《尾形修一の教員免許更新制反対日記から》
◆ 都立高「改革」・全定併置は「解消」するべきなのか
東京都教育委員会は、11月26日に「都立高校改革推進計画・新実施計画(案)」を発表した。骨子が都教委ホームページに掲載されていて、12月25日まで意見募集を行っている。(上記ウェブサイトに提出先メールアドレスが載っている。)
ここしばらく教育に関してほとんど書いていない。安倍内閣が約3年間も続き、下村博文、馳浩が文科相。都教委や大阪府教委も相変わらずだから、書こうと思えば書くネタはあるわけだけど、呆れるような状況が続き過ぎた。もはや何を言ってもダメなんじゃないかと正直思ってしまうので、書く意欲が湧かないのである。今回も同じではあるが、どうしても触れておきたいので簡単に。
都教委はここ数年は、教育の中身に関する「改革」が中心で、それも「どうなんだか」のオンパレードなんだけど、まあ書くまでもないと思った。今回は久方ぶりの学校の「新配置計画」である。つまり、学校の課程の変更や新設、統廃合である。
マスコミでは「小中高一貫校」ばかりが注目されている。現在の「立川国際中等教育学校」(元北多摩高校)に付属小学校を併設するという。
これも異動要綱の特例措置でも講じない限り、ほとんど意味がないものになると思う。本来、シュタイナー学校のような教育を行う場合のみ、「12年間同一メンバー」の教育が意味を持つはず。教師が自由な教育を展開できず、しかもどんどん異動するような環境で「小中高一貫」にして意味があるんだろうか。
他に、赤羽商業高校を「家庭・福祉」高校に改編し、また新国際高校(場所は未定)を設置する。荒川商業高校をチャレンジスクール(不登校生徒対象の定時制総合学科高校)に改編し、また立川地区にチャレンジスクールを新設する。定時制課程4校を閉課程とし、代わりに既存のチャレンジスクール、昼夜間定時制高校の夜間の定員の増数するという。その他もあるが、省略。
チャレンジスクールや昼夜間定時制高校などと都教委が呼んでいる「三部制高校」は、自分も勤務したから、不登校生徒のための一定の意義を認める。しかし、あまりにも勤務形態が大変で、異動も激しく、このまま拡大するのがいいのか、じっくり考える必要があると思う。
特に「夜間の規模を拡大」と簡単に言うが、給食の関係で規模拡大が難しいという学校実態が多いのではないか。夜間高校においては、「夜間課程を置く高等学校における学校給食に関する法律」で「夜間課程を置く高等学校の設置者は、当該高等学校において夜間学校給食が実施されるように努めなければならない」とされている。現に給食を出しているわけだが、夜間部の生徒を全員収容できる食堂スペースが取れないと規模の拡大はできない。どうするんだろ?と思うが、どうせ登校しないだろうと踏んでいるのか。
それ以上に僕が問題だと思うのが、「夜間定時制課程の閉課程により併置を解消」とある点である。「解消」というのは、「よくないからなくす」というニュアンスがある。辞書をみると、不満を解消する、ストレスを解消する、派閥を解消するなどといった例示が出ている。これみな、良くないからなくすという意味である。
となれば、都教委は「全日制、定時制の併置」そのものが悪いととらえているのだろうか。そうとしか思えないのだが。現実に、多くの都立高校で併置が「解消」されてきた。今や、山手線の内側にある高校で、全定併置校は一つもない。(三部制の単位制高校が、新宿山吹高校と六本木高校の二つあるだけ。)23区の周縁部と多摩地区にのみ、併置校があるというのは、東京都内の「格差」が背景にあるということだろう。
今回、「併置を解消」とされるのは、小山台(品川区)、雪谷(大田区)、江北(足立区)、立川(立川市)の4校である。進学指導の重点指導校などに指定されている高校が多い。
今は夜間定時制高校の希望者が少なくなり、働きながら学ぶ生徒も少ない。不登校や外国人生徒、障害を持つ生徒などが多くなっているのは確かである。だから、僕も「単学級」(学年一クラスの学校)に関しては、ある程度わかる部分がある。だけど、今回の学校で来年度の募集が一クラス(30人)であるのは、雪谷高校だけ。小山台、江北は60人、立川に至っては90人の募集定員である。「地域のニーズ」がある夜間定時制をつぶしてしまうとしか思えないが。
全日制から見れば、部活動や生徒会活動、補習や学校行事などで、定時制課程がない方がいいと思う教員や生徒がいるのも確かだろう。定時制課程は大体5時過ぎに生徒が登校するので、その頃には全日制の生徒は帰ららないといけない。今は授業確保がうるさいから、行事の準備や部活動の時間がかなり短くなる場合がある。
だけど、都立高校で野球部が甲子園に出場したところはどこだろうか。国立高校、雪谷高校、小山台高校の3校ではないか。国立は定時制がないが、他の2校は今回の対象校である。定時制が併置されていても部活動で活躍できるということが判る。
教員の勤務時間を考えても、長時間の部活や補習があることの方がおかしい。
それに多くの学校では、本当に大変な時期(行事や部活の大会、検定等が近付いた時)は、特例で全日制の生徒の活動を伸ばすことが認められているのではないかと思う。もちろん定時制の教育活動に支障が出ないようにではあるが、定時制側も了承して昼の生徒が活動時間を伸ばしていると思う。
それはともかく、併置を「解消」するなどという言葉そのものが、定時制課程の生徒を下に見ているように感じてしまうのである。
『尾形修一の教員免許更新制反対日記』(2015年11月29日)
http://blog.goo.ne.jp/kurukuru2180/e/6211891fd6fc28ebd2726865bfbfddea
