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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

都教委の教科書採択傍聴記

2011年09月01日 | 暴走する都教委
 ◇ これを卑劣と言わずして何を卑劣と言うか
   都教委の教科書採択傍聴記

吉田典裕 ネット21常任運営委員、日本出版労働組合教科書対策部長

 去る7月28日、2012年度から東京都立中学校・中等教育学校(前期課程)(以下都立中高一貫校)および都立特別支援学校で使用される教科書の採択が東京都教育委員会(都教委)で行われました。以下、報告します。
 ◇ これが「教育的議論」?
 まず、どの教科書の採択を希望するか、無記名投票が行われたのですが、投票に入る前に内舘牧子委員(脚本家)が発言を求め、「どの教科書もレイアウトがうるさい。マンガのキャラクターばかり。こんな教科書でよいのか」などと述べ、これに竹花豊委員(元副知事、警察官僚出身)が「全面的に賛成」と応じ、木村孟委員長は「外国の教科書はもっとレイアウトがゆったりしているし分厚い」と述べた上、日本は無償だから教科書発行者がムダにレイアウトにお金をかけているとの趣旨の発言を行いました。
 何と無責任な発言でしょうか。

 教育の素人である教育委員が直接採択を行う制度ゆえに、一見して華やかなレイアウトにせざるをえないのではありませんか!そんな教科書に誰がしたのでしょうか
 また、教科書予算がいかに低額で、発行者が苦しんでいるかもご存じないとは、呆れた話というほかありません。
 その上、この教育委員会で教科書に関わる発言は、これだけだったのでした。

 ◇ 「つくる会」系採択へ誘導する二つの資料
 予め傍聴者に配付されていた、都教委作成の「調査研究資料」と「採択資料」について、紙幅の都合上、最小限だけ述べておきます。
 調査研究の項目自体は2009年と変わりませんが、
 歴史では「神話や伝承を知り、日本の文化や伝統に関心を持たせるページ数」「歴史上の人物を取り上げている箇所数」、
 公民では「わが国の領域をめぐる問題を扱っているページ数」「北朝鮮による拉致問題を扱っているページ数」のように「つくる会」系教科書採択を誘導するかのような項目も並んでいます。
 教科書のどの箇所がどの項目に該当するのかは示されていませんから、恣意的な操作も可能なのでしょう。
 これをもとにつくられた「採択資料」では、箇所・頁数が多いと「☆」がふえる(最大4)という表示がされ、「つくる会」系教科書は「三ツ星レストラン」ならぬ「四ツ星教科書」になっています。
 都教委が組織ぐるみで「つくる会」系教科書採択に加担したといわれてもしかたがありません。
 ◇ あまりに政治的な採択結果
 冒頭で述べたように、都立中高一貫校には、歴史・公民とも育鵬社
 特別支援学校は歴史が育鵬社、公民は自由社という採択結果でした。
 学校ごとに行われた投票では、どれも満票を得た教科書はなく、都立中高一貫校の歴史は、育鵬社4票、自由社1票、東書または教出が1票、同じく公民は育鵬社5、自由社1という結果でした。
 特別支援学校では視覚障害特別支援学校が歴史・公民とも教出だったのを除いて、歴史が育鵬社、公民が自由社という採択結果でした。
 年表の盗用を認めた自由社は正面切っては採択しづらいから育鵬社優先で行く、しかし自由社をゼロにするわけにもいかないから、少部数の特別支援学校の公民は自由社にしよう、全員一致だとまずいので、学校によって多少他の発行者の教科書にも票を入れておこうという統一された政治的意思が働いたと見るのが最も合理的な説明ではないでしようか。
 「つくる会」系以外に投票した教育委員も、「つくる会」系の採択そのものには反対せず、何の意見も述べなかったのですから、沈黙で賛意を表明したことになるでしょう。
 時系列で見ても、この都教委の採択結果を嗜矢として全国で「つくる会」系教科書の採択が進んだのですから、都教委の責任は重大です。
 採択の撤回とやり直しを強く求めなければなりません。
(よしだのりひろ)

『子どもと教科書全国ネット21ニュース』(79号2011/8/15)

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