=たんぽぽ舎【TMM:No5181】2025年4月12日転載・転送歓迎=
☆ 東電の甘すぎる工程管理で再稼働ストップの現実
山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
【3】「特重」の秘密主義
テロ対策設備と銘打ったため、「特重」の仕様は一切明らかにされていない。
各電力会社が公表している図はどれも似たり寄ったりで、概念図(ポンチ絵)に過ぎない。
これでは過酷事故時に想定されているような性能が発揮できるのか、過酷事故を緩和するほどの能力を有しているのか、その成立性を第三者が検証することも出来ない。
「特重」の設置理由は「故意による航空機の墜落」と、まるで米国の9.11テロを想定しているような書きぶりだが、大規模自然災害にも適用される(期待される)。
「特重」の出来如何により、広域避難の必要度が変わり得る。
すなわち私たちの命運も左右されるのであるから、可能な限り、例えば侵入経路が分かるといったレベルではなく成立性が確認できる程度の仕様や過酷事故時に運用される規定や、それらにより想定される緩和程度を明確にするべきだ。
明らかにされない限り、予断を持って緩和されるとか事故を回避できるなどと考えるべきではない。
国や電力会社も「特重」への疑問に対しての説明を不当に拒否するべきでもない。
【4】柏崎刈羽原発の「特重」建設遅れ
柏崎刈羽原発に話を戻す。
柏崎刈羽原発6、7号機はいずれも、原子炉等規制法(炉規法)第43条の3の23第1項及び規則(実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則)第82条が定めた期限までに工事完了できないことが確実になった。
東電による変更後の工事完了予定は、7号機が2029年8月、6号機が2031年9月を目途とすることになり、7号機は約4年5月、6号機は5年の遅れである。
なお、変更後の見通しについても目途であって完工する見通しが立っているわけではない。
許容された5年を含めると工事は少なくても9年以上もの年月がかかることになった。
地元の 櫻井雅浩柏崎市長は、声明文で「なぜ他電力よりも時間がかかっているのかという疑問。資機材や人材の問題は理由にならない。柏崎刈羽原子力発電所における特定重大事故等対処施設という特殊事情があり、根拠とするならばその旨を原子力規制委員会に伝えるべきである。」といらだちを隠さない。(柏崎市のホームページで「市長の見解・感想」(2025年2月27日報道発表)より)
花角英世新潟県知事は「東電には積極的な情報公開と分かりやすい説明に努めてほしい」とコメントしている。(新潟日報3月12日)
しかし東電は、なぜ他電力よりも時間がかかっているのか、機材や人材の何が問題なのかも含めて公式には一切説明していない。
柏崎市長が声明で言及しているから、理由を市長に説明したかの印象だが、おそらくそうではない。
そこには公言できない極めて深刻な理由もあると思われる。
それは、東電の経営不振、具体的には経営破綻の危険性が日々高まっていることである。
言い換えれば、東電は国(この場合は経産省)に対して柏崎刈羽原発を動かしたいのならば、資金を含む支援策を講じろと「威迫」あるいは今はやりの「ディール」を仕掛けているのだ。
(了)
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