◆ 都立高「改革」・全定併置は「解消」するべきなのか
東京都教育委員会は、11月26日に「都立高校改革推進計画・新実施計画(案)」を発表した。骨子が都教委ホームページに掲載されていて、12月25日まで意見募集を行っている。(上記ウェブサイトに提出先メールアドレスが載っている。)
ここしばらく教育に関してほとんど書いていない。安倍内閣が約3年間も続き、下村博文、馳浩が文科相。都教委や大阪府教委も相変わらずだから、書こうと思えば書くネタはあるわけだけど、呆れるような状況が続き過ぎた。もはや何を言ってもダメなんじゃないかと正直思ってしまうので、書く意欲が湧かないのである。今回も同じではあるが、どうしても触れておきたいので簡単に。
都教委はここ数年は、教育の中身に関する「改革」が中心で、それも「どうなんだか」のオンパレードなんだけど、まあ書くまでもないと思った。今回は久方ぶりの学校の「新配置計画」である。つまり、学校の課程の変更や新設、統廃合である。
マスコミでは「小中高一貫校」ばかりが注目されている。現在の「立川国際中等教育学校」(元北多摩高校)に付属小学校を併設するという。
これも異動要綱の特例措置でも講じない限り、ほとんど意味がないものになると思う。本来、シュタイナー学校のような教育を行う場合のみ、「12年間同一メンバー」の教育が意味を持つはず。教師が自由な教育を展開できず、しかもどんどん異動するような環境で「小中高一貫」にして意味があるんだろうか。
他に、赤羽商業高校を「家庭・福祉」高校に改編し、また新国際高校(場所は未定)を設置する。荒川商業高校をチャレンジスクール(不登校生徒対象の定時制総合学科高校)に改編し、また立川地区にチャレンジスクールを新設する。定時制課程4校を閉課程とし、代わりに既存のチャレンジスクール、昼夜間定時制高校の夜間の定員の増数するという。その他もあるが、省略。
チャレンジスクールや昼夜間定時制高校などと都教委が呼んでいる「三部制高校」は、自分も勤務したから、不登校生徒のための一定の意義を認める。しかし、あまりにも勤務形態が大変で、異動も激しく、このまま拡大するのがいいのか、じっくり考える必要があると思う。
特に「夜間の規模を拡大」と簡単に言うが、給食の関係で規模拡大が難しいという学校実態が多いのではないか。夜間高校においては、「夜間課程を置く高等学校における学校給食に関する法律」で「夜間課程を置く高等学校の設置者は、当該高等学校において夜間学校給食が実施されるように努めなければならない」とされている。現に給食を出しているわけだが、夜間部の生徒を全員収容できる食堂スペースが取れないと規模の拡大はできない。どうするんだろ?と思うが、どうせ登校しないだろうと踏んでいるのか。
それ以上に僕が問題だと思うのが、「夜間定時制課程の閉課程により併置を解消」とある点である。「解消」というのは、「よくないからなくす」というニュアンスがある。辞書をみると、不満を解消する、ストレスを解消する、派閥を解消するなどといった例示が出ている。これみな、良くないからなくすという意味である。
となれば、都教委は「全日制、定時制の併置」そのものが悪いととらえているのだろうか。そうとしか思えないのだが。現実に、多くの都立高校で併置が「解消」されてきた。今や、山手線の内側にある高校で、全定併置校は一つもない。(三部制の単位制高校が、新宿山吹高校と六本木高校の二つあるだけ。)23区の周縁部と多摩地区にのみ、併置校があるというのは、東京都内の「格差」が背景にあるということだろう。
今回、「併置を解消」とされるのは、小山台(品川区)、雪谷(大田区)、江北(足立区)、立川(立川市)の4校である。進学指導の重点指導校などに指定されている高校が多い。
今は夜間定時制高校の希望者が少なくなり、働きながら学ぶ生徒も少ない。不登校や外国人生徒、障害を持つ生徒などが多くなっているのは確かである。だから、僕も「単学級」(学年一クラスの学校)に関しては、ある程度わかる部分がある。だけど、今回の学校で来年度の募集が一クラス(30人)であるのは、雪谷高校だけ。小山台、江北は60人、立川に至っては90人の募集定員である。「地域のニーズ」がある夜間定時制をつぶしてしまうとしか思えないが。
全日制から見れば、部活動や生徒会活動、補習や学校行事などで、定時制課程がない方がいいと思う教員や生徒がいるのも確かだろう。定時制課程は大体5時過ぎに生徒が登校するので、その頃には全日制の生徒は帰ららないといけない。今は授業確保がうるさいから、行事の準備や部活動の時間がかなり短くなる場合がある。
だけど、都立高校で野球部が甲子園に出場したところはどこだろうか。国立高校、雪谷高校、小山台高校の3校ではないか。国立は定時制がないが、他の2校は今回の対象校である。定時制が併置されていても部活動で活躍できるということが判る。
教員の勤務時間を考えても、長時間の部活や補習があることの方がおかしい。
それに多くの学校では、本当に大変な時期(行事や部活の大会、検定等が近付いた時)は、特例で全日制の生徒の活動を伸ばすことが認められているのではないかと思う。もちろん定時制の教育活動に支障が出ないようにではあるが、定時制側も了承して昼の生徒が活動時間を伸ばしていると思う。
それはともかく、併置を「解消」するなどという言葉そのものが、定時制課程の生徒を下に見ているように感じてしまうのである。
『尾形修一の教員免許更新制反対日記』(2015年11月29日)
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