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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

根津公子の都教委傍聴記(2022年6月23日)

2022年06月26日 | 暴走する都教委
 ◆ 教育委員はオンライン会議、けれど傍聴は (レイバーネット日本)
 定例会の予告(=議題や開始時刻等)は会2日前に都教委HPに掲載される。今日の定例会の予告には「教育委員はオンラインで」と掲載されていたので、一昨日、定例会担当部署に「傍聴者もオンライン傍聴にしてほしい」旨、氏名を添えてメールを出した。しかし、なしのつぶて。そこで定例会終了後に担当部署に行き返事を求めた。いつも傍聴しているHさんも同行してくれて。
 今回オンラインにしたのは文科省から「オンライン会議も可」との通知(*)が来たこと及び今回は非公開議題(懲戒処分等)がなかったことから。2月前半の定例会をオンラインにしたことについても聞くと、コロナ感染拡大と非公開議題がなかったことという。(*)「オンラインで教委の会議可能」 文科省が通知 2020年7月30日
 オンライン傍聴に移行できない理由は2つ。

 傍聴希望者がラインのアドレスを他に流してしまうとか不規則発言を行なうとかの危険があること及び、オンラインの費用が莫大なこと。2~3万円などという金額ではない、という。
 大阪市教育委員会がオンライン傍聴を行なっていることを参考にして、オンライン傍聴実現に向けて検討してほしいと要請してきた。
 今日の議題は3件

