各校の活動時間内における教室の温度範囲とその割合
☆ 1日中32℃を超える教室も
「教室の温度測定調査」結果のご報告
今年の夏も記録的な猛暑に見舞われ、気温上昇への適応策は緊急性を増しています。
子どもたちを危険な暑さから守り、気候変動対策にもなる学校の断熱改修。グリーンピースの断熱プロジェクトでは、これまで548人もの皆さまからご寄付をいただきました。心より感謝申し上げます。
多くの方が寄付にご参加くださり実現できた学校調査の結果をご報告します。
☆ どの学校でも、基準の室温を超える
温暖化が進むなか、いま学校の教室はどれほど暑いのか。全国で教室のエアコン設置率が約95%に達したけれど、冷房はちゃんと効いているのか一グリーンピース・ジャパンは東京、神奈川、三重の小学校と埼玉の高校から協力を得て、教室の温熱環境を調査しました。
この調査では、東京大学大学院の前真之准教授に熱画像の撮影や分析の面でご協力いただきました。
調査は学校が夏休みに入る前の7月1日~19日に行われました。
文部科学省は、教室温度の基準として28℃以下を推奨しています。
生徒が学校で過ごす時間帯(小学校は8時~13時、高校は8時~15時、毎時4回計測)でデータを分析したところ、どの学校でも長時間にわたって基準の室温を超えていたことがわかりました。
埼玉の教室では、活動時間のうち7割以上が室温28℃を超えました。三重では64.6%、東京は56.1%、神奈川は53.7%の時間で、室温が28℃以上となりました[上のグラフ]。
また神奈川と埼玉では、活動時間の1割以上が室温32℃を超えていました。
計測した3週間のうち、最も暑かった7月8日のデータを見てみます[右のグラフ(略)]。外気温(黒線)が上がる一方で、教室温度(オレンジ色)は朝7時頃から下がり、エアコンが使われていることがわかります。
しかし、冷房を入れても温度の下がりが遅く、どの教室でも基準の28℃以下を下回ることはありませんでした。
この日、授業のある全時間帯にわたって、埼玉と東京では30℃、神奈川では32℃を超えていたのです。教室内の最高温度は、埼玉34.6℃、神奈川33,8℃、東京32.5℃、三重32.3℃でした。
☆ 調査結果を受けて
今回の調査で、子どもたちが基準を超えた暑さの教室で長時間を過ごし、それが1日だけでなく何日も連続していることが明らかになりました。
協力校の4校は、コンクリートに囲まれた都会にある学校もあれば、自然に囲まれた地帯にある学校もあります。校舎の築年数も、各教室の日射量もそれぞれ違っています。教室内にいる生徒数も、20人だったり35人だったり、さまざまです。
環境や条件が大きく異なるにもかかわらず、どの教室でも基準以上の温度を記録しました。こうした温熱環境が、子どもたちの健康や授業への集中力にどれほど影響を及ぼすのか、深く懸念されます。
この状況を報道関係者に知らせるために、グリーンピースは9月4日、記者会見を行いました。プロジェクトをリードする鈴木かずえは、会見で次のように訴えました。
「夏休みに入る前に、すでに基準の28℃を超える温度が続いていました。気候変動に責任のない子どもたちが気候変動の影響で危険にさらされています。年々猛暑日は増加しており、9月に入っても暑い日が続きます。まずは、無断熱の校舎の最上階に断熱を施すなど、緊急の対策が必要です。そして根本的な解決である温室効果ガスの大幅削減、つまり、化石燃料を燃やす発電方法から一刻も早く脱却すべきです」
グリーンピースは今回の調査結果をもとに、学校の断熱化を進めるべく、日本政府や自治体に対しさらなる働きかけを行ってまいります。
☆ 意識調査~住まいの断熱を望む人は多い
グリーンピースは今年7月初旬、埼玉県在住の1000人を対象に意識調査を行いました。夏に厳しい暑さを記録する地域が多い同県。
省エネの手段として、住まいの断熱性能を高めたいか尋ねたところ、「すでに高めている・予定がある」との回答が約3割に留まり、63.3%の人は「高めたいと思うが予定がない・できない」と答えました。
断熱できない理由としては、経済的な理由が56.6%と最多で、「借家のため」(24,9%)、「断熱の知識がない」(22.3%)が続きました。
住宅の断熱性能を高めるには、断熱改修を促進する補助金制度を整えるなど、行政による施策が必要であることが伺えます。
『グリーンピース ニュースレター』(2024年・秋号)
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