代わりに、新井氏に、もっともっとしつこく質問して、取材して具体的に聞くことで、新井氏の嘘を見抜くことができたのではないかと思っています」

 と、飯塚被告はあくまでも“裏付け取材は不要”との立場を示し続け、弁護人の質問に対しては、

「町長がしばしば嘘をつく人物だと、これまでの取材で感じていました。湯長制度の廃止時期を、2019年6月時点では『翌年3月末』と言っていたのに、その2ヵ月後の7月末に廃止してしまった……」

 などと批判を繰り広げる。

 飯塚被告は、草津温泉の伝統的入浴法「時間湯」の湯治客だったといい、公判でも「時間湯」についての発言が多く、裁判長に「はいっ、そこまで!」と止められることもあった。

 検察官は、飯塚被告が電子書籍に新井氏の告発を掲載したのは、その「時間湯」存続のためだったとみている。「被告人は『時間湯』で湯治をしていたこともあり(時間湯を廃止する)町長の政策には反対の立場だった。新井氏の告発が真実でないかもしれないと認識し、かつそれを認容していた」と論告で指摘しているように、飯塚被告は、電子書籍の発売をもって町長に辞任を求めていた。

 公判では、新井氏が記したとみられる別の文書も問題となった。
 新井氏の直筆で、これまで性的交渉を持った男性の名前やその回数が記されているものだ。飯塚被告はこれと「新井文書1」などを当初は、別の町民から入手したのだという。

「なぜ別の町民が持っていて、なぜ被告人が入手しうるのか。勢力争いが相まって他人を陥れる目的の怪文書の可能性がある」

 新井氏はどういった目的で、こうした文書を記したのか。彼女の刑事裁判で背景が明らかになるだろうか。

 伝統的入浴法の「時間湯」を守りたいと願うあまり、飯塚被告は彼女の嘘を利用したのか、それとも本当に“ただ新井氏に騙された”のか。判決は来年1月に言い渡される。

『現代ビジネス』(2023.11.16)
https://gendai.media/articles/-/119112


傍聴ライター 高橋 ユキ YUKI TAKAHASHI
 1974年生まれ福岡県出身。2005年、女性の裁判傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成。翌年、同名のブログをまとめた書籍を発表。以降、傍聴ライターとして活動。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆している。著書に『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)など。

 

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