 ▼ 1件目は都立15校の「工業高校」を「工科高校」に名称変更することについて
 「Society5.0を支える工業高校の実現に向けた戦略プロジェクト Next Kogyo START Project」を今年2月に策定したので、それに沿って名称を変更するのだという。都議会定例会に諮ったうえで来年度から施行とのこと。このプロジェクトによって、果たして工業高校の学びが豊かなものになるのだろうかとの疑念は拭えない。
 ▼ 2件目は「来年度の小中学校教科書採択及び高校用教科書の調査研究資料について」
 小中学校は教科書が無償配布されることから「4年間同じ教科書を使う」ことになっている。来年度はその4年が経過していないので、今年度と同じ教科書を使用する。
 高校毎年各学校が選定した教科書をもとに都教委教育委員会が採択することになっていて、通常は各学校が選定した教科書が承認・採択される。
 その選定のために都教委は、各教科各発行者の教科書について調査研究を行い、『調査研究資料』を発行し各学校に配る。今日は、その『調査研究資料』の報告がされた。
 「調査研究」項目には、今年も全教科において
   「我が国の伝統や文化、国土や歴史に関する理解、他国の多様な文化の尊重に関する特徴や工夫」
   「人権問題(同和問題、北朝鮮拉致等)に関する特徴や工夫」
   「安全・防災や自然災害の扱い」
   「オリンピック・パラリンピックに関する特徴や工夫」
 がある。
 教育委員は、これらについて、今回も何も発言しなかった。同意した、ということだろう。非常に問題ある項目が並ぶのに。
 今年新たに加わった項目が
   「固定的な性別役割分担意識に関する記述等」、
   「人権問題」の同和問題。
 「固定的な性別役割分担意識に関する記述等」については、その意識解消に関して教育委員から発言があったが、時流に乗ったに過ぎないとしか私には思えなかった。発言がないよりはよかったけれど。
 教科書採択に関しては、忘れてはならないことがある。かつて、各高校が選定した教科書を教育委員会が採択しなかったことである。
 「君が代 起立をしない教員を懲戒処分すること」について批判的に記述した、実教出版『高校日本史A』(2013年度~16年度使用)、同『高校日本史B』(2014年度~16年度用)の採択を拒否したことだ。今一度、それを確認したい。
 実教出版教科書は次のように記述した。
 【国旗・国歌法をめぐっては、日の丸・君が代がアジアに対する侵略戦争ではたした役割とともに、思想・良心の自由、とりわけ内心の自由をどう保障するかが議論となった。政府は、この法律によって国民に国旗掲揚、国歌斉唱などを強制するものではないことを国会審議で明らかにした。しかし、一部の自治体で公務員への強制の動きがある。(太字は筆者)】
 都教委が実教出版教科書の採択を妨害した事実について、当時の私の記録(都庁前で撒いたチラシ2012.9.13)には次のようにある。
 各社からの見本本が高校に届き始めた5~6月ごろ、校長全員が出席する「校長連絡会」の前に開かれる「幹事会」で高校指導課側が、「教科書採択は公正にやるように」といいつつ、「情報紹介」と称して3月28日付『産経新聞』記事(「高校教科書検定」「不適切記述パス 基準疑問」の見出しをつけて、実教出版の『高校日本史A』は「国旗掲揚、国歌斉唱を『強制』と記述した」として名指しで批判した記事)に言及したのだそうです。 
 さらに都教委は、「あの『産経』の記事のこと、分かっているでしょうね!」「実教出版の教科書は都教委の教育方針と合わない面がある、最終判断は校長だが、注意してもらいたい」などという電話を、少なくとも来年度に日本史Aを必修とする17校に電話を入れ、応じない高校には数回に及ぶ連絡をして変更を要請したのだそうです。ある学校では、「全体的に他の教科書より勝っている」と判断し、変更しないことを都教委に伝えたところ、都教委から、「このままでは都教委が採択しない可能性があるので、他社版を採択するよう」に再三の連絡。学校側は「学校には選択に自由がある」として応じなかったところ、都教委からさらに変更を求める連絡があり、最終的には校長の責任で変えざるを得なかったということです。
 2015年9月10日の記録(都庁前で撒いたチラシ)には、
 「2013年からは【実教出版「高校日本史A」「高校日本史B」の記述は…都教委の考えと異なるものであり、…都立高等学校で使用する教科書としては適切ではない】との通知を校長宛に出し、選定を「0」にしてきた。通知から3年目の今年(2015年)は6月25日の都教委定例会で、「国旗国歌について、実教出版高校日本史の『一部の自治体で公務員への強制の動きがある』との記述は今回も変わらなかった。これは、都教委の考え方と異なる。したがって、校長の責任と権限の下、選定するよう6月26日以降通知をする」と指導部長が発言。教育委員は一切の意見表明をせずに、承認した。そして8月27日の定例会で実教出版を選定した学校「0」で採択としたのだった。
 東京に続き、大阪府、神奈川県、埼玉県各教委も同様の妨害を行なった。
 ▼ 3件目は「フリースクール等に通う不登校児童・生徒支援調査研究事業について」
 善い悪いは別にして、2018年に「フリースクールに通うことも登校とみなす」と文科省が打ち出したことはご記憶にあることと思う(実際は、出席扱いは校長の判断で小・中学生は1992年から、高校生については2009年から)。
 その後の策として文科省は、フリースクールに通う児童・生徒及びその保護者のニーズやフリースクール等での活動内容を把握し今後の施策立案に生かしたいと、全国の教委に調査研究を呼びかけた。今日の都指導部の話にはなかったが、都教委のこの事業はそれに呼応してのことだと思う。
 東京では現時点で818人(4.6%)の子どもが不登校になっている。フリースクールに通う児童・生徒及びその保護者のニーズやフリースクール等での活動内容などを把握するために調査研究協力者を募集する。
 不登校の状態にある児童・生徒(校長の証明による)とその保護者が「協力者」の対象。協力してくれた保護者には月1万円、年間最大12万円を支払う。第1期受け付けは7月29日、とのこと。
 この調査研究を否定するつもりはないが、都教委・文科省がすべきことは、子どもたちが学校に行きたくなくなるのはなぜかを考えることだ。
 新採用された教員が1月も持たずに学校を去っていく現実。子どもも教員も、学校が楽しいところではなくなっているということだ。
 私の体験から言えば、20世紀までは子どもと教員が話し合い、授業や活動をつくることができた。したがって、子どもも教員も学校に居場所があった。
 しかし、都教委・文科省が教育内容にまで介入し管理弾圧してきたことで、居場所が奪われていった。それについての反省を都教委・文科省はまずはすべきと思う。
『レイバーネット日本』(2022-06-23)
http://www.labornetjp.org/news/2022/0623nezu
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