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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

「卒業式の主役は子どもたち」という観念は根底からくつがえされた

2014年01月02日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 ● 「10・23通達」から10年
   「強制」「服従」の場へと変貌した東京の学校


 東京都教育委員会が2003年に「10・23通達」を出し、教職員の処分をもって学校に「日の丸・君が代」を強制するようになって10年。この10年間に、生徒の「自主・自律」を重んじるかつての都立学校は、「上意下達」のシステムを張りめぐらされて大きく変貌した。元都立高校教員の池田幹子さんが抵抗の流れとともに振り返る。
 「日の丸」を国旗、「君が代」を国歌とする「国旗・国歌法」が1999年に制定された当時、政府は「児童生徒に心理的な強制力が働くような方法で指導が行われてはならない」「教員の職責に変更を加えるものではない」と答弁していた。
 しかし東京都は歌わない教員、生徒を問題視して、2003年に「10・23通達」を発出した。
 動揺する校長に対しては「降格」制度を同時に提示して抑え込み、教職員に対して「職務命令違反の初回は戒告、2回目は減給一カ月、3回目は減給6カ月、4回目は停職ーカ月…」と容赦ない処分が繰り返された。
 「適正に生徒を指導すること」も職務命令に加えられ、卒業式司会台本には「不起立の生徒がいたら、起立するまで、起立を促す」ことが書きこまれた。
 生徒の不起立や卒業式をめぐる生徒会主催の討論会が問題にされ、担任や担当教員、管理職へ「厳重注意」等の処分が出された。
 ● 上意下達のシステム
 今では学校は「静か」になり、保護者からの「強制」への抗議も、学校にほとんど届かなくなった。
 卒業式で「児童・生徒の作品は会場内に設置しない」ばかりか、「厳粛性確保の観点から、児童生徒が決意を表明したり、夢を語ったりする場は設定しない」等の「留意事項」まで武蔵村山市では出され、「卒業式の主役は子どもたち」という観念は根底からくつがえされた
 都教委は、06年に「職員会議の採決禁止」通達を出し、「教員全員で話し合い、意見が分かれたら多数決」という文化をつぶし、副校長・主幹・主任教諭の職を設けて上意下達の学校をつくりあげた。
 授業内容も管理され、教員は生徒と向き合うよりもパソコンと向き合う仕事に追われて、教員間の会話も減り、「協働」よりも「個人の業績評価」が大切にされるようになった。
 「生徒に向き合う現場の教員の意見がまず第一」という学校の姿は過去のものとなってしまった。
 ● 違憲・違法を問う
 「国旗・国歌」の強制を批判する声に対して、当時、石原慎太郎都知事は「憲法違反だと言うなら憲法違反だと言ったらいい。憲法そのものが私は存在として違反していると思うから」と公言した。
 通達の違憲性・違法性を問う訴訟(予防訴訟)が400人を超える教職員によって提訴され、地裁で全面勝訴するも高裁で逆転敗訴、最高裁でも敗訴となった。
 不起立・不伴奏で処分を受けた教職員は過去10年間に延べ450人、再雇用など定年後の職が「不起立」によって奪われた人は合計70人になる
 処分撤回を提訴して「思想・良心の自由」「信教の自由」「教育の自由」を問う道は、「司法がまともに憲法判断をしない」という壁にぶつかり困難な経過をたどっている。
 それでも30件の減給・停職処分が違法だとして取り消された。Kさんの停職処分に対する「慰謝料30万円」も最高裁で確定した。「日の丸・君が代」処分取り消しで慰謝料まで命じられたのは全国初。30件もの違法が最高裁で認定された事とともに、都教委の重大な責任が問われなければならない。
 今年9月の最高裁判決では、12年の判決同様、すべての戒告処分とNさんの停職・減給は違法とは言えないと是認した。しかし12、13年判決とも「思想・良心の自由」に基づく反対意見や都教委を諌める補足意見があり、裁判は少しずつではあっても前に進んでいる。
 都教委が処分や「再発防止研修」を強化する中、提訴も続き、被処分者原告50人の3次訴訟は東京地裁で目下大詰めを迎えている。
 振り返ると、06年末に第-次安倍内閣は教育基本法を改悪し、第2次安倍内閣が「憲法」の「国民主権」を根底から覆す改悪を目論んでいる。自民党憲法草案第3条には国民の「日の丸・君が代」尊重義務もある。今年夏に高校生を自衛隊に宿泊防災訓練に行かせた都立高校まである中、「国民主権」「戦争放棄」という憲法の根本の変質は何としても許してはならない。

 ※10・23通達
 「入学式・卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について」と題して、2003年10月23日に、都立高校・特別支援学校の校長宛てに横山洋吉教育長名で出された通達。
 「通達」と「実施指針」が一体になっており、「通達」は、「『実施指針』のとおり行う」「教職員が本通達に基づく校長の職務命令に従わない場合は、服務上の責任を問われる」と明記。
 実施指針では、「国旗は、式場の舞台中央に掲揚」「式典の司会者が『国歌斉唱』と発声し、起立を促す」「国歌斉唱は、ピアノ伴奏により行う」「教職員は指定された席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する」「教職員の服装は、厳粛かつ清新な雰囲気の中で行われる式典にふさわしいものとする」など細かい内容が規定されている。
●池田幹子

『ふぇみん』(3041号 2013/11/15)

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